偏頭痛サイキック

偏頭痛サイキック

「AAAAAARGH!」
 午前8時。強烈な不快感とともに俺は跳ね起きた。偏頭痛だ。
 ブッ刺すような太陽光がクソほど憎たらしかったのでまずカーテンを閉めた。ヒーリング音楽すらも癒やしにならないことに気づき、アレクサに言って止めさせた。
 その勢いで冷蔵庫の栄養ゼリーを取り出し、のたくるような吐き気をこらえつつ鎮痛剤を二錠飲み下した。
「AAAAAARGH!」
 台風よりも騒々しいヘヴィメタルが耳を貫く。着信音だった。なるべく画面を見ないように操作し、スマートフォンを耳に当てた。
「もしもし、サワモトですが」
「黄唐草探偵事務所のカミハラです。依頼人との面会まで後20分だけど……大丈夫? 声聞いた感じどう見てもいつものアレでしょ」
「大丈夫です。すぐ……うっぷ……向かいます」
「来るのね。意欲旺盛なのはええけど、無茶しちゃあかんよ。トイレの蓋は開けとくわ」
「ありがとうございます。では15分後に」
 そう言って電話を切り、少しだけ落ち着いて朝の支度を始めた。

 洗顔、歯磨き、着替え。刺激の少ない部屋で吐き気の波に注意していれば、それほど怖いものではない。
 ここまでで14分が経過したが、俺は時間丁度に到着すると確信していた。

 手順があった。
 まず、デスクトップの電源を入れる。
 次に、こいつが“どこに繋がっているか”に意識を集中する。
 最後に、どこに行きたいか念じる。それだけでいい。

「おはよう、つまづくなよ」
 次の瞬間、俺は探偵事務所に立っていた。整理の秩序と使用中の混沌が戦を構えているような探偵事務所だ。
 テレポート。正確には、「インターネットに繋がっている電子機器が複数あれば、その間をポータルのようにして移動できる」というものだ。
 ――ただ、能力には代償が伴うものだ。
「失礼します」……と言葉を交わす余裕もなく、俺はトイレに駆け込んだ。
 能力行使後には極めて強い頭痛に襲われるのだ。

 俺達は偏頭痛サイキック。そう呼ばれている。
【続く】

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