見出し画像

【第5回】20年度新聞協会賞受賞!『にほんでいきる』読書会(2)

こんにちは、認定NPO法人Living in Peace(以下、LIP)難民プロジェクトです。

LIPは、日本に住む難民の方々の支援をしています。
今回は、難民・移民の子供たちの現状をより知るべくLIPが4月に開催した読書勉強会にほんでいきる---外国からきた子どもたち(以下、にほんでいきる)』のレポート完結編をお届けします。

◎日本で暮らす外国ルーツの子どもたちの現状

これまでの難民2世について考えるでもお伝えしてきたように、日本で暮らす外国ルーツの子どもたちの教育や暮らしが、日本に住むマジョリティからは遠いものにあることは珍しくありません。『にほんでいきる』でも、小学校にも通えず(家庭訪問をした先生にも会えず)、虐待により命を落としたアユミちゃんのショッキングなエピソードから始まっています。

日本で暮らしながら教育の機会を得られていない子どもたちの実話に胸が痛くなります。また、学校に通えていても無支援状態で授業についていくことができない子どもたちや、特別支援学級に間違って入ってしまうことになったケースなどでは、日本社会で取り残されてしまう子どもたちと、それを支えていこうとする大人たちの様子が伝わってきます。
学校とつながりを持てないことは、社会から子どもたちを見えなくしてしまうリスクが高く、子どもたちの将来を奪ってしまいかねません。そして、学校をドロップアウトした先の未来・・・そこで待ち受ける困難は想像に難くないでしょう。

様々な子どもたちの事例は、私たちに「こんな社会でいいのか」と、問いかけてきます。

◎私たちの課題 ~『にほんでいきる』を通じて~

ホワイトボードツールのMiroを使って出てきた意見には、大きく以下のような課題がありました。

(1) 対応やノウハウの属人化

『にほんでいきる』では、個人やNPO法人、地方自治体の懸命な取り組みや成功体験が垣間見えます。しかし、一方で、外国人や外国ルーツの子どもたちに対する理解度や対応などが、自治体や団体個々に依存しすぎていると感じたメンバーが多くいました。

学校現場や、そこで頑張っている先生たちにのみ外国ルーツの子どもたちの教育を任せるには、すでに限界を向かえて久しいように思えます。自治体間や組織間の連携を加速し、ノウハウの周知や底上げを図るには、現場任せにならない仕組みづくりが急がれるのではないでしょうか。

(2) 親(保護者)の置かれた環境や理解不足による不就学・不登校

子どもたちが教育を受ける権利を守るためには、親(保護者)が教育の大切さや、教育を受けさせる方法を知っている必要があります。昔は、当たり前のように(時には鬱陶しくさえ)思っていましたが、私たちが、時に厳しく学校に行くように諭されたのは、自身の親の教育に対する認識があってこそだと気づかされました。

また、親(保護者)が今日を生きるために忙しくしていたり、親子の母語が異なったりすることにより、親子の深いコミュニケーションが取りづらいケースも想定されます。それにより、子どもたちが、学校で起きたトラブルや悩みを共有・相談できる相手が、非常に限られてしまうリスクもあるのではないでしょうか。

不就学の連鎖を生まないためには、親(保護者)以外の頼れる大人の存在を持ってもらうためには、大人は何ができるでしょうか。

(3) 文化・民族の相互理解の不足

私たちは、小中学生の頃「みんなと同じがいい」と感じてしまった経験を振り返りました。そして、「みんなと同じ」であることの良さが促進されることにより、外国ルーツの子どもたちが、自己肯定感を得られにくくなることを招いてしまうのではないかという疑問が上がりました。

日本ルーツも、外国ルーツも、それ以外も関係なくお互いに「知らない」ことを知ろうとし、良い影響を与え合えるような教育環境をつくることはできないでしょうか。

最後は、これらの課題をもとに、いま私たちができること、取り組むべきことについて意見をまとめました。

読書会

◎いま、私たちにできること

(1) 知ること

知らないことは、それによってその存在を恐れたり、遠ざけてしまったり、間違った判断をしてしまったりすることに繋がりかねません。そこで、私たちは、自らが、下記にあげるような法律や事例について、より深く知っていく必要があると考えています。そのために、勉強会を継続して行ってまいります。

・日本における成功事例
・ドイツ(欧州)の移民の今・昔
・日本以外のアジア圏における外国ルーツの子どもたち
・一条校と就学義務について
・特別支援学級(学校)について
・中学以降の外国ルーツの子どもたちの進路
・・・など

(2) 取り組むこと

また、これらの知見を深掘りし、LIPとしてできることを模索していきます。今回の勉強会では、具体的に、外国ルーツの子どもたち・親(保護者)たちに対し、下記のようなことに取り組みたいという声が上がりました。

・将来の選択肢を知るための支援
・義務教育卒業後の生徒たちの進路支援
・親・保護者への支援
・学校との連携
・アウトリーチ型の支援
・・・など

(3) 知ってもらうこと

そして、まずは、なにより、移民・難民の子どもたちの存在を「見えない存在」にしないよう、知ってもらうことに取り組んでまいります。

◎さいごに

この本の最後は、編集編成局次長の以下のメッセージで締めくくられています。

「にほんでいきる」という言葉が、過酷さを物語るものではなく、すべての子どもたちが安心して学び、育っていけることを象徴する言葉になってほしい。そのための改革はまだ始まったばかりである。-中略-
誰もが「にほんでいきる」仲間なのだ。

「子どもの権利条約」を日本が批准してから20年以上。
いまなお、日本で暮らす外国ルーツの子どもたちの多くは、学ぶ権利を得られずにいます。日本で暮らす誰もをとりこぼさない、包括的な社会の実現に向け、「このままでよいのか?」と常に問いかけ、よちよち歩きでも、私たちは一歩ずつ課題に対し取り組み続けていかなければ、と感じた読書会でした。

-------------------------------------------------------------------------------------
LIPは、引き続き日本で暮らす移民・難民に心を寄せ、「誰もが安心して子どもを育てられる社会」を作っていくために、自分たちが取り組める課題に取り組んでまいります。

過去の『難民2世について考える』は、こちらから。

-------------------------------------------------------------------------------------

★LIPでは多文化社会の共創に向けて、東京大学・筑波大学との共同研究で移民・難民2世以降について取り組んでいます。

少なくとも片方の親が外国出身で、日本生まれ、または10代前半までに来日した若者(移民・難民第二世代)の大学卒業後の日本での就職には大きな障壁があります。様々な経験や能力を有するにも関わらず教育から労働市場への移行がスムーズに行われておらず、そのことを調査した実態研究も現時点では存在していません。そのため、この共同研究では、企業・当事者へのインタビューを通して移民・難民第二世代の若者の教育から労働市場への移行がなぜスムーズに行われていないのかについて明らかにすることを目指しています。

「スキ(ページ下部のハートマークをクリック)」で応援いただけると大変励みになります。よろしくお願いします。

執筆:宮本麻由(Living in Peace)

-------------------------------------------------------------------------------------

SNSでも情報を発信しています!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?