読了日記2022
1.又吉直樹『人間』(角川文庫, 2022)
【読了:2022.05.08】
”読書”という行為への抵抗が、敬愛する何人かのお笑い芸人さんの書くエッセイによって少しだけ薄れた感覚がある。そんな最中、僕はお笑いコンビ『ピース』の又吉直樹さんのYouTubeチャンネルを視聴しまくっていた。この文章を書いている現在、僕は又吉さんのオフィシャルコミュニティ『月と散文』に加入しようか迷っているくらいである。そんな中で『人間』という小説が文庫化されると知り、好きな人のエッセイばかりを読んでいた僕は小説を読んでみることにした。
ゴールデンウィークで実家に帰省する電車の中で、黙々と読み耽りました。この小説を機に、僕は小説を読むことの楽しさを知りました。理系のくせに現代文が得意な野郎だったのに、なぜそれに気がつけなかったんだろうと後悔しました。高校生の時に気付きたかったです。
主人公である「永山」と、永山が嫉妬に近い感情を抱く「影島」。この二人のバーでの会話を、隣で聞いていたい。
2.山里亮太『天才はあきらめた』(朝日文庫, 2018)
【読了:2022.05.19】
お笑いコンビ『南海キャンディーズ』の山里さんは、先に挙げた '敬愛する何人かのお笑い芸人さん' の内の一人である。昨年初めて山里さんの『山里亮太の140』を見て、今年は『山里亮太の81』を見た。それはもう圧巻だった。記憶こそないものの、すごいものを見せられた。
そんな山里さんのエッセイを改めて読んでみた。この本をいつ買っていつ一回目を読んだのか覚えていないが、このエッセイから僕が学ばなくてはならないことがたくさんあった。
3.朝井リョウ『何者』(新潮文庫, 2015)
【読了:2022.05.19】
”何者”という言い回しと出くわす機会が意外とある。試しに「何者かになるためには」などとネットで検索してみると、哲学っぽい内容を含んだサイトがたくさん出てくる。その中でも、「アイデンティティ(=自己同一性)」という単語との親和性があるように思える。唯一の才能や価値を手に入れることでなれるぼんやりとした人物像、それが”何者か”である。
読んだ本が偏っているとは言え、僕はいまだに、筆者が「何者かになれた!」と語るエッセイやそういう人物が出てくる小説、そのどちらも読んだことがない。そういった本に出会いたい気もするし、出会いたくない気もする。
4.朝井リョウ『何様』(新潮文庫, 2019)
【読了:2022.05.23】
「何者」を読んだ人には、絶対おすすめしたい本です。誰のことも悪く思えなくなります。そして、「現実でもそうしなくちゃ」という気分にさせてくれます。
5.朝井リョウ『正欲』(新潮社, 2021)
【読了:2022.05.29】
読み終わった時、何をする気も起きなくなりました。「正しい命の循環」
「『明日、死にたくない』人が『明日死なない』ための情報」「選択肢はあるのに選べない辛さ」。この3つの言葉が、ことあるごとに頭に浮かんできてしまいます。来年、映画化もされる作品ですので、興味がある方は是非。
6.朝井リョウ『もういちど生まれる』(幻冬舎文庫, 2014)
【読了:2022.05.30】
「おすすめの小説ある?」と聞かれたら、現時点ではこの小説を一番におすすめします。そのくらい好きな小説でした。何気なく平積みで手に取った本でしたが、一文目から心惹かれました。連作短編ですので読みやすくて読後の充実感があります。是非。
7.朝井リョウ『どうしても生きてる』(幻冬舎文庫, 2021)
【読了:2022.06.04】
8.朝井リョウ『時をかけるゆとり』(文春文庫, 2015)
【読了:2022.06.11】
バイトの休憩時間に読んでて、腹ちぎれるかと思いました。
9.太宰治『人間失格』(新潮文庫, 2012)
【読了:2022.07.29】
又吉さんの『人間』を読んだりYouTubeをみたりして、流石に読まなくてはなと思って読みました。葉蔵モテすぎ。
10.朝井リョウ『ままならないから私とあなた』(文春文庫, 2019)
【読了:2022.08.03】
「エモい」なんて便利な言葉が今はありますが、その正体がただの思い出補正であるというのがよくわかりました。「〇〇がないなんてかわいそう」と言えるのは付随している思い出があるからで、それが無い世代からしてみればただの不便や危険でしかありません。便利になる世の中で何を楽しめるか、何に楽しみを見出すか。そこが人間の芯なのかもしれないなと感じました。
11.恩田陸『夜のピクニック』(講談社文庫, 2015)
【読了:2022.08.21】
とある高校の3年間と学校行事の「歩行祭」を取り巻く人間関係が描かれています。自分には絶対になかった世界でした。あと、夜空や海の描写が綺麗です。
12.歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』(文春文庫, 2017)
【読了:2022.08.23】
何も聞かずに読んでください。
13.島本理生『夜はおしまい』(講談社文庫, 2022)
【読了: 2022.08.23】
帯にも書かれている通り、この本はとある神父と4人の女性をメインとした短編小説です。紗倉まなさんの解説まで読み、自分の感想を精査して見てください。AV女優という肩書きを持つ人だからこそ書くことができる解説でした。本当に読んでよかったです。
14.綾瀬まる『朝が来るまでそばにいる』(文春文庫, 2020)
【読了:2022.08.24】
不思議な何か、不思議な感覚。夢か現か。読み進めるうちにどんどん気になる箇所が出てきて、気がついたら何十ページも戻って読み直したりしていました。6編の短編が収録されていて本自体も分厚くは無いので、とっつきやすいと思います。
15.窪美澄『夜のふくらみ』(新潮文庫, 2017)
【読了:2022.08.28】
完全にタイトルと表紙に惹かれて買ったのですが、この本を読んで完全に窪美澄さんの虜になりました。連作短編という括りになると思うのですが、人間関係の変化を整理しながら読んでおくといいと思います。
それと、尾崎世界観さんの解説の最後3行に、生きる上での全てが詰まっているように感じました。
16.汐見夏衛『真夜中の底で君を待つ』(幻冬舎文庫, 2021)
【読了:2022.09.02】
◇
主人公が働いているバイト先の人が本当に本当にいい人たちです。主人公も言ってましたが、「普段は透明人間扱いのくせに」って俺も思います。都合のいい時だけいいように使われてたまるかよって。
17.朝井リョウ『少女は卒業しない』(講談社文庫, 2015)
【読了:2022.09.02】
こちらも来年映画化される作品です。卒業式前日と卒業式当日の2日間を舞台にした短編集なのですが、虜になりました。少しずつ繋がっている話がもう良いんです。どれも捨て難いのですが、『エンドロールが始まる』の主人公の感性が、僕は好きです。本が好き、というのもあるのかもしれませんが。
18.朝井リョウ『風と共にゆとりぬ』(文春文庫, 2020)
【読了:2022.09.04】
バイトの休憩時間に読んでて、腹ちぎれるかと思いました。
19.朝井リョウ『そして誰もゆとらなくなった』(文藝春秋, 2022)
【読了:2022.09.06】
バイトの休憩時間に読んでて、腹ちぎれるかと思いました。(お腹ゆるゆる族の仲間より。)
20.町田そのこ『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』(新潮文庫, 2021)
【読了:2022.09.09】
書店に行くたびに毎回気になっていた町田そのこさん。読みながら違和感を全く抱いていなかったところを突かれる瞬間があって好きになりました。「自分の人生本当にこれで良いのか、この方向で決断して良いのか。」という葛藤の応酬でした。
あと、俺も深夜の展望公園で炒り卵のおにぎり食べたいです。
21.『深解釈オールナイトニッポン』(扶桑社, 2022)
【読了:2022.09.11】
夢のある世界だなとも思いつつ、夢のような世界だなとも思いつつ。最近の「星野源のオールナイトニッポン」を聞いている時にもたまに思うのですが、「縁」と「公言する事」の大事さを感じました。
22.朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』(中央公論新社, 2019)
【読了:2022.09.13】
今年読んだ本の中で一番ボリュームがあった本でした。タイトルがもうとにかく気になって、気がついたらネットで注文していました。この本は「螺旋プロジェクト」という企画の一つとして書かれてはいますが、それを意識しなくても十二分に楽しめると思います。一度、「死にがい」という考え方に触れてみてほしいです。
23.星野源『そして生活はつづく』(文春文庫, 2013)
【読了:2022.09.15】
星野源さんのエッセイを読もう読もうとは思っていたものの、ずっと積読状態が続いてしまっていました。4冊目のエッセイ『いのちの車窓から』を再読したくなり、それをきっかけに積読を脱する事ができました。「生活が苦手」という著者の源を感じられる一冊です。とても面白いです。
24.星野源『働く男』(文春文庫, 2015)
【読了:2022.09.16】
このエッセイでは、源さんの原体験のようなものが垣間見えていると思います。数多の種類の仕事をしているからこそ生み出せる文章でした。
2章目は「文筆家」としての章なのですが、サクッと読める文量の映画コラムなのでとっつきやすいと思います。(何作か作品をピックアップしたはしたのですが、まだ一つも見れてないです。)
巻末の又吉直樹さんとの対談も是非。
25.星野源『よみがえる変態』(文春文庫, 2019)
【読了:2022.09.17】
著者が1度病で倒れたことはテレビやラジオなどからの情報で知ってはいたのですが、こうして描写されると、本当に今も声を聞けることに感謝しかありません。よみがえってくれてありがとうございます。
26.星野源『いのちの車窓から』(角川文庫, 2022)
【読了:2022.01.26】【読了:2022.09.23】
数名の人との出会いの話と、『恋』という楽曲の歌詞の一部が生まれた瞬間のエピソードがすごく好きです。
27.BSジャパン, 若林正恭『ご本、出しときますね?』(ポプラ社, 2017)
【読了:2022.09.23】
作家さんの話の盛り上がり方がすごく好きでした。好きな作家さんがラインナップにいらっしゃる方は、買って損はないと思います。
28.森博嗣『喜嶋先生の静かな世界』(講談社, 2013)
【読了:2022.09.30】
友人の「勉強のやる気が湧いてくる」という触れ込みに感化されて購入した一冊です。これから先に待ち構えている大学の卒業研究が、少しだけ億劫ではなくなったような気がしています。
29.朝井リョウ, 円城塔, 窪美澄, 佐川光晴, 中村文則, 山﨑ナオコーラ『夜ふかしの本棚』(中公文庫, 2020)
【読了:2022.09.30】
6人の作家さんが持ち回りで本の紹介をしてくださいます。文庫本の解説を集めたようなイメージです。たまに自身の著作を取り上げていたりもするので買いだと思います。
30.さくらももこ『もものかんづめ』(集英社文庫, 2001)
【読了:2022.10.06】
作家の朝井リョウさんが「さくらももこさんのエッセイが好き」と自身のエッセイに書かれていたのをなんとなく覚えています。一際目立つ黄色の背表紙に吸い込まれ、サクッと読み終えてしまいました。人のいないところでケラケラ笑いながら読むのをおすすめします。
31.三浦しをん『愛なき世界 (上)』『愛なき世界 (下)』(中央公論新社, 2021)
【読了:2022.10.14】
森博嗣さんの『喜嶋先生の静かな世界』と同様、研究を行う大学生たちを軸に据えた小説です。この本を買った頃は上下巻になっている本を読んでみたいな〜と思っていて、タイトルに惹かれて購入しました。主人公の二人とも芯を持っていて、素直で、純粋で、本当に見習わないといけないなと思いました。
それと、巻末に用語解説が付録として載っているのですが、「藤丸くんに伝われ」ってのがいいですよね。
32.窪美澄『水やりはいつも深夜だけど』(角川文庫, 2017)
【読了:2022.10.18】
「あなたに影響を与えた小説10選」みたいなことをしたら、僕は絶対にこの小説をいれます。物事のネガティブな側面から目を背けず僕は生きていきたいです。
33.窪美澄『夜に星を放つ』(文藝春秋, 2022)
【読了:2022.10.23】
『水やりはいつも深夜だけど』もそうでしたが、出てくるモチーフに統一感がある短編が複数種録されているタイプの本が僕はすごく好きです。時間軸的にコロナが存在する時期の話もあり、感じるものがありました。
『銀紙色のアンタレス』と『星の随に』が僕は特に好きでした。
34.朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』(中央公論新社, 2022)
【読了:2022.11.01】
「螺旋プロジェクト」として書かれた8作が文庫化するということで、これを機に全作読んでみたくなりました。再読したいなともずっと思っていたので読み返しました。
35.伊藤朱里『名前も呼べない』(ちくま文庫, 2022)
【読了:2022.11.08】
タイトルにビビッときてすぐレジに持って行った本です。グサグサを心を突き刺してくる一文がいくつもあって読んでいて参ったのですが、俺も心のどこかで思っていたこともたくさんあり、忘れられない本です。
分厚い本というわけではないので、読み始めやすいと思います。
36.ふかわりょう『世の中と足並みがそろわない』(新潮社, 2020)
【読了:2022.11.19】
タイトルがもう、素晴らしいんですよ。好き。書店の本棚で見つけた時、「これは読まなきゃ」と思いました。結果的に1年以上積読していたのですが、早く読むべきでした。
小さなエピソードが羅列され、最後に一本言いたいことの筋がある文章に、そこはかとない親近感を抱きました。読みやすくて面白いエッセイです。
37.伊坂幸太郎『シーソーモンスター』(中央公論新社, 2022)
【読了:2022.11.26】
「螺旋プロジェクト」という企画の中の一冊です。時系列としては、『死にがいを求めて生きているの』の前後にあたります。バブルと近未来のそれぞれを描いた2編から構成されている1冊です。企画としての関係を意識して読んだのですが、やっぱりめちゃくちゃ面白かったです。
38.ふかわりょう『ひとりで生きると決めたんだ』(新潮社, 2022)
【読了:2022.11.28】
ふかわりょうさんのエッセイ最新作です。タイトルで即決でした。面白い話もあり、深い話もありでおすすめです。
39.伊藤朱里『きみはだれかのどうでもいい人』(小学館文庫, 2021)
【読了:2022.12.4】
こちらもタイトルで購入を即決した本でした。勝手にタイトルから投げやりな意志を感じ取ってしまっていましたが、真逆でした。今年読んだ本の中で、一番ドッグイアをつけたと思います。登場人物がほぼ女性の連作短編で、仕事場でのドロッとした人間関係や人間性が描写されています。なかなかボリューミーですが、どの編もおすすめです。
40.辻村深月『傲慢と善良』(朝日文庫, 2022)
【読了:2022.12.14】
解説が朝井リョウさんということで購入したのですが、ゾーンに入ってからは読み終わるまでが一瞬でした。2022年最後に読んだ本はこれにしておこう、と思える小説でした。前半を読み進めている時の「どう話が進んでいくんだ」という感覚と、後半を読み進めている時の「どう話がまとまるんだ」と言う感覚が最後で綺麗にまとめられていて、読後感は筆舌に尽くし難かったです。
自分の傲慢さ善良さと言うものを突きつけられ、考えさせられました。
あと、朝井リョウさんの解説が頭からずっと離れません。
#328 読了日記2022
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