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『プラスエネルギー建築』:サステナブルな未来のための100のアイデア vol.4

サステナブルな未来のための100のアイデア(通称:サス100)』は、NPOグリーンズの植原正太郎が自学自習のために更新していくサステナビリティ探究マガジンです。

年間500,000kWhを発電するオフィスビル

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まずはこちらの建築を見てもらいたい。ノルウェーの街トロンヘイムに建てられたこのオフィスビルは、3,000平方メートルの太陽光パネルが設置されており年間500,000kWhを発電する。これはビルが消費する電力の2倍だそうだ。余剰電力は売電しており、さながら発電所のような役割にもなっている。

ノルウェー・オスロの建築事務所「Snøhetta(スノヘッタ)」が手掛けた「Powerhouse Brattørkaia」は「プラスエネルギー建築」と呼ばれ、自家消費以上の電力を発電する建築だ。

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「Powerhouse Brattørkaia」が凄いのは、日常的な電力消費だけではなく、建設や解体にかかるエネルギー、建築資材の生成に含まれるエネルギーなどを合わせた量よりも多くのエネルギーを発電するように設計されていることだ。

つまり、建物の寿命にわたって消費するエネルギーよりも多くのエネルギーを生産する「世界で最もエネルギーにポジティブな建物」なのだ。しかも、世界中の同様の建物の中で最も北に位置する。彼らはこの建物を通じて、世界に新しい建築基準を設定することを目指しているそうだ。

住宅もプラスエネルギー建築へ

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こちらはスウェーデン初のプラスエネルギーハウスとなった「Villa Akarp(ヴィッラ・オーカープ)」。省エネ住宅の研究者であるルンド大学のカーリン・オーダルベット教授が自宅として建てた住宅だ。寒冷地だからこその徹底した断熱性能によってムダな電力消費を極限まで抑えている。

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スウェーデンの冬は晴れ間が訪れない「暗い冬」になる。そのためVilla Akarpは、冬の間は発電が難しく、年間2,600kWhの電力を購入することになる。しかし、夏場を中心に年間4,000kWhを発電するため、トータルでは「プラスエネルギー」となる。

エネルギー消費を最小限に

プラスエネルギー建築は「とにかくたくさん発電しよう」という考えではなく、前提として「建物のエネルギー消費を最少限にする」という努力が徹底されている。

「Powerhouse Brattørkaia」では以下のような努力がなされているそうだ。

・建物を最大限の効率で断熱する
・暖房の必要性を減らすために空気の流れを管理する
・空気とグレイウォーター(トイレ以外の排水)の熱回収技術を導入する
・冷暖房に海水を使用する
・エネルギー効率の高い電化製品のみを導入する
・太陽光を最大限に活かす全体設計によって人工的な照明の使用を最小限に抑える
(引用:greenz.jp

「Villa Akarp」のカーリン・オーダルベット教授さんはこちらの動画で「とにかく断熱性を高める、その次に機密性を高め、最後に良い換気環境をつくる」というステップを話している。これらは太陽光パネルを設置する以前の話である。

パッシブハウス、ゼロエネルギーハウスという土台の考え方

二つの事例を見ると分かる通りプラスエネルギー建築は「パッシブハウス」や「ゼロエネルギーハウス」の考え方が土台にあることが分かる。

パッシブハウスとは?
厳しい燃費の基準を乗り越えた家のこと。 断熱材や高性能な窓、熱ロスの少ない換気システムなどを駆使して、 寒さや暑さをガマンしない、快適さを生み出す家。 自然の力を最大限利用し、少ないエネルギーで、快適な暮らし。 日本の気候風土を利用した燃費の基準を、パッシブハウスジャパンは示します。
(引用:パッシブハウス・ジャパン
ゼロエネルギーハウスとは?
「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」です。
(引用:経済産業省 資源エネルギー庁

私たちがお金を貯めようと思ったら「支出を減らす」ことから始めるように、建築のサステナビリティを高めるには「エネルギー消費を減らす」ことが最初の一歩なのだろう。

パッシブハウスやゼロエネルギーハウスは建築分野での研究がとても進んでいる領域なので、ちゃんと勉強したい。

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そんなわけで今回のサス100は「プラスエネルギー建築」をテーマに書いてみました。次回もお楽しみに!

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