WKB53(AT限定)vol.13
第二形態〜人形の館と路上のルール〜
申請した仮免が届くまで、第二段階の路上教習にはまだ出られない。
最短でできることは、応急救護の講義とのことなので
さっそく、予約してしまう。
仮免までが長かったので、ここからは巻きで行く(予定)。
当日、時間になって講義の部屋に行くと、誰もいない。
この部屋でよかったのか?と不安になっていると先生が来た。
今日の参加者は、私だけ。つまり貸切である。
多い時少ない時、波はあるけど
ひとりしかいないというのは珍しい、らしい。
「まずはビデオを観るんですけど。
怪我とか、出血のシーンがあるので
苦手だったらそこは見ないでやり過ごしていいですからね」
先生は気遣ってくださったけど
医療ノンフィクションの手術シーン
(ぼかし無し)も、
『警察24時』のバイオレンスシーン
(ぼかし有り)も
いつも普通に見れているから、
多分大丈夫であります。
本来は複数人で受ける授業であるから、
すでに横たわった人形たちの数が
やたら多くて、シュールな眺め。
"全員、助けなければならない。過酷な任務だ…"
話し相手がいないから気分だけでも
盛り上げて臨もうとしたが、その必要はなかった。
マンツーマンの3時間の講義の間、先生が
人形を少しずつ片付けて最終的に
救護すべきは一人(一体)だけとなったから。
胸骨圧迫!気道確保!AED!
胸が沈まなくなってきた、つらい。
でも今日はひとりだから交代要員がいない。
「ドラマで、医師が患者に馬乗りになって
胸を押すシーンがあるけど、そのくらい力が必要ですよ」
先生、その喩えはものすごくわかりやすいです。
今、鮮明なビジョンが浮かびました。
ゼーゼー言いながらなんとかできた。
白衣をはだけて髪を振り乱す医師になりきって。
あと『緊急車両24時』を観ていたおかげでも
ある。
実践が必要な時はできれば来ないで欲しいけど、
いざという時ちゃんとできるように復習して
覚えよう。
数日後、仮免が来て教習予約可能になったので即、ポチ。
担当のI先生に、走行前の点検から教わる。
これからは自分でやるのだ。
「では行きましょう」
しゅるしゅる、とハンドルを切って
40km/h制限の路上へ出る。
仮免持ちという第二形態となって。
後から不思議だったんですけど。
安全確認とか、
車の流れ途切れてるぅチャンスー、とか
制限速度いっぱいまで出しちゃお。とか
なんの感慨もなくやっていた。
きっと、路上に出たらあわわわー(汗)ってなるんだろうなあ…
って思っていたけど、ならなかった。
「何も言わない時は、そのまま(直進)ね」
しばらく走って細い道へ曲がると、車の流れが止まった。前の車がすごく近く感じてちまちまブレーキを踏みたくなる。
「前の車見ててごらん、止まる時まで全然ブレーキ踏まないでしょ。
あのくらい無駄なく踏めるようになりましょう」
広い道細い道、くねくね道。
いちおうここは地元だが、全く知らない道を先生に言われるまま走る。
ここどこ?って思いながら黙々と。
標識や標示、
道路にはいろんなことが書いてある。
頭の中の独り言でそれに答えながら
右折して左折して、あっという間に1時間の
初・路上は終わった。
もちろん緊張はするし
決してスムーズではなかったと思うけど。
所内で決まったことをきっちりやらなければならなかったほうが、大変だった気がする。
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