父親(閲覧注意です。)

父親というものが、私には
信じられない存在です。
一般的に父親とは
家族を養ったり、力強く家族を守ったり、
頼もしい存在としているものなのでしょうか。

私の父親は、今でいうクズ男という生き物でしょう。
何度も若い女性と結婚したことから、
まあ、女好きであることと、
女性は性の玩具とまでは言わないのかも
しれないけれど、
子供だった私が嫌悪するほどの扱いを
しているところを何度も見ました。
そして、自分の世話をするもの、自分に
従順であるものと思っていたでしょう。

子供に対しても同じように
自分の思う通りになるものと思っていたと思います。
気に入らなければ、殴り蹴り、罵倒し、殺すと脅す。
恐怖で言うことをきかせる支配者でした。
子供だった私はいつも、
張りついた笑顔で、ひたすら支配者の言いなりでした。
気に入らないとひどい暴力を受け、
痛みと恐怖に涙も出ず
動くこともできず、口の中がものすごく渇いて
そんな私を、支配者は「愛している」と言いました。
好きだから、かわいいから、愛おしいから
暴力を振るってしまうのだ、と言いました。

暴力を振るってくる相手に「愛している」と
言われながら抱きしめられる。
そして、私からも「パパ大好き」という言葉を
言うように強要されました。
何という絶望でしょう。
きっといつか、私は父親に殺される。
そう思っていました。

父親は、都合が悪くなると
すぐに私を捨てました。
捨てた先で私がどんな目に合うのか考えもせずに、
そして都合が良くなると
「愛している」という理由で
無理矢理引き取られました。
子供には、自分の希望を言う場面はありませんでした。
大人の都合、それのみですべてのことが決められました。

ある程度大きくなったら、
逃げ出せばいいだろう、そう思うかもしれません。
けれど、小さなころから恐怖支配をされてきた子供は、
誰からも助けられることのなかった子供は、
その日一日生き延びられることだけが重要でした。

父親は、自分の借金のために、
自分の友達に、私の身体を提供すると
話したそうです。
父親の友達だから、小さい頃から
知っているおじさんだから、と
疑わなかった私は、
へんぴなモーテルに連れ込まれて
「お風呂に入っておいで」と言われるまで、
自分に起きていることがわかりませんでした。

私は、父親を憎んでいます。恨んでいます。
呪っています。
すべての災いが父親の上に
降り注げばいいと思っています。
いつか復讐してやりたい、と生き延びてきました。
けれど、時は無情です。
私が力をつけた大人になった頃に、死んでしまいました。
ある日、突然手紙が来て
死んだので負の遺産を継ぐのか継がないのか、
ということでした。
父親は、まったく知らない土地で
知らない女の人と暮らしていて、
そして、死にました。

復讐はできませんでした。
苦しみ悶えながら死んでいってほしかったのに、
どんな死に方かは聞いていないけれど
私が望んだ死に方ではなかったのではないかと思います。

私の憎しみも、恨みも、呪うような気持ちも
宙に浮いたままです。
たったひとつ、父親が行方不明になる前に脅されたとき、
「あなたのことは、父親と思わない」と
はっきり電話口で言えたこと、これが
最初で最後の父親に対する拒絶でした。


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