引きこもり

僕は鬱だから引きこもっていた時と、鬱でもないけど引きこもっていた時がある。鬱だから引きこもるのは、まあ分かる。なぜ鬱でもないのに引きこもっていたのかというと、授業中や電車などに乗ると吐き気がするようになったので引きこもっていた。鬱だから引きこもっていた時と、鬱でもないのに引きこもっていた時がどちらが辛かったといえば、断然鬱だから引きこもっていた時のほうが辛かった。辛かったというか、今でもそうだから辛い。

10代半ばで吐き気のために引きこもったのだが、今思えば、大人しく心療内科だか精神科に通っておけばよかったと思う。ただ、自分は「そういうの(精神疾患)ではない」と思っていたので、通う気がなければ、精神科の薬なんて飲んだらおかしくなると、何の根拠もなく思っていたので、尚更病院に行く気にならなかった。症状といっても、人がいる場所や場面での吐き気だけで、家にいる時は普通だったのだ。ご飯が食べられれば、好きなこともでき、寝ることもできた。もちろん内心は学校に通っていないことに対する不安とか罪悪感みたいなものもあるのだが、一応これらのことができていた。ただ、鬱になって引きこもり状態になった時は、気持ち悪くてご飯は食べられないわ、好きな事はできないわ、寝られないわで、ずっと横になっていた。だから、鬱での引きこもりと、鬱ではない引きこもりどちらが辛いかと言われれば、当たり前かもしれないが、鬱での引きこもりの方が辛かった。まあ、比べるものでもないのかもしれない。

ただ、鬱での引きこもりと鬱ではない引きこもりの違いとして、鬱ではない引きこもりの時は、外に出て人と会うのが怖かった。本屋やスーパー、コンビニに行くのすら凄く緊張していた覚えがある。ただ、鬱での引きこもりの場合は別に外に出て人と会うのが怖くないのだ。それよりも鬱が辛くてそれどころではないといった感覚だった。鬱になってから散歩をしたり、外出したり病院に行ったりしているが、別に怖いとかそういうのはない。タバコを買いに毎日コンビニに行っているし、鬱が落ち着いてきたら、外出ができる。ただ、鬱が辛くて長時間外にいるのがしんどい、といった感じなのだ。だから同じ引きこもりのように見えて、全然違った感覚がある。

鬱がゆえに引きこもってしまった場合、やはり鬱が辛いから引きこもっているのに対し、鬱ではないのに引きこもっている場合、家にいる時は鬱でもなんでもないのだが、外に出ることや人と会うこと自体が怖くなってくる。極端に言えば、こういう違いだった。

また、鬱の場合、家にいてももちろん症状が辛い。そして、鬱には「病気」という側面があるので、何とか治したいと思う。治したいために、ひたすら薬を飲んで休養していたし(この休養を引きこもり状態というのか分からないが)、治すための努力をする。僕の場合、薬を飲んで横になっていても治らなかったので、まずは一人でできるリハビリを始めた。すると、意外と色々できることが分かったが、まだ鬱が辛いという感覚があった。何をやっていても、頭の中に鬱が住み続けているような感じなのだ。そして、一人で色々試したのだが、結局良くならなかったので、次は人と関わり活動することにした。だから今は精神科のデイケアに通い、次に作業所に通おうと思っている。できたらアルバイトや就職活動がしたいが、鬱や吐き気が辛くて、それらのことができない。だから調子が悪いときに休める、ハードルの低いことから始めることにした。

それに対し、鬱ではないのに引きこもっていた時は、病識が全くなかった。本人は正常だと思っている。傍から見ると、引きこもりは病的であるのだけど、家にいる時は、ご飯は食べれて、好きなことができて、寝ることもできるので、本人からすると何も問題がないように感じる。僕の場合は、人と会うのが怖くなったり、吐き気で悩んだが、家にいる時はなんともなかったので、それは甘えだとか、忍耐不足だとか思っていた。上にも書いたが、病院に行く気すらなかった。今思えば、本当にこの時点で病院に行っていたほうがよかったのかもしれないが。だから、病識がない引きこもりというのは中々厄介で、治すために動こうとしなくなる。鬱がゆえに引きこもっている時は、鬱を治したいために、色々試行錯誤するのだが、鬱ではないのに引きこもっていると、「病気」ではないと思っているので、これを治そうという気にならない。だから案外長引いてしまうのではないかと思っている。アルバイトや就職活動がすんなりできるくらいなら、そもそも引きこもりになっていないだろう。そして、病識が無いがゆえに、プライドが高いのだ。だから、自分は「病的」ではないと思っているがゆえに、「病的」な人が集まる場所に通いたくないのだ。本来なら、そういうハードルが低い所に行って、引きこもり状態から脱出するために、少しずつ慣れていくしかないのだが、何せプライドが高いので、そういうところには行かない。だから引きこもり状態を何とかしたいなら、アルバイトや就職活動ができるならいいが、それが無理そうなら、ひたすらハードルを下げるしかない。そこで少しずつ慣れていくしかない。

僕は引きこもっては社会復帰を繰り返してきたが、その時は鬱ではなかったので、勢いでなんとかなることが多かった。「なんだ。やってみれば、意外といけるじゃないか」という風に実際にやってみればなんとかなっていた。ただ、今回の鬱は格が違うというか、一筋縄ではいかないという感覚がある。本当にリカバリーが大変なのだ。だから皆さん、鬱には気を付けましょう。

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