おむすび31

病院と介護施設の相談員、ケアマネージャー経験者。支援の現場での経験を基に創作。医療や介…

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病院と介護施設の相談員、ケアマネージャー経験者。支援の現場での経験を基に創作。医療や介護制度等の記事あり。こころのセルフケアに役立つサイトもあります。https://komorebista.jimdosite.com

マガジン

  • 高齢者の疾患と生活習慣・環境

    在宅で暮らしている高齢者の支援をとおしてみえてきた、生活習慣や環境の重要性についてまとめてみました。

  • 「介護保険」て何?

    ある日突然やってくる「介護」。介護保険制度についての記事をまとめました。

最近の記事

おもかげ

慶太は介護保険の認定調査員をしている。介護保険制度は介護サービスの利用が必要となったとき、市区町村に申請が必要だ。申請後、主治医の書いた意見書と、認定調査員が本人の身体状況や精神状態を聞き取り調査し、介護認定審査会を経て要介護認定がきまる。 今日は七八歳の男性が調査対象だ。 「お名前から教えて頂けますか?」 「浅木 次郎」 「生年月日と年齢を教えていただけますか?」 「昭和十九年三月二日やな。七十八歳。」 「ここにはどなたと住んでいますか?」 「嫁はん。娘は嫁に

    • ika・syake・ika・ika

      事務所にかかってきた一本の電話は大手の運送会社からのものだった。銀座にある部署で全国の配送状況を統括しているらしい。担当の男性によると、北海道の海産物を販売している会社に詐欺の疑いがあるという。高齢者が被害にあっている可能性がある場合、住んでいる地区の高齢者の総合相談機関に協力してもらっていると説明をうけた。 電話の相手は、販売会社は今年会社登記をしていること、被害の疑いがある住人は週一回商品を代引きで受け取っていることをつたえてきた。配送伝票に記載されている商品は、 「

      • 介護保険料の決まり方

        「モノガタリ」の背景 「モノガタリ」は第二の人生をテーマにした文学賞が創設されたことがきっかけで創作しました。人生100年時代と言われるようになり、現場で関わる中でも気力体力ともお元気な方はたくさんおられます。介護保険の第一号被保険者となる65歳以上になっても自分のペースで就労する人もおられます。 「家族なのに…」の彼女も専門職で働いた後、パートで働いていました。第一号保険者となると、収入は年金だけなのに介護保険料の負担が高いと驚かれる方がおられます。介護保険料は所得に応

        • 家族なのに...

          「家族なのに…」、と彼女はぽつんと言った。 息子の暴力から逃れ、一時保護施設から移送される車内。 車窓を眺めていた彼女。 警察からは高齢者虐待通報として行政機関に連絡が入った。 高齢者虐待防止法は養護者から受けるものと定義されている。 彼女は定年後も働き、十分な年金を受給していた。 身の回りのことは自分で行い、息子の食事も作っていたと言う。 「息子は今、どんな思いをしているのだろう…….。自分だったら、あんなことをして…後悔がある……。なんとも思っていないか…な」 警察

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        • 高齢者の疾患と生活習慣・環境
          6本
        • 「介護保険」て何?
          19本

        記事

          高齢者の疾患と生活習慣・環境

          低栄養 高齢者の身体機能の低下を表す言葉には、フレイルやサルコペニア、ロコモティブシンドロームなどがあります。 サルコペニア・ロコモ・フレイル 動かなくて食欲が低下する場合や、食べれなくて活動量が低下するようなこともあります。 転倒や社会的孤立感から外出の機会が減少 ☟ 活動量が低下し食欲不振 歯の調子が悪く、食事摂取量が減る ☟ 栄養不良となり活動量が低下 担当した利用者さんは、「口の中がにがい」と訴えていました。ご家族は大学病院などにも同行し、いろいろ検査を受け

          高齢者の疾患と生活習慣・環境

          高齢者の疾患と生活習慣・環境

          脱水・熱中症本格的な暑さがやってきますね。この時期は、介護認定を受けている方に「介護保険負担割合証」が届く頃です。後期高齢者医療被保険者証も発送されるため、施設の相談員をしていた時は証の確認に追われたり、ケアマネをしていた時は証の確認のため居宅訪問の頻度が上がるので、なぜこの季節なのかと恨んだものです。介護保険も後期高齢者医療制度も利用料は前年度の所得に応じて負担割合が決まります。前年度の確定申告の結果が市町村に届いてからの処理になるためだとは分かるのですが、この時期は止めて

          高齢者の疾患と生活習慣・環境

          高齢者の疾患と生活習慣・環境

          肺外結核コロナ禍で先の見えない不安な毎日が続き、大変な思いをされている方もおられると思います。早く穏やかな日常に戻るといいですね。 昔流行った感染症に「結核」があります。昨今では予防法も治療薬もあり、あまり流行しているイメージはないと思われがちですが、日本は「中まん延国」で途上国並みの感染国となっています。結核予防協会のパンフレットにも「東京オリンピックまでに低まん延国になって、世界のみなさまをお迎えしよう!」と書かれていましたが、今となっては…。 結核とは 日本の結核

          高齢者の疾患と生活習慣・環境

          高齢者の疾患と生活習慣・環境

          球麻痺・運動神経障害片麻痺などの運動障害や言語障害は日常生活に大きな影響を与えます。高齢者は脳血管疾患を発症する確率が高いですが、急激な身体機能の低下が脳血管疾患が原因ではなかったケースを紹介します。 Aさんは80代後半の女性。50代で脳梗塞を発症し、左半身不全麻痺がありました。自立心のとても強い方で、障害のある息子さんと二人暮らし。左上肢は拘縮が強いが、短距離歩行は可能です。息子さんが他人が家に入ることを嫌がるからと、電動車いすで買い物に行ったり、調理もしていると話してい

          高齢者の疾患と生活習慣・環境

          高齢者の疾患と生活習慣・環境

          高齢者の圧迫骨折 高齢期に見られる「いつの間にか骨折」。突然激痛に見舞われ介助が必要となり、介護申請を行うきっかけにもなるのですが、認定結果がでるまでに日数がかかり、一番つらい時に介護サービスを利用できない、やっかいな疾患です。 圧迫骨折の原因のひとつとされる「ドスン」と座り。下肢筋力の低下から座面にお尻がつくまで筋力で支えていられない状態ですが、高齢者はそれを長年繰り返すことで衝撃が加わり圧迫骨折につながることもあるといわれています。それ以外でもくしゃみをした途端や植木

          高齢者の疾患と生活習慣・環境

          高齢者の疾患と生活習慣・環境

          高齢者の飲酒 暑くなってくると、ビールがおいしく感じられますね。年中おいしい方も多いと思いますが、今回は高齢者の飲酒についての体験を記します。 高齢者の飲酒について 高齢者の飲酒と健康  ケアマネとして担当していたAさんは、一人暮らしの80代の女性。認知症はなく、整形的疾患も日常生活に支障をきたすほどではない方で、介護保険の認定は要支援1。遠方に住む娘さんが週一回来られて一緒にごはんを食べたり、月に何度か孫やひ孫さんが遊びに来られることもありました。高齢になってからご

          高齢者の疾患と生活習慣・環境

          高齢者の疾患と生活習慣・環境

          うつ病 6月になると気がかりになる利用者さんがいます。 老人性のうつではないかと感じていた方ですが、季節性のうつ病でもあったのかもしれません。 毎年6~9月になると、顔つきが変わり、声の張りがなくなるなどの抑うつ傾向がみられました。 何年も担当させて頂くと、季節ごとの変化にも気づきやすくなります。2~3年経つ頃には、決まった時期に調子が悪くなっていることが分かりました。うつ病には冬季うつ病と夏季うつ病と呼ばれる、決まった季節にだけ発症する季節性のうつ病が存在すると言われて

          高齢者の疾患と生活習慣・環境

          高齢者施設サービス②

          高齢者の住まい 高齢者が利用できる施設を「介護保険3施設」と呼ばれる公的な施設と、「高齢者の住まい」に分けて紹介しています。施設探しは、身体機能や要介護度、所得や立地などを考慮して選んでいくことになります。 高齢者施設サービス① 高齢者施設類型 高齢者の住まい ・養護老人ホーム ・軽費老人ホーム(ケアハウス) ・介護付き有料老人ホーム ・住宅型有料老人ホーム ・サービス付き高齢者向け住宅 ・認知症高齢者グループホーム 養護老人ホームと軽費老人ホーム(ケアハウス) 養

          高齢者施設サービス②

          高齢者施設サービス①

          高齢者施設とは 高齢となり、在宅での生活が難しくなると施設入所を考えることがあります。介護施設はいろいろありますが、入所を希望する方の状態像で利用できる施設はある程度決まります。 ・介護老人福祉施設 (特別養護老人ホーム) ・介護老人保健施設 ・介護療養型医療施設 ・介護医療院 ・養護老人ホーム ・軽費老人ホーム ・認知症高齢者グループホーム ・介護付き有料老人ホーム ・住宅型有料老人ホーム ・サービス付き高齢者向け住宅 ※介護療養型医療施設は、2024年3月で廃止予定。

          高齢者施設サービス①

          高齢者の権利擁護サービス

          金銭管理や契約行為のサポート 介護保険を利用する方の中には、金銭管理や契約行為に支援が必要な場合があります。在宅生活や施設入所、入院治療が必要になっても判断能力が十分でない方の権利を守り、安心して過ごせるよう支援することを「権利擁護」といいます。高齢者の権利擁護についての相談は、地域包括支援センターの他、市区町村や各相談機関などで行っています。 日常生活自立支援事業と成年後見制度 成年後見制度と日常生活自立支援事業の違い 日常生活自立支援事業 家賃や水道光熱費の支払

          高齢者の権利擁護サービス

          介護保険の在宅サービス⑧

          市町村等の独自サービス介護保険のサービスには、保険者である市区町村の裁量に任された高齢者支援サービスがあります。要介護認定を受けている方が対象であったり、65歳以上の高齢者であれば利用できるもの等があります。 市町村が提供している独自の高齢者支援サービス 大阪市のホームページを例にすると、 在宅で生活するための福祉サービス 「日用品や福祉用具の給付・貸与」「緊急時の安心サポート」「その他サポート」に項目が分かれています。 日用品や福祉用具の給付・貸与 日用品や福祉

          介護保険の在宅サービス⑧

          介護保険の在宅サービス⑦

          福祉用具購入介護認定を受けていれば利用できるサービス 介護保険のサービスには、要介護度別の上限のある単位数とは別枠で利用できるものがあります。 住宅改修 福祉用具購入(特定福祉用具販売) 市区町村等の独自サービス 今回は福祉用具購入についてです。 特定福祉用具販売 特定福祉用具 心理的に他の人が使用した後では利用することに抵抗があるポータブルトイレやシャワーチェア等、経年劣化で元の形態や品質が変わってしまう恐れのある福祉用具の購入は、介護保険の給付対象となります。

          介護保険の在宅サービス⑦