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形あるものは壊れる

職場の都内のホテルで、お皿を割ってしまった時のこと。

その日私は、朝8時から22時までの13時間勤務。

通勤時間が長いので、1日の働く時間を長くして、その代わりお休みの日はしっかり休んでいます。

21時頃。

1,500名超えの宴会の後片付けをしていた時。

疲労はピークでした。

大量にお皿を積んだ皿台車。

なだらかなスロープを降りる時に、台車の車がスロープのヘリに引っかかり、ガッシャーン。

台車のカゴからはみ出ていた、上積みのお皿が通路に散らばります。

5枚くらいのお皿を割ってしまいました。

謝る私。

片付けを手伝ってくれる仲間。

あまりお話はしたことはないものの、お顔は知っていたベテランの男性の方。

ぼそっと一言。

形あるものは壊れる

ミスをして、落ち込んでいた心に救いの一言。

さりげない優しさ。

こういう仕事をしていると時々、

さりげなく、凄い言葉を吐く人と出逢ったりします。

前にお会いした方で、凄いな、と思った言葉は、

自分と神様だけは、本当のことを知っている

ある現場の洗い場の女性。

全然動かない(楽しようとする)人について、話していた時のこと。

私は、好きな本、大切な本にはマーカーを引いて、何回も、何年も、確認するように読み続けるのですが、

中沢新一先生のご本に、このようなことが書いてあります。

人間が「力の源泉」を自分の能力の外に求めていた頃には、「世界の王」はまさしく世界の中心に、はっきりと認められていたのである。ところが、この世の王、世俗の王なるものが出現し、そこから国家という怪物が立ち上がって以来、真実の力(主権)の秘密を握る「世界の王」は、私たちのとらえる現実の表面から退いて、見えなくなってしまった。そうなってしまうと、「世界の王」はむしろこの世で虐げられた人々、賤しめられた人々、無視された人々のもとに、心安らかに滞在するようになり、現実の世界の中心部には、「主権」を握っていると称する偽の王たちが君臨するようになってしまったのだった。

中沢新一『精霊の王』2018年 講談社 p.303


まぁ、ここでいきなり、中沢先生のご本の一部を引用させていただくのも、ここに書かれている内容の前提となるものなしには、

意味がより正確には伝わりにくいとは思いますが、

エッセンスとしては、その通りかなと思います。

昨今のご時世において、固定概念が打ち砕かれるその様をこの目で見ている私たちには、

もしかしたら、本当のことに気づくための"チャンス"が与えられているのかもしれませんね。

中沢先生は、このようにも仰っています。

 人は生まれたまま、そのまま素直に成長をしても、世界の表面から隠されている真実を見ることはできない。その心が常識でがんじがらめにされているからだ。イニシエーションは、常識によってつくられた心の状態を作りかえて、いままで見えなかった真実を見えるようにしようという、慈悲深い儀式なのである。そのとき、イニシエーションを受ける者の前に、暗闇のなかからさまざまな姿をした「人食いの王」が出現する。
 この「人食いの王」は、イニシエーションを受ける者の古い自我を食い尽くして、破壊する。北方の狩猟文化では、しばしばこの役目を神としての熊がつとめた。熊こそが、死の領域の支配者であるからだ。熊は古い自我を抱えた人間をずたずたにひき裂いて、そこから真実を見る目を備えた新しい主体を生み出すのである。

同上  p.298

自分の力ではどうしてよいのかわからないほどの理不尽に出会った時。

私たちは、自らの内面深くに降りたって、この世の中を観るようになるのではないかと思います。

中沢先生の本は本当に興味深くて、いつもカバンにしのばせて持ち歩いたりもしているので、私の本はボロボロです。

文字としての情報で、ここまで私の意識の深いところがひらかれるような本は、先生のご著書をおいて私は他にあまり知りません。

(ハマったら、他のものにはほとんど興味を持つことができなくなるという私の傾向により、その対象をほとんど広げようとしないことと、私の怠惰にもよるのだとは思います)

中沢先生に出会ったのは、本当に偶然。

有名な先生ということも存じあげず、私の選んだ修士論文のテーマにより、偶々査読をしていただきました。

もちろん先生は有名な方で、多くのお弟子さんとファンがおられます。

でも、私はこんな風に勝手に思っていたりもします。

中沢先生に、修士論文の口頭試問をしていただいた時。

「将来、何になりたいの?」

「研究者です」

「いい研究者になるよ」

私は中沢先生から、イニシエーションを受けたのではないか、と笑(チャンチャン☺️)

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