「これからのオフィス」はどうなる?リモートワーク前提のチームワークから考える
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「これからのオフィス」はどうなる?リモートワーク前提のチームワークから考える

植原正太郎 グリーンズ共同代表

全国的に新型コロナウイルス感染者はピークアウトし、緊急事態宣言の解除が進んでいる。先ほど、首都圏と北海道も解除された。

ただし、解除翌日に「人の動きが元通り」になることはない。「緊急事態」ではなくなったかもしれないが「感染リスク」が「ゼロ」になるわけではないからだ。1918年のスペイン風邪は「第二波」が致死率10倍となって世界中で猛威を奮った歴史を振り返ると、まったく安心できない。

さて「緊急事態宣言」が解除されると、今までの「当たり前」に幾分か戻りつつも、大幅に見直す必要のあることが現れてくる。

その最たる例が「オフィス」だ。withコロナ、afterコロナではその扱いが劇的に変わるものだ。

感染リスクを抑えるために「座席間の距離を保つ」「島型のレイアウトを崩す」といった物理的な環境の見直しはすでに議論され実践されている。しかし、ひとつ重要なテーマが見落とされているように思う。

それは「リモートワーク前提になった組織にとって、必要十分なオフィスの条件とは?」という話だ。

今回、あらゆる組織で「出勤禁止」となったおかげでリモートワークは真の市民権を得た。スモールチームやテック系企業ではこれまでも浸透していたが、全員が強制的にリモートワークとなったことはほとんどなく、しかも何千人という従業員を抱える大企業も全面リモートになった影響は計り知れない。「tipping point(転換点)」となったことは間違いない。

そして、多くの人が気づいてしまったのは「あれ?リモートワークで全然やれるじゃん」という事実だ。これまで「チームで働く」ということには「リアルに会って、対面のコミュニケーションで行うもの」という無自覚な神話があったのだが、ついに瓦解してしまった。

この3ヶ月、僕たちのチームも「完全リモートワーク」に移行して働いている。その間、スタッフがオフィスに出入りしたのは、どうしても必要な書類を取得したり、郵送物の対応をするために行った数回程度。もちろんスタッフ間の接触はない。

しかし、直近は事業の推進にブレーキがかかった感覚は一切ない。むしろ「全員リモートワーク」になったことで、コミュニケーションがスムーズになったとすら感じる。

そんな事実を目の前にして、イチ経営者として考えるのは「オフィス、どうしようかな…」ということだ。リモートワークが定常的になった今、毎月安くない金額を「地代家賃」として計上し続けるわけにはいかない。

「さっさと解約する」という選択肢はもちろんあるが、オフィスをもたない「完全リモートワーク」は中長期的にはチームワークに影響するだろうと考えているので、短絡的には意思決定はできない。

そんなことをモヤモヤ考えながら行き着いたのは「オフィス側に変わってもらうしかない」ということだ。僕が知る限り「リモートワーク前提」の組織を対象にしたオフィスサービスを提供しているところはない。

前置きが長くなってしまったのだが「リモートワーク前提の組織のためのオフィス」のあるべき姿を考えて箇条書きで考えてみたので、全国のオフィス事業者に届けば、と思う。

「信頼関係」がなければリモートワークは難しい。だけど、どうやって信頼関係を築く?

さきほど、うちの組織では「全員リモートワークでも事業推進に問題がない」という話はしたのだが、それは「コロナ前に信頼関係をベースにしたチームワークができていたから」だと考えている。

すでにスタッフ間のコミュニケーションが円滑で、自律的に動いていけるチームになっていたからこそ、驚くほど問題がなく完全リモートワークに移行ができた。つまり、組織としては「リモートワーク ready」な状態だったのだろう。リモートワーク社員をサボっていないか「管理」するような発想とは真逆にある。

しかし「チームワークの土台となる信頼関係を完全リモートワークの環境で培えるのか?」という点についての疑問は拭いきれない。なにか数値的な確証はないものの、直感的に「難しい」と思っている。このコロナ禍の中で新しい仲間が組織にジョインしてくれているのだが、組織内の「はじめまして」の人とは信頼関係を築くことが困難なように思う。


人間同士は「五感」で物事を共有するところから信頼関係がつくれる

そんなことを考えていたら、霊長類学者であり京都大学総長の山極さんがそんな直感を見事に説明してくれていた。

五感の中の触覚や嗅覚、味覚という「共有できないはずの感覚」が信頼関係をつくると言いました。たとえば、触覚は触れると同時に触れられてもいますから、非常に共有が難しい。だから、母子もカップルも、肌の触れ合いを長くすればするほど信頼が高まります。それは、「触覚」という本来「共有できない感覚」を一緒に経験しているからなんですよ。
チームワークを強める、つまり共感を向ける相手をつくるには、視覚や聴覚ではなく、嗅覚や味覚、触覚をつかって信頼をかたちづくる必要があります。合宿をして一緒に食事をして、一緒にお風呂に入って、身体感覚を共有することはチームワークを非常に高めてくれますよね? つまり我々は、いまだに身体でつながることが一番だと思っているわけです。

人間を「動物」として捉えた上で「五感」という観点から「オンライン社会における信頼関係のつくりかた」についての話は、首がもげるほど頷いてしまった。

個人でタスクをこなしたり、チームで事業を進めていくということは、現代の発明品であるSlackやZoomがあれば完全リモートワークでも十分にできる。

しかし、その土台となる「信頼関係」はスタッフ同士が視覚・聴覚以上の「五感」でなにかを共有することでしか生まれないということだ。テクノロジーは日進月歩で進化していくが、動物としての人間はそのスピードでは進化ができない。

物理的なオフィスは「信頼関係を構築」する場になる?

山極総長のお話を元にしつつ、リモートワーク組織における「物理的なオフィス」の意義を考えると、オフィスに求める役割はこういうことになるのではないだろうか?

「タスクやMTGの実施」はオンラインのワークスペースでできてしまうが、信頼関係を構築してチームワークを向上するには五感を共有できる「物理的な空間(オフィス)」が必要だ。もはやオフィスの役割はここに収斂されるのかもしれない。

これまで「オフィス出勤」が「主」で「リモートワーク」が「従」という感覚だったが、これからは対等に扱われそれぞれが得意なことを行う役割分担が進んでいくだろう。

そんなことを考える中で「これからのオフィスにどうなってほしいのか?」ということについて、箇条書きでまとめてみた。あくまでイチ企業としての好き勝手な意見だがシェアオフィス、コワーキングスペースの新規事業ネタにもなると思っているので、興味があれば参考にしてもらえれば嬉しい。

※補足として伝えておくと僕たちの組織「NPOグリーンズ」はフルタイムスタッフ4名、業務委託スタッフ10名くらいの規模感です。今は都内のシェアオフィスビルに1部屋借りて事業しています。主にメディア、スクール事業を営んでいるので「物理的に行わなければいけないこと」は比較的少ない組織です。

リモートワーク前提の組織が求める「これからのオフィス」のアイデア

・定期的に会えればそれで良い

組織内のチームワークを維持しながら、新しく加わるメンバーとも信頼関係を築いていくために、定期的に「物理的に会う」機会が必要になってくる。「週5日」は必要なく「週1日」もあれば十分だ。そのためオフィス契約も「1ヶ月フル」ではなく「週1日」のような利用契約が望ましい。

・利用頻度、規模に併せて柔軟に変わっていく家賃

上記と関連するが専用部屋を「週1日」で契約しつつも、顔を突き合わせて短期で進めるプロジェクトが発生した場合には「週3日」にすぐに切り替えられるといった柔軟さもあると素晴らしい。また子育てなどの理由で在宅ワークが難しいスタッフのためには、作業用の「個室」を複数付け加えて契約できると尚良い。ここまで来ると「賃料」というよりは「サービス利用料」に近い。「OaaS / Office as a service」という言葉があるか知らないが、感覚的に求めてるのはそんなもの。


・グラデーションのある組織として利用できる空間である

「そんな柔軟に利用をしたいならコワーキングスペースでも契約すればいいじゃないか」という声が聞こえてきそうなのだが、フリーランスも多く関わるグラデーションのあるような組織の場合「コワーキングスペースを人数分契約する」ととても割高になってしまう。かと言ってフルタイムスタッフだけ契約すると、フリーランスメンバーが利用しづらくなってしまう。また、会議の話し声が筒抜けになってしまうのはコンプラ的にも避けたいので、週1日程度、組織として利用できる「プライベート空間」があることがやはり望ましい。「Airbnb」でお眼鏡にかなう空間を定期的に借りてオフィス代わりにするというのはありかもしれない。


・信頼関係を構築できるような機能がオフィスに備わっている

これが今回の一番大事な話なのだが、前述の山極学長の話のなかで「合宿をして一緒に食事をして、一緒にお風呂に入って、身体感覚を共有することはチームワークを非常に高めてくれますよね?」という部分を引用した。これまでそういうことは「オフサイト off-site」で行っていたが、これからのオフィスは「オンサイト on-site」で行うことができれば最高だ。例えば、キッチン設備が充実しててみんなでごはんをつくれるオフィス、屋上でBBQができるオフィス、銭湯併設のオフィス、みんなで運動ができるオフィス、畑作業ができるオフィス等。毎週なのか隔週なのかはわからないが、定期的に集まって、チームの信頼関係を築くアクティビティをオフィスでできれば面白い。


・モノを持たなくて済むようにオフィス用品・機器は「シェア」

チームとしてオフィスの捉え方が変わるので、できる限り「身軽」でいたいと思うようになる。そのためオフィス家具や機器は自社で持ちたくない。働く環境で必要は備品は施設側でサービスとして提供されることが望ましい。組織として「ミニマル」でいられるオフィスに人気が出るのではないだろうか。


・利用するチーム間のコラボが起きる

オフィスを「週1日」しか使わなかったら「週4日」はどこか別なチームが使うことになる。理想を言えば、オフィスを共有することになる別なチームは、文化・価値観的に近しいものがあると素晴らしい。組織間で定期的な交流があり、お互いの事業でシナジーが生まれれば最高だ。仕事につながらなくても「知識・ノウハウの共有」といったことでも十分良い。


・登記もでき、郵送物の受け取りもできる

大前提の話だが、そのオフィスが登記に利用ができ、書類や荷物の受け取りもできるのも大事だ。機密資料を管理できるロッカー機能もほしい。これは「Airbnb」の単発オフィス利用ではできないことだ。


・オープンエアの空間がある

これからオフィスという「密閉空間」で働くことに違和感やストレスを感じる機会は増えるだろう。そのため生き抜きができ、さらには作業もできるようなオープンエアの空間(テラス、屋上etc)があることも望ましい。


・オンライン会議、ライブ配信ができる空間がある

今回のコロナ禍をきっかけに、事業そのものを「オンライン化」する組織も増えている。自社で配信設備を持つのはコストがかかるので、施設側に「スタジオ」のようなものがあれば人気になるだろう。


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というわけで、妄想混じりに書きたい放題書いてしまったが、そんなオフィスを求める組織も多いはず。要は「WeWork」的なオフィスがフィットするのかもしれない。でも賃料高いからお値段的にはもう少しカジュアルなやつを希望(笑)

そんなわけで、みなさんからの知恵や情報もシェアしてもらえると嬉しいです!

植原正太郎 NPO法人グリーンズ COO/事業統括理事
1988年4月仙台生まれ。慶應義塾大学理工学部卒。新卒でSNSマーケティング会社に入社。2014年10月よりWEBマガジン「greenz.jp」を運営するNPO法人グリーンズにスタッフとして参画。2018年4月よりCOO/事業統括理事に就任し、健やかな事業と組織づくりに励む。本業の傍ら、都会のど真ん中に畑をつくる「URBAN FARMERS CLUB」も展開中。循環型社会やサステナビリティについて勉強中。一児の父。

Twitterやってます:@little_shotaro

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植原正太郎 グリーンズ共同代表
いかしあう社会づくりのヒントを発信するWEBマガジン「greenz.jp」を運営するNPOグリーンズで健やかな経営と事業づくりに励んでます。2021年5月に家族で熊本県南阿蘇村に移住。暇さえあれば釣りがしたい二児の父。