英国グローブ座『ロミオとジュリエット』シェイクスピアの恋愛悲劇：正統派だがしっくりこない

イギリスのグローブ座による2009年の公演『ロミオとジュリエット』が期間限定で無料配信された。約2時間52分。

ロミオ役は、ナイジェリア出身のアデトミワ・エデュンで、ビデオゲームの『FIFA 17』『FIFA 18』『FIFA 19』のアレックス・ハンター役をのちに務めたらしい。当時は25歳くらいか。

ジュリエット役は、イギリス出身のエリー・ケンドリックで、当時19歳くらいか。『ゲーム・オブ・スローンズ』のミーラ・リード役で知られているらしい。

ロミオを黒人の俳優が演じているのは、「多様性」を示す常套手段のようなところがあるとして、それ以外はだいたいがスタンダードな感じの演出。

シェイクスピアの時代らしい生演奏や歌はよい。

戯曲からカットしているシーンは少ないと思う。下品なジョークなどが強調されている。それはオリジナルの戯曲どおりなので、そのあたりもオーソドックス。

ただ、観客は笑ってはいるのだが、動画で見る限り、笑わせるはずの場面はほとんどすべっているように感じられた。空回りというか。

それは笑いに限らず、ほとんどどの役もしっくりこず、ちょっとうんざりする。演技も、下手なわけではないのだろうが、怒鳴ればいいってものじゃないというか・・・。強弱・緩急やニュアンスがないというか、全体的に硬く、未熟な感じがした。

『ロミオとジュリエット』は、シェイクスピア作品の中で、世界中で最も有名な作品だろうが、素晴らしい舞台にするのは意外と難しいのかも。本作のジュリエットは「不愉快」な印象。今までどれだけ不愉快なジュリエットを見てきたかと思うと、やはり難しい役なのだろう。『ハムレット』のオフィーリアもだが。

ベンヴォーリオ役は多少健闘。乳母役は発音をワーキングクラスの英語にしていたと思う、本作の中ではまあまあか。

最後の墓の場面でロミオがパリスを殺すところは、あっけない演出も多いように思うが、本作では、割とロミオがちゃんとパリスに向き合っていた印象だった。

なんだかんだ言って、ラストシーンはやっぱり涙ぐんでしまうのだけどね・・・。この劇の力ですかね。

作品情報

Romeo and Juliet (2009) for Free | Globe Player | Shakespeare's Globe

Watch Romeo and Juliet for free, with Ellie Kendrick and Adetomiwa Edun as the star-crossed lovers, filmed from Shakespeare’s most famous stage.

Romeo and Juliet YouTube Premiere available until Sunday 3 May 2020.

Romeo and Juliet story
A violent street brawl between their rival families is the prelude to Romeo’s first encounter with Juliet. Despite this, and the fact that Juliet has been promised to another man in marriage, they fall in love. But any plans for their future happiness are cruelly destroyed by renewed violence between the two families – and while the adults remain almost comically preoccupied with their own affairs, among their children a hidden tragedy begins to unfold.

About the production
Dominic Dromgoole’s production brings refreshing clarity to one of Shakespeare’s most famous and best-loved tragedies, drawing out the contemporary relevance of this passionate teenage love story.

Ellie Kendrick, a truly youthful Juliet, and Adetomiwa Edun, a boyish Romeo, head an excellent cast whose period costumes point to the timelessness of parental disapproval, adolescent temperament, rivalry and violence.

▼英国グローブ座『二人の貴公子』が2020年5月5日午前3時～5月18日午前3時（？）（※日本時間）に無料配信。

Shakespeare's Globe