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大腸癌と診断されるまで③ 総合病院へ受診、速攻で検査入院になりました

8月の終わり、自宅から近くの病院で紹介された総合病院に父を連れて受診しました。私の勤めている総合病院です。

紹介受診した総合病院は、地域ではそれなりに大きな病院で、病院のある市だけにとどまらず近隣の市からも患者さんが来院する病院です。

大きな病院ですから待ち時間が長く、施設も広く、疲弊しきって痛みを訴える父を連れていくのは不安しかありませんでした。

車椅子に乗るように促しても、体裁を気にする父は格好が悪いと乗ろうとしません。

…が、歩くことはなんとかできても、その頃は腹痛だけではなくお尻の穴が痛いと言うようになってきてました。そのため座っているのがとてもつらいようなので、車いすも辛いと思ったのかもしれません…。待ち時間椅子で座っている間も「いてて…」と何度も体勢を変えて過ごしていました。

加えて相変わらずトイレにひっきりなしにいくものですから、いつ呼ばれるのかわからないし、タイミングを見てトイレに連れて行くのも冷や冷やしていました。

受付で呼ばれ身長や体重を測ったあとは、診察室の前で待っていました。
待っている間、どの先生に診ていただけるのかひたすらに緊張…。

自分の働いている病院、以前消化器内科病棟で働いたこともありますから、医師のこともなんとなく知っています。

どうか偏屈な父と上手くやっていける先生でありますように…。医者より自分のほうが優れていると思っている人です。
先生の出方次第では、へそを曲げて大切な治療を急にやめるとか言い出したりしかねない…。

ここまで連れてくるのもやっとだったのに、それは困る!

診察室に呼ばれた時、ものすごくほっとしました。
私が消化器内科で一番信頼している先生が座っているじゃありませんか!

担当してくださった先生は私を見るなり、おっと、といった表情で「娘さんなの」と言って、素早く紹介状を確認し、診察してくださいました。
診察台で父の肛門からエイっと触診。先生はうーんと微妙な表情。
父はあうって声出して苦笑い。
まあこの時は父も私も笑っていられました。

父は人見知りで知ったかぶりなこともあり、家での状況は私がほとんど説明しました。

「レントゲンだけじゃわからないからCTをとりましょう、腎機能って悪いって言われたことある?」

「最近おしっこが出にくかったり足がむくんでいることもあるので…。病院には仕事を辞めてから健診もしておらず、正直わかりません」

そう、父は定年を迎えてから一度も健診を受けていませんでした。ほかにも病気があるかも全然わからない状況。

「じゃあ、ちょっと怖いから単純のCTにしておくね」

腎臓の機能が悪い場合、造影剤を使用するのは腎機能をさらに悪くするためためらわれます。そのため造影剤を使わないCTにしてくださいました、本当は造影剤があった方がよく見えるんですけどね。

診察室を出てCT撮影へ。自分の病院だと場所もすぐわかって便利だな…なんてぼーっと思いながら父を案内しました。

CT撮影に採血、レントゲン撮影が追加。とにかく大きい病院は待ち時間が長いというのを体験。
1つ1つの検査、とにかく待ちました。
身体が辛い時に、待つのって本当に辛い。
父は痛みもありますしトイレも行きたくなりますから待ち時間はひたすらに苦痛。1時間くらいかけて診察室へ、また呼ばれるのを待つ。
元気な私ですら疲れてきます。

再度診察室へ。すでに朝来てから、お昼になるころでした。

採血を見て特に問題はなさそうなこと。

レントゲン結果は近所の病院での説明と同じで、便とガスがたくさんたまっていそうなこと。

最期にCT結果を写真を見ながら説明していただきました。
CT結果にはレポートというものがあって、結果を文章でまとめてあるものがあります。カルテ画面に映っていたのでなんとなく見ていると…

【大腸に10㎝の腫瘍、肺、肝臓、骨、腹膜にも腫瘤があります…】

もっと長かったけど読み切れなかったけど、

え?そんなに?まさか転移…?

頭の中は真っ白。

先生から
「肛門から少し入ったところに10㎝くらいのできものがあって、それが腸を狭くして便の通り道を狭くしているみたいです。だから便が出にくくって、出せても少しずつ細い所を通って出てくるんですね。食べても詰まってしまうからすぐにお腹もいっぱいになるし、押されてトイレに行きたい感じがずっとしているんでしょう。さっきお尻を触れた時に血が付いたから痔かなと思ったけど、その先にちょっと触れるものがありました、きっとそこから血も出ているんでしょう」

ここまでは予想通り、先生は画像を出しながらお話を続けます。

「CTを撮ってみたところ気になるのは肺に少し影があって、あと肝臓にも小さなできものもありそう、腹膜と言ってそこにも数か所、影が見えます。骨も…この辺かな、少し色の違うところがあるでしょう、この辺もなんなのか調べていく必要がありますね。」

癌とははっきりとは言わないけれど、先生のお話に頷くばかり。

「今後検査をして何かわかってから必要なら治療を始めていこうかと思いますが…ずいぶん辛そうだし、入院しますか?」

父は診察が終われば帰れるものと思っていたようなので「え?」という顔。

私としては状況によっては入院もと思っていたので、疲弊しきり痛みを訴える父にぜひしっかりと治療を受けてもらいたいと思い父に入院を勧めます。

先生から優しく、穏やかにそして今後検査をしていくことなど説明されしぶしぶ納得、入院となりました。

診察室の前へ出て、ベンチに父と座りながら入院の手続きをしてもらうのを待ちました。

涙をこらえるのに必死でした。

単に腸に癌があって手術すれば、人工肛門を造るのなら家族でがんばろう、それすら頑張れればまたおいしくみんなでご飯が食べれる。
穏やかな時間に戻れる。
じぃじ(父)の田舎の石川にも帰れる…。

そう思っていたのに。
まさか、まさかあんなに体中に転移しているかもしれないなんて…。

長くないかもしれない。

ふと、心の中でよぎってしまいました、そう思うと涙がにじんできます。

時々知り合いのスタッフが父と私の前を通ります。
私に気づいて「どうしたの?」なんて声もかけられます。
「父の受診についてきたんです~」って笑顔を作るのに精いっぱい。

入院前に点滴をしてもらうために処置室へ。
入院する部屋が空くのにしばらく時間がかかりそうということで父は処置室のベッドに横になって待たせていただきました。
点滴をしてくださったのは依然一緒に働いていて、とてもよくしてくださった上司でした。

「あら、看護師さんのお父さんって聞いてたけど、あなただったの。名字が違うから、気づかなかった!そっか~お父さんだったんだね。」

ニコニコしてほっとする方でした、涙腺が危なくなりました。

父は「どうして入院するんだ?」と聞いてきますが、家であんなに辛かったし点滴もしてもらえるよ、痛いのもみてもらえるよ。しっかり見てもらわないといけないよと伝え、理解したようなしないような…。
とにかく病院が苦手な人、初めての入院、内弁慶の人だから家にいたくて仕方がないのでしょう。

私はいったん準備のために家に戻りました。両親とは同居していたので、母に状況を伝えました。母も想像以上の結果になりそうで非常に驚いていました。ただ母は強い人で取り乱すこともなく、いろいろ考えないといけないね…とつぶやいていました。

そう、これからどうなっていくのかわからない、私は一人っ子だし、母は足が悪い、私には幼い娘もいる。

しっかりしなきゃ…しっかりしなきゃ…

とばかり呟いていたような気がします。

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