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「進学しづらく、退学しやすい」施設出身者の課題と解決策【お金の教育事業紹介1/2】

Living in Peace(以下、LIP)こどもプロジェクトは2018年より、社会的養護下の子どもたちを対象とした「お金の教育事業」を行っています。

これは、さまざまなコンテンツの提供を通じて、子ども達に今後の人生に必要な「お金のリテラシー」を身に着けてもらうことを目的とした事業です。

お金の教育を通じて、生まれ育った環境に左右されず、自由に生きるための選択肢を見せる。それが本事業の目指すところです。

そしてこれは LIPのミッションである「すべての人に、チャンスを。」の具現化のひとつであると信じています。

本記事では、そんな「お金の教育事情」の内容や、その背景にある社会課題について、前後編でお届けします!

施設出身者は「進学しづらく、中退しやすい」

お金の教育事業を始めるキッカケとなったのは、児童養護施設出身者の高校卒業後の進学状況に関するデータです。

NPO法人ブリッジフォースマイルの「全国児童養護施設調査2020社会的自立と支援に関する調査」によれば、児童養護施設出身者と全国平均には、以下の通り大きな乖離があることがわかっています。

注:全国平均中退率は1年間における数値。
児童養護施設出身者中退率は、進学後1年3ヵ月経過時点の数値。

これは一言で表せば、児童養護施設出身の子どもは、その他の子どもと比較して「進学しづらく、中退しやすい」ということです。

では、なぜこのような状況が生まれてしまっているのでしょうか?

奨学金だけでは解決できない

こうした状況には、子どもたちの学力の問題だけではなく、経済的な問題も大きく影響しています

そして私たちは、この「経済的な問題」は「①進学資金の不足」と「②お金のリテラシー不足」の2つに分類することができると考えています。

これらは車の両輪のようなもので、どちらかが欠けても十分な機能を発揮することはできません。

前者の「①進学資金の不足」については、以下の通り近年では給付型奨学金の制度化や授業料減免制度など、社会的養護下の子ども達の進学を後押しする改善がなされつつあります。

給付型奨学金
2017年度より給付型奨学金が制度化され、社会的養護下の高校生達の進学を後押ししています。社会的養護出身者にとっては、貸与型奨学金を利用せずに在学中の生活費の大きな部分をカバーできる内容となっています(2021年度における支給額の例:国立大学自宅外進学66,700円/月、私立大学自宅外進学75,800円/月)。

授業料減免制度
2020年度より大学等の高等教育における授業料減免制度が開始されました。給付型奨学金と適用条件は同様であり、原則としてワンセットでの支援制度となっています。例えば大学進学の場合には、入学金と年間授業料のおおむね8割以上が減免されるものとなっています(個々の学校によって結果は多少異なります)。

一方で後者の「②お金のリテラシー不足」については、まだまだ社会的な取り組みが足りていない実態があります。「お金の教育事業」は、この課題を解決するための取り組みです。

「お金のリテラシー」とは?

そもそも「お金のリテラシー」が不足しているとは、どういうことでしょうか。そしてその背景には、どういった事情があるのでしょうか。

私たちはそれについて、以下のような現実的課題・背景があると考えています。

  ①個別のプランニングの必要性

お金のリテラシーが足りないばかりに資金ショートを起こしてしまい、卒業までに必要な資金を用意できずに退学してしまう子どもは少なくありません。

高校卒業および施設退所後の生活において必要となるお金は個人ごとに異なります。たとえば進学のケースでも、「大学か短大か専門学校か」「私立か公立か」「文系か理系か」「首都圏か地方か」といったいくつもの前提条件が存在し、それぞれ必要はお金のプランは異なってきます。

しかし、個々にあわせたお金のプランをつくることはそれなりに手間もかかるため、施設職員などが独力ですべてに対応することは難しいというのが実情です。

  ②施設職員の専門性の違い

そもそも、施設職員は子どものケアのエキスパートです。ファイナンシャルプランナーなどのような、お金のリテラシー教育の専門家ではありません。

児童養護施設職員の方々へのヒアリングを重ねた結果、お金のリテラシーについての外部講師のニーズがあることがわかりました。

  ③より「生活する力」に注力したお金の教育の必要性

金融機関などがお金のリテラシー教育を行っている例もあります。しかしその内容は、金融の歴史や投資教育など。

一方で社会的養護下の子どもに必要なのは、退所後の現実的な「生活する力」に注力したお金のリテラシー教育です。

なぜLIPがお金の教育事業に取り組むのか

そこで「お金の教育事業」では、より子ども達の実態に即した、個別的なリテラシー教育を行なっています(詳細は後編記事で紹介します)。

私たちLIPがお金の教育事業に取り組むことには、いくつかのメリットがあります。

  ▷プロボノというポジション

一つ目は、「全員プロボノ」というLIPの特性と、お金の教育の相性の良さです。

お金の教育事業は、社会性が高くマネタイズ(事業の収益化)が難しい一方で、実践者にビジネススキルが求められるという特徴があります。

したがって、お金の教育事業を行うには「非営利×プロボノ」の組合せが適していると考えられます。

そしてLIPは、本業を持ったビジネスパーソンが集まっているプロボノNPOです。

また、LIPには金融機関勤務者をはじめ、会計士や弁護士といった専門家など、幅広い分野の本業を持つメンバーが所属しています。

それにより、さまざまな観点から専門的知識を踏まえたコンテンツを作成して提供することが可能なのです。

  ▷社会的養護への取り組みの経験・実績

またLIPが取り組むことにより、児童養護施設建替支援事業、キャリアセッション事業、奨学金事業など、これまで10年以上取り組んできた支援の経験・実績を活かすことができ、シナジー効果が期待できます。

プロボノ募集のご案内

先述の通り、進学資金の不足は近年改善がなされつつあります。社会的養護出身者支援の機運が高まっているこの機会を着実に活かして持続的なものにするためにも、今こそ「お金の教育」こそが重要なはずです。

お金の教育事業では引き続きプロボノメンバーを募集しています。LIPおよびお金の教育事業のミッションに共感していただいた、以下のようなバックグラウンドを持った方々を歓迎します。

●ファイナンシャルプランナー
●金融機関等での勤務経験者
●弁護士・会計士・税理士などの専門家
●広報・マーケティングスキルのある方
●その他、とにかくこの事業に真剣に取り組みたい方

関心を持っていただいた方には、一緒に一歩を踏み出してもらえればと思いますので、是非こちらのミーティング見学フォームからお申込みください。想いをもった方々のご応募を、心よりお待ちしております。