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46文字からはじまる「基本」のおさらい。リズムにのれよ、書きながら。


4ヶ月ほど前から、書道を習い始めた。

家から歩いて5分ちょっとの書道教室、わたしが通うのは平日13時の大人のクラス。決まった曜日のお昼を過ぎると、黒い服に着替えて(墨汁がとんでも大丈夫なようにね)、ちょっとそこまで仕様のメイクをし(さすがにまゆげは描かなきゃね)、サンダルをつっかけて家を出て(リカバリーサンダルがお気に入り)、片手に書道具、遊歩道をてくてくとゆく。

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通い始める前、体験教室に足を運んだ。初めてお会いした書道の先生は、キャキャキャッと笑うとっても美人な女性だった。書いている間も同じテンションでちょくちょく話しかけてくるので「あれ? 書道ってめっちゃ集中して静かにやるもんじゃないんだっけ?」とずいぶんと拍子抜けした。道具は、昔、学校で使っていたものでもかまわないというので、それならばと実家に連絡をしてみると、すぐに家の中を探索して送ってくれた。兄のお古。わたしが使っていた道具は、知り合いに譲ってしまったらしい。母はなぜか書道をはじめたいという話をとても喜んでくれた。

書道は学校の授業で習ったきりだった。書道が特別好きだったかというと、そういうわけでもない。むしろ、上手に書けた記憶がなくて苦手だったような気さえする。そんなわたしがなぜに今さら。それは、長崎で出会った書家さんの話がきっかけだった。

「自由に書くのって楽しいですよね。でも、基本を知っていれば、もっと自由になれるんですよね!」

そんな話をしながら、いろいろな“空”という書を書いてくださった。それは字なのに、まるで絵みたいで、わたしにも「まあ、とりあえず書いてみてくださいよ」とニヤニヤしながら筆を持たせてくれた。それがものすごーーーーーく楽しくて、わたしは“もっと自由”が知りたくなってしまったのだ。

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わたしの通う教室では、半紙に墨汁で書く”THE書道“のほか、お手本になる漢字やひらがなをボールペンで書くペン字、硯(すずり)で墨をすりながら書くかな文字も習う。無心で字を書きまくる1時間30分は、今のわたしのとって本当に心地よい時間。何よりも墨の香りが最高だ。

「漢字のほうが好きでしょ?」。THE書道中に先生に話しかけられた。漢字が好きかどうかはわからないけれど、確かにひらがなのほうがなぜだか難しい。漢字よりもたくさん書いてきているはずなのに。たったの46文字なのに。お手本の文字とわたしが書く文字はまるで違っていて、正直、愕然とした。物心がついてから伝わらなくて困ったことはないから、これを「クセ」というのだなぁと気がついた。

字はリズムで書く。書道を習い始めて、最も目からウロコだった考え方だ。やさしく書きはじめる。一度、止まる。最後は伸びやかにはらう。ひらがなひとつとっても、いくつもの抑揚がギュッと詰まっていたことは、これまで思いもよらなかった見え方だった。そしてなによりも、大切なのは勢いだと知った。形だけを真似ようと思って、ゆっくり慎重に書いていては、結局、字がフラフラしてしまう。

先生曰く、天気がいい日よりも雨の日がよく書けたりするし、体調がわるいときの書が美しかったりするそうだ。つまり、うまくいくかどうかは、書いてみないとわからない。だから、自分の調子を図るためにもまずは書く。「上手にやろう」と思わずに、のびのびと。これだ、と思った。

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「ひ」は、今のところ、わたしが書けないNo.1のひらがな。何度書いても、うまくいかないもんだから、練習ノートはちょっと気色がわるい感じになっている。ひひひひひ。

リズムと勢い。きっと、これは書道に限った話ではない。「クセ」だって直したいし、基本を知った上でとびきりの自由を得てみたい。46文字からはじまって、なんだか人生の「基本」をおさらいしている気分にすらなる(大げさかもしれないけれど)。とりあえず、「ひ」を書く練習をたくさんしようと思う。リズムにのって、やってみる。

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