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後藤美波、塩見允枝子『SHADOW PIECE』ジェンダー、女性アーティスト、フェミニズムを考える短編ドキュメンタリー

1993年生まれの20代の映像作家、後藤美波氏が、1938年生まれで81歳の現役アーティスト、塩見允枝子氏にインタビューを行い、美術関係者の話も聞いてまとめた、10分間のドキュメンタリー。オンラインで無料公開されている。

塩見氏は平面作品やパフォーマンスなどで知られる前衛アーティスト。東京藝術大学で作曲を学んだ後、アメリカで「フルクサス」のアート活動に参加。帰国後も芸術家として活動していたが、30歳を過ぎて見合い結婚、出産、育児を経る中で、アート活動ができなくなっていく。

しかし、家にいてもできる活動をと、「スペイシャル・ポエム」という作品を作り始める。それは、世界中のアーティストたちに「SHADOW」という文字をかたどったものを封筒で送り、それを思い思いのシチュエーションで撮った写真を送り返してもらい、その写真を集めて作品としてまとめていくというもの。家の郵便受けに航空便(エアメール)が届くのが楽しみだったという。

最後に塩見氏が、仕事も家庭のことも責任があるからしっかりと行い、そのために効率よく動いて、その両立のためなら何でもした、というようなことをおっしゃっていて、頭が下がった。

「ご本人はフェミニズムとは言わなくても、人生のどんなステージを経ても活動をやめないで続ける、それこそがフェミニズムではないか」とおっしゃっている研究者も映っていた。

もちろん、多大な芸術的才能をお持ちなわけだが、それだけでは偉大なアーティストにはなれない。日々の実務的なことをきちんとこなしながら、家族に愛情を注ぎながら、芸術家としても進化していく。そのためには、生半可ではないエネルギーと、本当に実際的で高度な生活力、仕事力を身に付ける必要があったと思う。

その時代の女性として、「アートにだけ専念する」という人生は得られなかったが、だからこそ「スペイシャル・ポエム」といった作品が生まれた。

感想として書くとものすごく月並みな言い方になってしまうが、芸術の才能と強靭な生活力、仕事こなし力を持っている人は、本当にすごいと思うし、引き付けられる。

映像に少しだけ映った、「スペイシャル・ポエム」の本。実物をものすごく見てみたい!と思ったら、オンラインで購入できるようだ。思わずポチってしまいそう・・・。ちらっと見ただけでも、かなり魅力的だったから。

作品情報

出演:塩見允枝子、吉良智子、橋本梓、野営地の皆さん
音楽提供:塩見允枝子
監督・編集:後藤美波
撮影監督:藤井光
製作:jwcm/森下周子、山根明季子
追加撮影・色彩補正:韓東均
整音:浦真一郎

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