十二次元の王
また、やってしまった。
セクター・居合の資源調達室。眼の前には頭部から血を流して倒れている男が一人。私の手には《ゆらぎ探査斧》。彼は死ぬ直前に叫び声を上げたから、すぐに警備員が来るだろう。事故とはいえ、その後の待遇は碌なものではない。
(逃げちゃおかな)「そうだ、君はここから逃げることになる」背後からの声に振り向くと、そこにはポータルがあった。
私はこの地方に伝わるおとぎ話を思い出した。"重罪を犯した者の数パーセントが人々の恨みによりこの世界から追放され、次元の狭間を永遠に漂うことになる"というものだ。
「あっ、ちょっ、待っ……」私は走って逃げようとしたが、ポータルは瞬きする間に私を追い越し、そのまま消滅した。
「……それで、監視カメラには一部始終がバッチリ写っていたと」「ハイ」
鰹出汁臭漂う軍務局員銀灰は、部下の雲池が提示した記録を見て、しかめ面をした。
「開戦やむなしか」「ハイ」
【続く】
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