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『コタローは1人暮らし』大人っぽくならざるを得なかった幼い男の子を描く漫画

津村マミさんの漫画『コタローは1人暮らし』の第1回と第2巻が、丸ごとウェブで無料配信中。期間限定でAmazon Kindleの電子書籍版を無料ダウンロードもできる。現在、第7巻まで発売中。

無料で読めるのは、ドラマ化され放送中だからだろうか。同名ドラマの主演は関ジャニ∞の横山裕。「アパートの清水」で、コタローの隣の部屋に住む駆け出しの漫画家、狩野進(かりの しん)を演じる。

漫画の最初ではコタロー4歳、狩野31歳となっていたが、ドラマではコタロー5歳、狩野35歳という設定だ。コタロー役は7歳の川原瑛都。演技力が素晴らしく、子役恐るべし・・・。

アパートで幼児が一人暮らしするという突飛な設定だが、実はコタローは親からの児童虐待、ドメスティック・バイオレンスで今の境遇になっている。強くたくましくしっかりと生活しようとするコタローが見せる、大人っぽさと子どもらしさ。それが泣かせる。

虐待に関する具体的な事象が盛り込まれていると思われ、はっとさせられる。

狩野も子どもの頃に突然両親を亡くし、親戚に育てられた過去があり、コタローの気持ちがわかることがある。

ほかの登場人物たちも個性があり魅力的だ。

原作の漫画の第1回で特に良かったエピソードは、「風船」と「お弁当」のお話。特に風船が・・・。思い出して泣けそう・・・。

第2巻では、「ドッジボール」と「おかずの数」のエピソードが特に印象に残る。具体的な事柄・行動と、それに伴う感情・気持ち、そして人物たちの変化が説得力を持って関連付けられ、丹念に描かれている。

「ティッシュ」のことなども、実際にあることなのだろうか。想像したこともなかったので、ショックだった。

明確に教訓的な描き方というわけではないのだが、幼い心身を傷つけてはいけないし、そうしてしまう大人をつくり出してしまわない社会にしなければならないと改めて思わされる。いろいろな大人がコタローを見守って一緒に生活しようとする、そういう社会をつくれたらいいのに。

深刻なテーマをエンターテインメントとして作品化する力量に、スザンヌ・ヴェガの歌「ルカ(Luka)」(1987年)を連想した。


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