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なぜ Kaze Fujiiではなく Fujii Kaze なのか

バリバリ昭和育ちな私としては、名前をローマ字で書くときは【名→姓】で書けと教わってきた。でも平成になって、【姓→名】が学校教育でも取り入れられているらしく、現在の学校の現場ではその辺り臨機応変らしい。学校でどちらもありと教わってきた今時の人にしてみたら全く違和感ないことなんだろうけど、昭和な私はすごく気になった。ミュージシャン藤井風くんは、なぜKaze Fujiiと表記せずにFujii Kazeにしているのだろうかと。ファーストアルバム『HELP EVER HURT NEVER』のCDに封入されている関係者のクレジットでは、風くん以外の全ての人のローマ字表記は【名→姓】で書いてあるのに、風くんだけは Fujii Kaze で通している。

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(私が藤井風くんの音楽に心酔するようになった経緯については、こちらを見ていただけたら嬉しいです)

そんなことを悶々と考えていて、ふと思い立った。

この表記の仕方、実はものすごく練られたものなんじゃないだろうか。

彼の卓越した才能を世に広めていく最初のプラットフォームとして、10年前に風くんは世界とつながっているYouTubeを選んだ(お父さんの先見の明は本当に素晴らしい)。当初は全く別のハンドルネームをアカウント名にしていたと何かで読んだ。アカウント名を今の本名にするようになったのはそんな前ではないらしいけれど、観る人を魅了する洋楽のカバーもたくさんあげてくれていることを考えても、オーディエンスは日本人以外も意識しているはず。そこで Kaze Fujii と表記していたらどうなるか。海外の人からすると、Kaze は [keiz] (ケイズ) と読んじゃう。一方、Fujii は [fdʒi] (フジィ) って読まれて、ほぼそのままの発音になる。でもって、海外の人はFirst name (前に書かれている方)の表記を覚えようとするから、結果、Fujii が前にあった方が正しく読んでもらえるし正しく覚えてもらいやすい。

それに、藤井風 って日本人が初めて目にすると フジイフウ (藤井"的"のような意味)と読んでしまいがち。でも 風 は Given nameであって [カゼ] なんだよ というのを 藤井風 Fujii Kaze と表記することでそっと知らせてくれているのだ。

海外の人も意識しているはず!と勝手ながら解釈してしまう理由には、風くんの英語力も影響している。『HELP EVER HURT NEVER』の歌詞カードには風くんによる全歌詞の英語訳がついている。これがとてもいい。日本で育ってきた彼がここまでの表現力を英語で身につけているって相当すごいと思う。なかでも特に感動してしまったのが、アルバム最後を締めくくる名曲『帰ろう』からの一節。

"あなたは弱音を吐いて 私は未練こぼして" 

これを

"You are worried about the future.  I am still attached to the past." (あなたは未来に不安を感じている 私は過去にまだ囚われている)

と訳している。

これは、元々の日本語の歌詞の意味合いを、

弱音を吐くのは、 先の見えないことに不安を感じるから

未練を口にするのは、 前にあったことにこだわっているから

と変換して英語にしているのだ。しかも、未来と過去という対比をうまく使って。これって、すごくないですか?しかもこの曲の雰囲気にめちゃくちゃマッチしている。これを読んだ時、私は感動のあまりうわぁ。。。と声が出てしまった。もともとこの曲が持つ普遍的な奥行きを英語訳でも表現している風くんは、本当にタダモノではないと思う。


そんな藤井風くんは、YouTubeが話題の新しいアーティストを紹介するべくグローバルで展開しているキャンペーン「Artist on the Rise」に、今年5月、日本人で初めて選出されたそうだ。このキャンペーンの一貫として制作されたドキュメンタリーが、8月7日(金) 8:00pmからYouTubeでプレミア公開されるとのこと。

これ絶対、YouTubeさんは英語字幕もつけてくれるんじゃないかな。藤井くんのミュージシャンとしての才能や人間としての魅力は、日本に留まらず海外にもぜひ広まって欲しいから、このドキュメンタリーを通じて、また一つ彼の魅力が世界に発信されるといいな と心待ちにしている。









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