Hip Hopの4大要素プラス5~ストリートの起業家精神編~
冒頭の写真は、バーバル(VERBAL)である(もはや説明不要だが)。
「音楽家」として認知されているバーバルには、もう一つの顔がある。それは、「社長」という肩書である。
今回は、Hip Hopを構成する要素「ストリートの起業家精神(Street Entrepreneurialism)」について、VERBALを事例に紹介したい。
起業家としてのVERBAL
「m-floのラッパー」と認知されているバーバルだが、彼の音楽活動は多岐にわたる。ラップ・アーティストとしては、m-flo以外にテリヤキボーイズ(TERIYAKI BOYZ)、マイク・バンディッツ(MIC BANDITZ)などのラップ・グループの一員、エル・ユニバース(L Universe)といった別名義でのラップ活動などが一例として挙げられる。
また、プロデューサーとしても幅広く活躍しており、安室奈美恵を「SUITE CHIC」名義でプロデュースし、ポップシンガーとして不動の地位を築いていた安室のHip Hop / R&Bシンガーへの転向を成功させた立役者でもある。
「音楽家」として大成したVERBALだが、「経営者」としてもその敏腕をふるっている。音楽家として活躍する一方で、アパレルブランド(AMBUSH)、3Dプロジェクション・マッピングなどのイベント業、アーティストのマネジメント業などを主事業とする会社の社長でもあるのだ。
ストリートの起業家精神とは
「アントレプレナー」の語源はフランス語であり、元々は「間を取り持つ者」という意味であるが、今日では「起業家」と広く認知されるようになっている。
「起業家精神」という言葉は会社を経営する「社長」を連想しやすいが、Hip Hop界の生ける伝説KRS ONEは、この精神を個人レベルで捉え、「自身を創り上げる精神」と定義づけている。
この、「自身を創り上げる精神」に通底する同様の哲学を、VERBALは自身の著書『フィーチャリング力』でこのように語っている。
「フィーチャリングの究極の目的を一言で言うと、『自分自身をブランドにする』ということ」
ラップなどのHip Hop音楽を語るうえで、「フィーチャリング(Featuring)」という概念は、必要不可欠である。お気に入りのラップ・アーティストに、新進気鋭の若手や、その業界で伝説とされるようなアーティストがフィーチャーされ、お気に入りのアーティストの曲が、何倍にもかっこよくなるといった事例は、もはやラップのあるあるとも言えよう。
そもそも、「フィーチャー(Feature)」とは、特集する、(ゲストを作品に)迎え入れるといった意味を持ち、「A Feat. B」ということは、「Bさんをメインゲストに迎えた、Aさんの楽曲」ということになる。ラップやR & BなどのHip Hop音楽分野で生み出されたこの手法は、音楽シーン全体に広がり、音楽チャートで頻繁に目にするようになった。
フィーチャリングという自己創造
同著で、VERBALは「フィーチャリング」の本質を、「相手の特性・能力を引き出し、成果物の価値を最大化する方法」と述べ、フィーチャリング・スキルを「最終的には自分自身に向けて活用する」ことが鍵だと述べている。
そうすることで、自分が持っている特性を最大限に引き出すことができ、周りの目から見ても、自分自身のオリジナリティ(得意分野やキャラクターなど)が際立って映るというのだ。
この考えに至った背景として、m-floの元メンバー、Lisaの脱退が大きなターニングポイントとVERBALは語る。(Lisaは現在はm-floに再加入している)
<Come Again / m-flo>
m-floの代表曲『Come Again』のヒットにより、Lisaがリードシンガーの3人組グループと認知されたm-floだけに、Lisaの脱退は同グループに大きな痛手となった。よって、Lisa脱退後のm-floの価値を再構築しなければならなかったのである。
そのセルフブランディングの出発点が、彼らの「lovesプロジェクト」である。同プロジェクトは、様々なシンガーをフィーチャリングし、Lisaというボーカルの穴をカバーしながら、新生m-floを創り上げていったプロジェクトである。
<the Love Bug / m-flo loves BoA>
このプロジェクトが功を奏し、現在のm-floを築き上げ、VERBALはプロデューサーという側面で大成し、様々な人材を自身に「フィーチャリング」させながら、事業展開を成功させてきた。
まとめ
以上のように、アントレプレナーとは、単に「起業家精神」という意味だけではなく、「自己創造」という意味合いを併せ持ち、その側面をVERBALの「フィーチャリング力」に焦点を当てながら、ストリート(Hip Hop)の起業家精神について述べてきた。
この記事を執筆しながらふと自分自身を振り返り、改めて感じたことがある。それは、筆者は学生を自身にフィーチャリングさせることで、自身が企画した事業等に取り組んできたという点である。
普段何気なく、「この企画はあの学生に協力してもらおう」などと無意識に仕事をこなしていたが、この行為はまさしく「学生の特性・能力を引き出し、共に取り組む成果物の価値を最大化」していた、「筆者 Feat. 学生」という自己創造行為なのだ。
あなたは、誰(何)をフィーチャリングして人生を最大化しているだろうか?
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