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第6回 〔綴じる〕実はとっても繊細!本の背表紙のつくり方


「本の背表紙ってどうやってぴったり合わせるんだろう?」

文芸誌を発行されている編集者の方から、本の背表紙についての質問をいただき、調査を進めている中で私自身に湧いた疑問でした。

無線綴じ◆で背表紙をつくる場合、40ページ程度だと、背幅は4mm程しかありません。

「数mmの範囲に文字を入れて、本の背幅にぴったり合わせるのって、かなり高度な技術では?」

本文を表紙でくるみ接着する無線綴じ


背表紙をぴったり合わせるポイントは「前工程」にあり!

早速、工場で製本を担当されているMさんに聞いてみることにしました。

は:おつかれさまです!
今日は背表紙について教えてもらいたいんです。
本の背表紙を数mm単位でズレなく合わせるのって、何か高度な技術や秘訣があるんですか?

Mさん:おつかれさまです。
全くズレなく合わせるというのは、なかなか難しいのですが、できるだけズレを防いで背表紙を巻くには、製本の前工程で注意するポイントがあります。

は:前工程?背表紙を巻く製本工程だけではないんですか?

Mさん:そうです。背表紙のズレを防ぐためには、製本の前工程から、用紙の状態や印刷物の特徴に注意をする必要があります。

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各工程でのポイントは3つです↓

①印刷工程

オンデマンド印刷◆のように、印刷時に熱をかける方法の場合は、
用紙がほんの少し波打つ可能性もあるので、用紙の種類や印刷方法に
よっては、後々の製本工程に影響があることをあらかじめ考慮しています。

②断裁工程

例えば、表紙の表1と表4(表紙を全面に開いた場合の右と左)でも、ベタ(塗りつぶし)の面積の違いや用紙の状態などで、断裁した際に多少ズレが生じる場合があります。
一枚ずつは目で見ても分からないズレでも、積み重ねて束にすることで、後々の製本工程に影響が出る誤差につながることがあります。
断裁は用紙断面の目安位置を確認し、微調整をしながら行っています。

②製本工程

無線綴じ機は、表紙が機械に挿入された後、用紙の寸法に合わせて、押さえのような役割のバーが動き、紙を天地左右で支えます。
その際に機械の多少の誤差で、押さえに余裕ができた場合は用紙が中で動き、逆にきつくぴったりと支えてしまう場合は、 紙がほんの少し波打つことで同じく用紙が動いてしまい、センターがズレることがあります。
これらのズレが発生した場合、早い段階で気付くことができるよう、目視で確認しながら製本を行っています。

無線綴じ機で紙をささえる動きを再現する様子


この部分が用紙のサイズに合わせて動く!


見やすいように機械を開けて説明してくれた!


Mさん:以上が、背表紙をつくる際に注意しているポイントです!

は:なるほど、製本工程だけでなく、その前工程や用紙の状態、印刷物の特徴をきちんと把握することで、綺麗な背表紙がつくられるんですね。
製本って実はとっても繊細な作業なんだ……。


「大切なのは各工程で責任を持って、品質の高い印刷物をつくることです」


背表紙についていろいろお話を聞いた中で、担当のMさんが言われていた言葉が印象に残りました。

「製本は最終工程なので、ズレが発生するなど、何かあれば機械を止めて確認しています。前工程に責任を押し付けるのではなく、各工程で責任を持って品質の高いものをつくるという意識で作業をしています。」

「か、かっこいい……。」

各工程担当の「品質への高い意識」と「責任感」に支えられて、本がつくられていることを改めて実感しました。


▶用語集

◆無線綴じ
糸や針金を使わずに、折丁(刷り本を折った製本上の1単位)の背を接着剤で綴じて、表紙でくるむ製本方法。最も一般的な製本方法で、ページ数が多めの冊子の作成に向いています。

◆オンデマンド印刷(POD:Print On Demand)
データを直接出力する印刷方式。トナータイプの出力機で、オフセット印刷では必要となる版が不要なため、短い納期や少部数の印刷に向いています。


▶小さな出版と本の研究室は、本や冊子づくりをサポートします

この研究室は大阪市内の印刷会社で働く二人が中心となり運営しています。「こんな製本できますか?」「この色と組み合わせる紙は何がいいですか?」「本に関するお悩み相談をしたい!」など、少しこだわりのある本や冊子づくりを考えている方のサポート(時には一緒に考えます)をいたします。
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