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ピナ・バウシュ『コンタクトホーフ』シニアのダンサーによる公演(映像):コンテンポラリーダンスにもユーモアがなきゃ!

ピナ・バウシュ『コンタクトホーフ』を、65歳を超えた男女が踊る舞台。カーテンコールではピナ・バウシュも登場。

シーンごとに大きな拍手が、そして所々で笑いや手拍子が起こる温かい雰囲気。動画はウェブサイトで無料で視聴可能。

ドキュメンタリー映画『ピナ・バウシュ 夢の教室』(アンネ・リンゼル監督)で、十代の若者たちが『コンタクトホーフ』の舞台を作り上げるのを見たが、本作はそのシニア(高齢者)版。

映画では舞台の一部しか映されていなかったので、『コンタクトホーフ』全編を見たのは初めてだった。なんと2時間半もの大作。出演者たちはほとんど出ずっぱりだ。

出演者たちの体力はもちろんのこと、作品の芯のようなものを意識して、本気でぶつかっていく踊りに驚嘆させられる。

特別に「ダンス」っぽい動きではなくても、単純なステップの繰り返しでも、構成や演出次第でダンスになるのだという好例。ピナ・バウシュの『カフェ・ミュラー』でも重要な役割を果たしていた「椅子」が、本作でも活用されていた。

性的なものが大きなテーマで、なかなかきわどく危ういシーンもある。若者がそれを行うのと高齢者が行うのとでは意味合いが違ってくることもあるだろうし、逆に共通する部分もあるだろう。

せりふを言う場面も比較的多く、「声」も「動き」と同様、表出の手段の一つとして扱われている。(映像では、ドイツ語のせりふに英語字幕が付いている)

言葉でも動きでも、ユーモアが欠かせない要素になっている。笑えるが、そこには狂気もあり、恐怖も暴力もある。

踊りの「下手さ」も取り込んでしまう演出の巧みさ。上手、下手の区別はあり、特に重要な役割を一部のダンサーが務めてはいるが、一人一人の人生経験や考えなどが出てくることを重んじているようだ。

2時間半は長いとも感じるが、最初と最後に、同じような動きながら男女の動きが入れ替わっているようなシーンもあり、必然性はあるのかもしれない。

生の舞台で見られたら、踊る方だけでなく観客も大きな爽快感が得られるだろう。

▼動画

作品情報

Pina Bausch (1940-2009)
Kontakthof mit Senioren ab "65" (2000)
Premiered in 2000.

Inszenierung und Choreographie - Pina Bausch
Bühne und Kostüme - Rolf Borzik
Mitarbeit - Rolf Borzik, Marion Cito, Hans Pop
Spielleitung - Hans Pop
Assistenz - Robert Sturm
Einstudierung - Josephine Ann Endicott, Beatrice Libonati
Probenleitung - Beatrice Libonati
Kostüme nach dem Entwurf von Rolf Borzik - Marion Szito Mitarbeit - Petra Leidner, Birgit Stoessel

Rosemarie Asbeck, Wolfgang Danzberg, Lore Duwe-Scherwat, Jutta Geike, Wolf-Amadeus Gericke, Inge Glebe, Günter Glörfeld, Dieter Grotehusemann, Peter Kemp, Gerd Killmer, Anke Klammer, Werner Klammer, Thea Koch, Dieter Linden, Heinz Meyer, Renate Nickisch, Heinz Nölle, Edith Rudorff, Bärber Sanner-Egemann, Hannelore Schneider, Margarita Schwarzer, Ursula Siekmann, Alfred Siekmann, Ralf Straßmann, Reiner Straßmann, Luzie Wild

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