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WKB53(AT限定)vol.16

キケンな昼下がり

今回の教習はー
危険予測!
これも複数人だけど、またどうせひとりなんだろうね。と
車の中にどっかり座って待っていた。

すると、EXILEに居るか居たかの誰か、みたいな
感じのお兄さんが同じ車に乗って来た。
ナチュラルに、新しいタイプの先生かと思った。
リーゼント刑事、とかそういう。

でも原簿持っている…ということは。
”え?この人免許持ってないの!?”
胸の中は急にざわついて、
挨拶する声が裏返ってしまった。

初めてここに来た日以来、なんとなく
見た目だけで仲間だ!って思うと、
ことごとく我が子の送迎に来ている中高年。
早く子どもに免許取らせて、運転を引退したいと思っているに違いない(偏見)ステージに
到達している人々ばかりであった。
学科の教室も、教習で組むのも、
too young peopleばかり…
まあ春先という、時期的なものもあるんでしょうけど。
大人の同志、みたいに(こっちが勝手にだけど)思える人には、出会っていなかった。

でもこの兄さんは、見たところ40歳前後だけど
今ここにいるってことは
これから免許取るんだよね?
私と同じ、普通一種AT限定を。
意外すぎる。

私が前半やらせてもらい
後半、兄さんの運転に代わると
今までにない光景に出くわした。

車線一杯塞いで停車している観光バス。
避けて行こうにも、反対車線の状況が見えない。
しかも、幼児が次々降りてきては
信号のない横断歩道を
わらわらと渡っていく。
停止線のこっち側で困惑する我々の車に気づいて旗振り係のママが、慌てて交通整理を
してくれる。
ほっとしたのも束の間、
反対側から今度は、小学生の集団下校が
きてしまった。
何これものすごい「徐行・一時停止」シチュエーションのコンボ。

しかし兄さんは鮮やかにそこを抜けていった。
私だったら、絶対に焦って
先生に助けられていたと思う。
兄さんは運転がうまかった。ものすごく。

教習所に戻ってそのまま学科の授業へ続く。
さっきの教習コースで気になるところ、危険だと思うところ、
先生は私にばっかり話を振ってくる。
「◯◯橋のところは、見通しが悪くていつも怖いんですよね」
とか、思い出しながら答える。
「あーあそこね。〜」
先生と一緒に兄さんも色々教えてくれる。
先生がふたりいるみたいだ。
最後の方になってやっと先生が
「Nさんはどうですか?」
と兄さんに振った。
「さっきのバスはやばかったですね」
兄さんも怖かったんだ。なのに
見事に切り抜けてすごい。

「うん、今まであんな状況見たことないから
焦ったよ〜でもNさんはもう、ベテランだもんね」
??ベテラン?
まだ第二段階私と同じ14時間目でしょ?

そこで私は最初の技能の日の先生に
聞かれたことを思い出し、はっとなった。
「免許なし」って書いてあるのに、
なんでそんなこと聞くのかな?と
不思議だったけど。
なるほど、初めてじゃない人もいるからだ。
諸事情により。

兄さんの運転がうまいのもそういうことかあ。
「いつもだったら行っちゃってるな、って
ところも、きっちり止まりました」
って、余裕でにやりとしてた。

終了のチャイムが鳴ると先生が
「じゃあ、この次は高速教習ね」
ああ来たよ遂に。
「明日なんですよ〜」と言うと
「俺も明日です」と兄さん。
高速での兄さんの走りも見てみたい。

泣いても笑っても、寝て起きたら
やらなくてはならない。

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