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自己紹介

突然、「リトグラフの魅力について」などと言うマニアックと言うか、美術、版画家、美大系の人しか聞いたことのない事柄について書き始めてしまったので、
僕も自己紹介を一応書かないといけないと思い立ちました。

寺内 太郎  東京生まれ 62歳 男 同居人と猫2匹と暮らしています。
日野市在住 和光大学人文学部芸術学科卒業
大学卒業後、長野にあった森版画工房の幡ヶ谷支所でアシスタントプリンターを経て、渋谷区南平台に出来た、エディション・ワークスにてアシスタント
後に寺内版画工房として独立、約30年仕事をした後廃業。
タクシードライバーをやり、現在は八王子市にある重症障害者施設でマイクロバスの送迎をやっています。

5年ほど前に、以前リトグラフの仕事をしていた時にいろいろお世話になった石橋泰敏さんから連絡をもらい、彼が国立で主催しているリトグラフの研究所「ラール・ヴェリテ」に毎週末通い始めました。

石橋氏から電話でちょっと手伝いに来てくれないか?と言われた時は正直、大変な事になったと思いました。

石橋さんは70歳を越された、知る人ぞ知る日本におけるリトグラフの名匠です。
現存する日本人ではたった一人、タマリンドでマスタープリンターの称号を取った人です。
タマリンドとはアメリカ、ニューメキシコ州にあるリトグラフ専門の研究所です。
世界で8人だけが選ばれて挑戦し、毎日厳しい課題をこなしていかなければなりません。
1年目で5人が落とされ、3人だけがマスタープリンターになる為の修行を続けます。
その後、何人もの日本人がタマリンドに行っていますが、マスタープリンターになった人は誰もいません。

銀座にあった南天子画廊に勤めた後、高月版画工房でリトの刷り師となった氏は
その後リトグラフの勉強のために渡米、2年間タマリンドで修行をされた後、ロスアンジェルスにあるジェミナイ版画工房に就職、プロのプリンターとして様々な現代アートの作家とコラボレーションしてリトの作品を制作。
数年間アメリカで仕事をした後、帰国して工房を立ち上げ、すぐに池田万寿夫の専属プリンターとなりました。

池田氏の突然の死、石橋さんはご自身が独自に研究開発されて来たリトグラフの技術を後世に残していこうと、生徒を募り、国立に「ラール・ヴェリテ リトグラフ研究所」を開設されました。
もう23年続いています。生徒さんと言っても大半はプロのリトグラフの作家、絵本作家、イラストレーターの方達です。

こちらの工房では本物のオリジナル作品しか作りません!

僕が30年間やって来た複製のリトグラフは版画として認めない工房です。

なので技術のレベルが違い過ぎ、僕も最初のうちは
戸惑いました。

こちらで刷り上げられるリトグラフはとても自然で新鮮なのです。

石橋さんの前では、ハッタリもごまかしも効きません。

ローラーの持ち方、スポンジの使い方から勉強し直しです。

今までやっていた自分のリトグラフは、まるで作家が描画した後、冷凍され、
無理やり解凍していた様なものだった。


石橋さんの手にかかると、作家が描画したイメージそのままが、まるで生きているかの様に紙に刷られて行きます。

それもリトグラフの経験が浅い、生徒さんたちがローラーを手に刷っているのです。

なんでこんな事が可能なのか?

そこには深く強い意志がありました。

美しい物とはなにか?本物とはなにか?

それが解らなければ、リトグラフを作る意味がない。

それを目指さなければ、リトグラフを作る価値がない。

リトグラフは水と油の反発作用から成り立っている版画の一技法です。
しかし、そこにはアルミ版という金属と油性質の描画材による化学反応という
厄介な問題があり、そこを克服できなければ、美しい作品は出来ないのです。

これから、このページを使い、僕の国立での修行風景を伝えながら、
リトグラフの魅力と技術的な事柄について考えて行きたいと思います。
皆さんのご意見、ご質問、大歓迎です。
どうぞ。気楽にコメントして下さい。

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