よくブームがやってくる

僕が一番好きな漫画は、きらたかし『赤灯えれじい』だ。ざっくり言うと、冴えない男とヤンキーの女が付き合う話だ。まあこんなことは現実ではありえない。冴えない男とヤンキーの女は巡り合わないのだ。でもまあこの漫画が好きなんだ。

僕は18歳頃まで本が読めなかった。もちろん文字の意味は分かるのだが、文章となると読めなかった。知恵遅れだったのか、読む気が無かっただけなのか、読む集中力が無かったのかは分からない。教科書すら読めた試しが無かった。本だけでなく、漫画も読めなかった。小学生といえば、コロコロコミックを買った経験が誰にでもあると思うが、コロコロコミックの漫画すら読めなかったのだ。NARUTOやらハンターハンターやらデスノートなどのジャンプ作品が流行っていたが、これも全く読めなかった。なぜなのかは分からない。

これはさすがにマズイと思い、18歳頃に本を読む訓練をした。訓練といっても特別なことはしていない。ただひたすら読んだのだ。本を読むときは体をジッとしていないといけないから、それが気質的に合っていなかったのかもしれない。それでもとにかく読み続けた。すると、いつの間にか読めるようになっていた。本が読めるようになったので、自ずと漫画も読めた。手塚治虫やらジャンプ作品やら色々読んだが、じゃあ何が一番好きかと言われると冒頭で挙げた『赤灯えれじい』なのだ。僕はヤンキーの女の子に弱いのかもしれない。

『赤灯えれじい』は織田作之助の『夫婦善哉』に影響されていると作者が言っていた。だからこれも読んだ。ただ、途中で読むのをやめてしまったので内容を覚えていない。

僕はもう読まないだろうなと思った本はすぐ売ってしまう癖がある。ただ、往々にしてまた読みたくなって買い戻すことになる。特に漫画は場所を取るので、すぐ売ってしまう。『赤灯えれじい』も売ってしまって今は手元にない。『夫婦善哉』も売ってしまって手元になかった。

今は鬱や身体症状が辛くてほとんど横になっているのだが、なぜか急に『夫婦善哉』のことを思い出した。なぜ思い出したのかは分からない。そして、ブックオフに買いに行った。ついでに山田詠美の『風味絶佳』も買い戻した。こちらも以前買ったのだが、もう読まないだろうなと思って売ってしまった本だ。『風味絶佳』は『シュガー&スパイス』という映画があり、この映画の原作になっている。確か、ガソリンスタンドで働く男が女に恋する話だったと思う。僕はこういうのに弱いのだ。また、『風味絶佳』は肉体労働者の男が良く出てくる話だったと思う。なぜだか分からないが、また読みたいと思い買い戻した。

『赤灯えれじい』ときて、『夫婦善哉』ときた。織田作之助は無頼派と言われているらしい。同じ無頼派に太宰治や坂口安吾がいる。こうなると無頼派に興味をもって、太宰治や坂口安吾を読みたくなる。太宰治は『人間失格』やら他何かを読んだことがあるが、もう読まないだろうと思って手元にはない。坂口安吾は『堕落論』を知っているくらいだ。とにかく、この無頼派を読まないといけないと思い、興味が出てくる。そして、彼らの本が欲しくなる。ただ、今は鬱で本を読む気がしないので、買うのをやめておいた。

僕は突如として、このようなブームがよくやってくる。鬱であろうとなかろうとこういうブームがやってくる。鬱になってからは、鬱ブームや躁鬱病ブーム、坂口恭平ブーム、ブルーハーツブーム、詩ブーム、ボブディランブームがやってきた。ただこういうブームがやってきたかと思うといきなり冷めてしまうのだ。それでより一層鬱になるのだ。

他の人もこのようにブームがやってくるのだろうか。僕は物凄く熱するのだけど、すぐ冷めてしまうのだ。これは躁鬱病が関係しているのかどうかは分からない。

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