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子どもたちの「やりたい!」を止めないで応援する学びの環境 LITALICO研究所OPEN LAB#3 スカラーシップ生レポート

社会的マイノリティに関する「知」の共有と深化を目的とした、未来構想プログラム「LITALICO研究所OPEN LAB」

9月17日に第3回講義 「異才」はどこで花開く - 子どもたちの見ている風景 を開催しました。

当日の様子をまとめたダイジェスト動画はこちらからどうぞ。

以下では、同講義の「スカラーシップ生」によるレポートを掲載します。

OPEN LABスカラーシップ生とは
・障害や病気、経済的な困難さがあり、参加費のお支払いが難しい方
・本講義に対する学びの意欲が高く、明確な目的を持って参加できる方
を対象にした、公募・選抜制での参加枠による受講生です。スカラーシップ生は、同講義に無料で参加(遠方の場合は交通費を一定額まで支援)、講義終了後に「受講レポート」を執筆します。

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講義を受けるにあたって

公立小学校で二年間勤務し、「一つの正解」を求められる学校の現状に体も心も疲弊してしまい、今年度は休職をしている。子どもの不登校、自殺、教員の病気休職の数が増えて社会問題になっていることからもわかるように、公教育の現場を早急に改善していかなければならない。もっと自由に、子どもも教員も自分らしく多様性が認められ、伸ばしていける環境が必要だと考えている。

その環境づくりのヒントとなる取り組み、生き様を、今回「異才」というキーワードで登壇される方々のお話から得たいと思い、スカラーシップでの受講を志望した。


講義からわかったこと

1. 東大先端研「異才発掘プロジェクトROCKET」プロジェクトリーダー、福本理恵さん

「異才発掘プロジェクトROCKET」では、学校では怒られることもある、好きだからやめられない子どもたちが、好きなだけ好きなことを追求して学んでいる。例えば、トリュフの研究、「既に道」というホームページ作成、紙で工作、ロボット、鯉のぼりの自主製作をしている子どもがいる。

子ども同士で共同することは必ずしも求められない。必要なのはオタクの仲間だという。違う分野の興味がある子どもたちが集まると化学変化が起きることもある。また、芸術、生命科学、社会科学、数学物理などのトップランナートークで子どもたちの関心を刺戟する。知識は調べれば出てくる時代に、AIに取り変わられない、リアルの中で学び新しい枠組みを作れる力を伸ばしていく。

教科書なし、時間制限なし、目的なしの授業時間で、「食物連鎖は本当か?」というテーマでフィールドワークをしたり、「イカを解剖して墨袋を取り出してパエリアを作りなさい」というミッションに挑んだり。子どもたちは、自分で試しながら方法を選んでいく。失敗してもそれは失敗ではない。知識は体系だっていなくていい、自分の経験が知恵となるのである。「炭づくりプロジェクト」では、プロジェクトの中で、どこに杭を打てば強くなるか、試す中で学んでいく。それまで学校になじめず、ずっと家にいた子が外に出かけて、人々と一緒に試しながら学んでいく。

2. 株式会社クリスタルロード、加藤路瑛さん
①12歳での起業ストーリー

「働きたい!」と子どものときから思っていた。『ケミストリークエスト』という、小学生で起業したという人の本をきっかけに、「親子起業」という形なら可能なことを知り、働くのは大人になってからでなくてもいいとわかった。

学校には違和感を感じていた。子どもが起業する実例を作りたいと企業を決意する。担任の先生に言われて「事業計画書」を書き、校長先生には自分の言葉で思いをプレゼン。

社会貢献を条件に起業が許された。資金調達は、クラウドファンディングで集めた。子どもが年齢やお金を理由にやりたいことをあきらめなくていい社会にしていきたい、と子ども起業支援・やりたいこと支援をミッションとした会社を運営している。

②僕の見てきた風景

早生まれだったこともあり、体は小さく、周りの子よりできることが少なかった。食べること、読み書きが苦手で、音や臭いに敏感だった。親からは「やらされていた」時期もあったが、いつしか無理なものは無理とあきらめた。親もあきらめてくれて、気持ちが楽になった。

学校や仕事では避けられないこともあり、苦痛が多かった。小さい頃から、母の会社に遊びに行ったり、キッザニアにはまったり、祖父母の民宿でお手伝いをしたり、会社見学・工場見学をよくしたり、ものづくりたくさんしたり、科学技術館でレーザーカッターやプログラミングをしたり、「働く」ということには強い関心を抱いていた。今も家庭では料理、洗濯、風呂掃除、ゴミ捨ては自分の担当。スポーツはやりたいと言ったものは全てやらせてもらえる環境だった。

やりたいと思ったことをやらせてくれた両親と、小学6年生のときの担任の先生には感謝している。給食を無理に食べさせず、お弁当をもっていくことを許してくれたこと、得意だった走ることを勧めてくれてそれで自信がつき勉強も楽しくなったことは今でも覚えている。

現在は、講演会、カメラ、モデル、本の出版など、苦手なこともチャレンジしている。いつか、子ども版ビッグイシューを作りたい。これからもやりたいことがいっぱいある。

3. 公立小学校主任教諭 特別支援学級、森村美和子さん

「じぶん研究」では、子どもたち自身が、同じ悩みや課題をもつ仲間と困っていることなどを研究し、対処方法を考えたり実験したり発表したりする。自分の悩みや課題を、キャラクターにする。特徴、いつ、どんな時に、何をする、どんなことをする、その他の項目について設定する。

<キャラクターの例>
・ペラペラノドン
仲間と一緒に対処方法を開発
クールダウンオフダ、ストップオフダ
・ふたばヒーロー
話を聞いて洗濯して天日干ししてくれる
・ 泣き虫ゴースト
ふあんタイプ
対処方法 おまもり
・ しつこいざる
しつこいタイプ 
対処法は深呼吸する、しなかったらポイントあげる
・ だらだらきん
めんどくさいタイプ 
・不登校の気持ち
大泣き草をチョキンと切って、水に入れて育てていく
みんなにたよっていいもん
・ 水たまりにうつる子ども

キャラクターにすることで、「不安なこと苦手なことも話していいんだ!」と自分の悩みや課題を話しやすくなる。「またでた!100匹くらい!」と量的な表現ができるようになったり、「対処方法があるかもしれない」と、積極的に改善を図っていくことができる。

例えば、上記の「しつこいざる」は、自分ではしつこいとは思ってなかったけど、自分に友達ができないのはなぜか友達に聞いたところ、しつこいと言われてキャラクターにした。すると、友達にも受けて、周りの見方も変わり、研究に協力してくれる仲間と、自分研究をすることになった。このように、自分だけでなく、周りとのコミュニケーションのきっかけともなる。研究はその後もずっと続いていく。

4. パネルディスカッション
・「才能」ってなんだろう
 - 偏って強いもの
 - 苦手なものと紙一重
 - 環境によって気付けるか、発揮できるか
・大人たちにできること
 - 共同研究者
 - 多様性を認めて伸ばしてあげる
・会社を起こすにはどうしたらいいか、
 - 法律のことも勉強する
 - 大人とつなげてあげる、そこでも子どもが選ぶ

考察

まず何よりも、子どもがやりたいことを止めなくていい、好きなだけやりたいことをやれる環境を作る必要性を強く感じた。それを学校という場に落とし込むとすると、一年生だからこの勉強、二年生だからこの勉強をしなければいけない、というのではなく、生活や遊び、総合的な学習の時間の中で学びたいと思ったことを、学びたいときに学びたいだけ学べる、時間割や教科の枠組みを超えた仕組みが必要である。

学校の中で、子どもが「やりたい!」と思うことを好きなだけ試行錯誤できるように。その学びは社会のリアルとシームレスに。起業したい子どもがいたらその「やりたい!」を止めない。学校を飛び出してやりたいことがある子どもはROCKETなどのオルタナティブ教育を自由に選択できるようにしていきたい。そうすることで、子どもは何のために学ぶのか自分の言葉で言えるようになり、学ぶことが楽しく、その結果人の役に立ったり認められたりすることで、自分を大切にする心や、人を大切にする心、社会を大切にする心が育つと考えられる。

加藤さんのような「やりたい!」がある子どもの芽を伸ばしていける学校づくり、学校を飛び出して学ぶROCKETなどのオルタナティブな選択肢を認める社会、森村さんのような自分と向き合える学びのしかけ作りを、これからも私なりに探究していきたい。

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LITALICO研究所OPEN LAB#3 スカラーシップ生
ena

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プロフィール:
大学卒業後、一般企業に勤めたのちに、ずっと夢だった公立小学校教員に転職しました。子どもたちと一緒に学べる仕事は天職と言える程楽しく、やり甲斐のある毎日でした。しかし、教員の業務量は膨大で、休憩なく14時間働く日が続きました。加えて、職員室の文化に馴染めず、孤立状態が続き、体も心も疲れてしまいました。ついには、学校に行こうとすると体が固まったり、過眠・過食の症状が出てしまい、現在は休職をしております。休養をとりながら、公立学校をもっと働きやすい環境にする方法を考えています。

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LITALICO研究所OPEN LAB

直近の講義はこちら。

1/28(火) 第7回「コミュニティは誰を救うのか – 関係の網の目から希望を紡ぐ」
ゲストは、小澤いぶきさん(認定NPO法人PIECES代表)、北川雄史さん
(社会福祉法人いぶき福祉会専務理事)、森川すいめいさん(精神科医)です。

お申込み受付中です!チケット販売サイトPeatixよりチケットをお求めください。


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