ピィと鳴かないピィ
ときどき青空の一片がのぞくもののほぼ曇天、時々小雨という日が続く。
そんな中、元気に活動している鳥がいる。
カササギだ。
シャープな白黒に羽と尾の青が美しい。
鳴き声は「カシャカシャ」や「カチカチ」と形容されることが多いようだが、このあたりでよく聞くのはもっとダミ声というか、「ギャ、ギャギャギャ」といったイメージだ。
生涯を同じ相手と過ごす、いわゆる一夫一婦制をとると聞く。
冬のあいだから巣作りを始めるらしく、毎年この時期には植物の蔓や細い枝などを加えて忙しく飛び回っている様子が見える。
どうもわが家の庭を資材調達場所としているペアがいるようだ。
たしかにシラカバの枝などは細くしなやかで丈夫そう。
行って戻っての時間をみると、ここから遠くないところに営巣していると思われる。
ところでこのカササギ、日本にいた頃にはよく名前は聞くものの実際に見た記憶がなく、どんな姿なのか知らずにいた。
イタリアでこの鳥がGazza(ガッザ)と呼ばれていることを知り、ロッシーニの「La gazza ladra=泥棒かささぎ」を通じて姿と名前がつながった。
さて、その後フランスに引っ越し長女が幼稚園に入ってまもなくのころ、その帰り道に長女が近くの芝生の地面をつついていたカササギを指さして「ピィ!」と言った。目が輝いている。
鳥の鳴き声のイメージをかわいく表しているのだな、と思い、立ち止って「あ、ピィちゃんね、ピィピィ」とか返したら、「ちがう!ピィィ!」と、さらに何度も勢いよく指をさし訴える。
なんと、フランス語では「Pie(ピィ)」はカササギのことなのだった。
鳴き声からイタリア語の「ガッザ」がイメージ通りに思えていたので、ピィは予想外だった。笑
フランス語ほぼゼロで入った幼稚園で覚えた「ピィ」をわかってもらえず、半泣きになっていた長女の様子を今でも愛おしく思い出す。
ちなみにカササギの学名は「pica pica(ピカ ピカ)」というらしい。
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