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英国ロイヤルバレエ『コッペリア』シネマ上映:超絶テクニックとコミカルな演技力が魅力

映画館で上映の英国ロイヤルバレエ『コッペリア』。ロンドンの劇場から世界生中継された映像を、録画として日本の映画館で見られる。

一般料金3700円と高いけど、撮影や音響の質が高い。ダンサーたちの細かい動きや表情(目の動きが重要な場面がある)も見える。

第1~3幕の全幕上映で、間にインタビューや特典映像を挟む。2回の休憩を含んだ上映時間は2時間57分。

元ロイヤルバレエ・プリンシパルのダーシー・バッセルが今回も案内役。いつもパートナーを組んでいる男性はいなくて、今回は女性とペアを組んで案内していた。バッセルは白人で、いつもの男性は黒人、今回の女性はインド辺り出身の人種と思われる。「多様性」に配慮しているのだろう。

『コッペリア』はE.T.A.ホフマンの小説「砂男」を原作とし、1870年にパリ・オペラ座で初演」された作品。

青年フランツが恋した女性は実はコッペリアという人形。「変人」扱いされている老人コッペリウス博士が作ったのだ。フランツの恋人スワニルダは嫉妬し、博士の家に忍び込んで、コッペリアが人形と突き止める。帰宅した博士は、スワニルダとは別々に侵入したフランツを薬で眠らせ、フランツの魂をコッペリアに吹き込もうとする。コッペリアにひそかに扮したスワニルダが動き出すと、博士は大喜び。しかし最後には真実が露呈し、博士はコッペリアを抱きしめて悲しむ。スワニルダとフランツは逃げ出し、盛大に結婚式を挙げる。

全幕を見たのは初めてだと思う。第2幕の人形たちの動きが最高に面白い。どう動けば人形のように見えるのか、ダンサーたちの能力の高さに驚かされる。ついまねしたくなる(!)

19世紀の作品なのに、スワニルダは「強い女性」で、フランツやコッペリウス博士を翻弄し、思惑通りに結婚にこぎつける。コッペリアに嫉妬してフランツにすねてみせるところなどは、率直というより術策なのかもしれないが。そういう意味では、また結婚を目的にしている点も、いかにもなロマンチックコメディーではあるわけだが。

主演のスワニルダ役は踊りっぱなし。体力も必要な役。大量に踊っても、最後まで技術にぶれがなく完璧なのがすごい。役柄にぴったりの雰囲気のダンサーだった。フランツ役のダンサーは女性に振り回される役がはまっている・・・。第3幕で披露する技にもため息が出る。

バレエは人間離れしたテクニックが必要な芸術ということを再認識した。ポワントで立ちながらもう片方の足を細かく動かすとか、一見地味でも、かなり難しそうなテクニックがこれでもかというほど詰め込まれている。

コッペリウス博士は、老人ということもあってからかわれ、せっかくコッペリアが命を持ったと思ったのに、実際は違っていて、気の毒に見えた。最後は公爵から金が入った袋をもらい、元気になったという無理やり感のある展開になっているが、ホフマンの原作ではどうなっているのだろう。

・・・今、『砂男』の粗筋をネットで読んだが、こんなに怖い話なのか。ちょっと読んでみたい。

演目情報

【振付】ニネット・ド・ヴァロア

【音楽】レオ・ドリープ

【指揮】バリー・ワーズワース

【キャスト】スワニルダ:マリアネラ・ヌニェス
フランツ:ワディム・ムンタギロフ
コッペリウス博士:ギャリー・エイヴィス
市長:クリストファー・サウンダース
宿屋の主人:エリコ・モンテス
スワニルダの友人:ミカ・ブラッドベリ、イザベラ・ガスパリーニ、ハンナ・グレンネル、ミーガン・グレース・ヒンキス、ロマニー・パイダク、レティシア・ストック
ペザントの女性:マヤラ・マグリ
公爵:ルーカス・ビヨルンボー・ブレンツロド
オーロラ(曙):クレア・カルヴァート
祈り:アネット・ブヴォル

▼ダンスやバレエのレビューはこちらのサイト「ダンス評.com」にもまとめています。


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