素人と一緒に何かしたいというアーティストとの付き合い方

ワークショップなどを行ってそれを作品化するアート(ソーシャリー・エンゲージド・アートなどとも呼ばれたりする)は、アーティストが他者を素材にして利用することになるといった危険性が指摘されることがある。

振付家・ダンサーが、ダンスの訓練を受けていない人々のワークショップを行うことはよくあるが、その目的は一様ではないだろう。ただ、振付家・ダンサーが、「自分の踊りや作品に刺激となるような体験を得たい」と思っていることはままある気がする。

それは悪いことではないのかもしれない。慈善事業もボランティアも、行う人が自分の利益(感謝されるとかやりがいとかいいことをしているという実感とかを含む)のためにしていると言うことはできるだろう。

しかし、「素人とダンスワークショップをする中で美しい瞬間に出会えた」と言うこと自体には問題がなさそうでも、「プロとダンスをする中で得られることはもう十分得てきたので、次は素人と何かしてみたい。そうしたら新しいものが得られると考えている」と明言されると、そういうワークショップに参加することは、そのダンサーのキャリア、ステップアップのための駒になることなのかななどとも考えてしまう。

「コミュニティーダンス」という枠組みで行う方がまだいいのかもしれない。でも、コミュニティーダンス的なものからも長らく遠ざかっているので、今参加すればかつてとは別の考えが湧いてくるかもしれない。

ダンスを見るのでもダンスワークショップなどに参加するのでも、以前ほどはピュアに入っていけなくなっている。以前ほどあっさりと感動はできない。悲しい気もするが、自分の中で体験が蓄積し、考えや感じ方が深まっているのだと捉えたい。

そういうわけで、どことなく観察者の立場でワークショップに参加することになったりしている。

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