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『都市鉱山』:サステナブルな未来のための100のアイデア vol.1

サステナブルな未来のための100のアイデア(通称:サス100)』は、NPOグリーンズの植原正太郎が自学自習のために更新していくサステナビリティ探究マガジンです。

都市鉱山の金メダル

気づいたら2020年に突入しましたね。待ちに待ったオリンピックイヤーな訳ですが、日本も競技場の再エネ化をはじめとしたサステナビリティへの取り組みにここぞとばかりにチャレンジしています。

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その中でも象徴的なのは「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」でしょう。東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会は2017年4月から不要な家電、携帯電話の提供を呼びかけはじめ、その中に含まれる金・銀・銅を回収して、それらを原料に五輪メダルをつくるといった取り組みをはじめました。

2019年夏には大会で授与される約5000個のメダルのすべての素材を無事に回収できたと発表。その量は金32キロ、銀3500キロ、銅2200キロ。「塵も積もれば鉱山となる」だ。

2013年から日本で施行された「小型家電リサイクル法」を土台にしながら、全国1200以上の自治体が参加して達成した点もなかなか凄い。

都市鉱山の現在地

現代人は電子機器なしでは生きていけない。PC、スマホ、デジカメなどあらゆる電子機器に貴金属やレアメタルが使用されている。一つの機器に含まれる量は微量だが、すべてを合わせればとんでもない量になる。

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出典:(独)物質・材料研究機構

例えば「金」の話だけで言えば、日本の都市鉱山には「6800トン」が埋蔵されていると推定されており、南アフリカの自然埋蔵量よりも多い。日本は地下資源に乏しい国だが、いまあなたが触っているPCやスマホには貴重な資源が埋蔵されているということだ。

鉱山開発によって破壊される国

「レアメタル」の国際的な問題は、聞いたことがある人も多いだろう。豊富な地下資源を保有するアフリカの国々では鉱山開発によって環境破壊、水資源汚染、人権侵害、児童労働、反政府組織の資金流出などが起きている。

例えば「紛争鉱物」に指定されている「タンタル」という鉱物はルワンダ、コンゴ民主共和国の2カ国だけで世界生産量の60%を占めるとされている。二カ国とも紛争の歴史を抱える国だが、鉱物資源の国際的な需要の高まりから「資源戦争」の最前線に晒されている。私たちのスマートフォンの裏にある世界である。

世界人口はこれからも増加を続け、2100年には110億人に達すると予測されており、それはつまりスマートフォンやPCといった電子機器を持つ人間が世界で増えることも意味している。

都会の「都市鉱山」から資源を回収し再利用する取り組みは、鉱物資源の持続可能な利用や、経済的なメリットだけではなく、鉱山国の保護にもつながるのだ。

都市鉱山に本気で取り組むApple

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引用:Apple、リサイクルプログラムを全世界で拡大

Appleは『地球から何も取らずに製品を作る。不可能に思えるでしょう。でも、それがAppleの目標です。』という言葉を掲げて、資源の問題に本気で取り組んでいる。

Appleでは、エンドユーザーから自社商品を積極的に回収しているほか、iPhoneを1時間あたり200台のペースで分解するロボット「Daisy」を開発して世界中で資源の循環利用に取り組んでいる。

また、自社商品における資源素材の環境負荷をアセスメントし、優先順位の高いコバルト、タングステン、希土類元素、タンタル、鋼鉄、銅、スズ、ガラス、プラスチック、亜鉛、リチウム、紙、金、アルミニウムといった素材の再利用を推進している。

使い終わったApple製品は決してゴミ箱に捨てずに、Apple Storeに持っていこう。

日本の「都市鉱山」サービス

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国内にも都市鉱山に取り組むサービスがある。「基板買取専門サイト キバセン」はPCやスマホの「基板」専門のリサイクル事業を展開している。なかなかマニアックな事業だが、20年間つづく貴金属スクラップの経験を生かして基板の回収&買取、リサイクルに取り組んでいる。お家に眠っているPCがあったらぜひ持ち込んでみてください。

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そんなわけで今回のサス100は「都市鉱山」をテーマに書いてみました。次回もお楽しみに!

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