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『三体Ⅱ 黒暗森林』(上・下)劉慈欣著/大森望、立原透耶、上原かおり、泊功訳:ぶっ飛びつつ読みやすいSFロマンス大作

現代中国の世界的ヒットSF小説『三体』の続編。完結編の日本語版は来年春の刊行予定らしい。

地球よりはるかに技術が進んでいる「三体」人が、宇宙から人類を滅ぼしにやって来ることが判明した。しかも、彼らは地球上で起こることすべてを把握し、時に思いどおりに介入できる物質「智子」を送ってきていて、地球人のテクノロジーの進歩は妨げられている。

その危機の中、三体人たちに思考を読まれないよう人類までも欺きながら地球救出のための計画を遂行する使命を与えられた4人の「面壁人」が選出される。

その彼らの苦闘が、「冬眠」を経て200年の時を経ながら語られる。

妙にセンチメンタルなロマンスの要素も盛り込まれていて、その部分はたぶんわざと(さらに)「現実離れ」している。おそらくこれでは終わらないだろうなという予感がするので、完結編を読むのが楽しみだ。

元警察官の粗野だが情に厚く有能な史強という中年男性が前作に続いて活躍。登場人物の中で唯一のまともな人間に見えるので、彼が出てくると気持ちが少し落ち着く。

未来世界の描写も面白い。

『三体』にも物理的に結構残酷な場面が描かれていたのが印象に残っているが、本作でも戦闘シーンは過酷だ。よくこんなひどいこと思い付くなあと思う・・・。ハイレベルのテクノロジーの話がたくさん出てくるのに、描かれる場面が肉体的にイメージしやすく、読んでいてダメージを受けてしまいそう。

科学の難しい話が続くところは斜め読みしても大筋はつかめると思う。でも、終盤は丁寧に読まないと結末がややわかりづらいかも。私は理系のことがあまり理解できないので、見落としているポイントもいろいろあるのだろう。

「黒暗森林」は、後半で明かされる、まさに暗~い理論を指すが、巻末の「解説」が、この理論の発想源を前作『三体』に出てくる文化大革命に求め、さらに現代のネット社会でもその理論が成り立ち得ることを示しているのが興味深い。


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