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業種ごとの特定技能活用②【宿泊業】

前回は外食業での特定技能の活用方法をご紹介しました。
今回は、GoTo再開などで旅行する人も増え、人手不足が見込まれる宿泊業についてご紹介したいと思います。
宿泊業の特定技能は、日本国内のホテルや旅館、その他宿泊施設の人材不足を解消するために設けられた制度で、以前よりも海外人材を雇用しやすくなったことが特徴です。
どんな施設で活用できるのか?どんなお仕事をまかせられるのかなど、細かい部分にも触れていきます。

宿泊業界の現状

直近では、新型コロナウイルスの影響で観光ができないという状況が続いておりますが、それ以前は訪日外国人が年々増加している状況でした。
ただし、宿泊施設は年々増加しているものの、そのほとんどが東京など中枢都市に集中しており、地方都市の宿泊施設は減少しているのが現状です。
宿泊施設が都市部に集中しているため、ただでさえ少ない地方の施設は、人材確保にとても課題を抱えています。

宿泊業1

旅館・ホテルの支配人、飲食物給仕係、旅館・ホテル・乗物接客員の合計で求人倍率は6倍を超えています。これは、1人の人材に対して6件以上の求人があるという状態で、人材不足であることがよくわかります。
人材不足を補う対策として、IT化での業務効率化を進める宿泊施設も少なくありませんが、実際には自動化が難しい部分も多く、どうしても人の手が必要となる場面が多いようです。
このような状況下にて、2019年4月に特定技能が新設されたことにより、ホテルや旅館で海外人材スタッフが日本人とほぼ同じ業務に従事することができるようになったのです。

【宿泊業】の業務内容

特定技能に関して、観光庁の発表では「宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供に係る業務に従事する外国人材の受入れが可能。」とされています。
簡単に言うと、『宿泊施設で必要な業務の大部分を担当できる』ということなのです。

フロント業務
 - チェックイン/アウト、周辺の観光地情報の案内、ホテル発着ツアーの手配 等
企画・広報業務
 - キャンペーン・特別プランの立案、館内案内チラシの作成、HP、SNS等による情報発信 等
接客業務
 - 館内案内、宿泊客からの問い合わせ対応 等
レストランサービス業務
 - 注文への応対やサービス(配膳・片付け)、料理の下ごしらえ・盛りつけ等の業務 等
(参考:国土交通省 観光庁「宿泊分野における特定技能外国人の受入れについて 」

2019年の特定技能新設以前は、宿泊業で海外人材を雇用するには「技能、人文知識、国際業務」や「留学生、家族滞在」のアルバイト雇用が一般的でしたが、特定技能によってより採用の幅が広くなりました。
ただし、全ての業務に携われるわけではありません。国土交通省の発表した資料ではこのように記載されています。

「当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(例:館内販売,館内備品の点検・交換等)に付随的に従事することは差し支えない」

つまり、同様の業務に就く日本人スタッフが従事する内容であれば、関連業務を行うことが可能となりました。ハウスキーピング、ドアマン、宴会用スタッフ、施設内での販売業務、施設内の備品点検や交換、清掃など、幅広い業務などがそれに該当します。特定技能外国人を雇用することで、人材不足を補えるだけでなく、多言語での接客が可能となるメリットも見逃せないポイントです。

ここで注意しなければならないのは、「付随的に従事することは差し支えない」と言及されていることです。逆に言えば、特定の業務のみを担当させることはできません。
例えば、清掃をメインとするならば、特定技能の14業種内にある「ビルクリーニング」の在留資格を持つ海外人材を雇用する、などです。ちなみに特定技能外国人に対して、風営法に関する接待業務をさせることは禁止されています。ホテル内のクラブやスナックで接客をすることがこれに該当します。

宿泊分野の特定技能1号を取得する条件

特定技能「宿泊」において受け入れられる海外人材は以下の2つの試験に合格した者、もしくは宿泊分野の技能実習2号を修了した者とされています。

■必要な2つの試験
①日本語の能力に関する試験
日本語に関する試験に合格することは、業務に関わる日本語能力水準を満たしていることが証明されます。具体的には「日本語能力試験(N4以上)」または「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格していることが求められます。
②宿泊業技能測定試験
宿泊業で必要となる知識や技能を身につけているか、を証明するために宿泊業技能測定試験に合格していることも求められます。この試験は業務に直結した内容が出題されるのが特徴です。
フロント業務、企画・広報業務、接客業務、レストランサービス業務、安全衛生その他基礎知識といった5つのカテゴリーから出題されます。この技能試験は宿泊業技能試験センターが実施するものです。テキストは特に定められていませんが、第1回試験の過去問題は一般社団法人宿泊業技能試験センターのwebページからダウンロードができます。

その他特定技能全分野で共通する以下の点が求められます。
・日本入国時に18歳以上であること
・保証金または違約金の徴収などをされていないこと
・送り出し国で海外雇用についての規定がある場合、正当な手続きを経ていること

■宿泊分野の技能実習2号を修了
令和2年2月25日、宿泊業が技能実習2号の移行対象職種として認定されました。これによって、宿泊業分野の技能実習2号を良好に修了した技能実習生は、無試験で宿泊の特定技能1号へ移行することが可能となったのです。2020年に認定されたため、今後このケースも増えててくるのではないでしょうか。

特定技能外国人として宿泊分野で働ける期間

特定技能制度による宿泊業は、在留資格「特定技能1号」のみ設定されています。そのため、日本で就労できる期間は通算5年間と定められていることを忘れてはいけません。5年を超えて雇用し続けることはできないので注意しましょう。
また、特定技能1号の場合は、本人の家族を日本に呼びよせて暮らすことは認められていません。採用する前に「契約が5年以内であること」や「家族を日本に呼ぶことはできないこと」をしっかりと伝えておきましょう。

ちなみに、技能実習制度では最大5年間、日本で働くことができます。技能実習1号から3号の5年間と特定技能の5年間を合わせると、最大10年間働くことが可能です。ひとりの従業員に長く勤めてもらえれば、人材確保や採用、教育に関するコストや工数をカットできるため、受け入れ企業の利益にもつながるのではないでしょうか。

受け入れ企業の条件

特定技能外国人の雇用に関して、受け入れる企業側にも以下3点の要件が求められます。

許可された業務に従事させること
 - 特定技能「宿泊」で許可された業務は先述したとおりです。
国土交通省が定めた「宿泊分野特定技能協議会」に加入し必要な協力を行うこと
 - 特定技能外国人1号を受け入れてから4ヶ月以内に、「宿泊分野特定技能協議会」に加入することが義務づけられています。観光庁のサイトにある入会届に必要事項を記入し、郵送してください。
海外人材に対して支援を適切に行うこと
 - 特定技能制度を活用して海外人材を雇用するためには、定められた支援を適切に行わなければいけません。受け入れ企業でサポートしきれない場合は、登録支援機関に支援業務を委託します。

特定技能を活用する際の注意点

特定技能「宿泊」において、宿泊施設ならばどこでも採用できるわけではないので、こちらも注意が必要です。
簡易宿泊所や下宿営業、風俗営業法第2条第6項4号に該当する施設での雇用は認められていません。ラブホテルやモーテル等では、特定技能での雇用はできないのです。詳しい要件については警察庁の資料をご覧ください。

さいごに

今回は特定技能【宿泊】について、お話させていただきました。
これまではアルバイトや通訳担当としての雇用がメインだった宿泊業ですが、通訳で雇用している場合は、通訳以外の業務を原則させてはならない。というルールや、アルバイト雇用の場合は28時間/週の就労時間制限を守る必要がある。など、
制約の多い状況下での雇用となっており、違反すると小さくはないペナルティを受ける可能性があります。
そういった不安要素のある雇用ではなく、クリーンでかつ、幅の広い特定技能【宿泊】が広がることで、日本の観光業全体の盛り上がりに繋がれば良いと考えています。

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