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高齢者の疾患と生活習慣・環境

高齢者の圧迫骨折

高齢期に見られる「いつの間にか骨折」。突然激痛に見舞われ介助が必要となり、介護申請を行うきっかけにもなるのですが、認定結果がでるまでに日数がかかり、一番つらい時に介護サービスを利用できない、やっかいな疾患です。

圧迫骨折の原因のひとつとされる「ドスン」と座り。下肢筋力の低下から座面にお尻がつくまで筋力で支えていられない状態ですが、高齢者はそれを長年繰り返すことで衝撃が加わり圧迫骨折につながることもあるといわれています。それ以外でもくしゃみをした途端や植木鉢を移動させようとした時なども耳にしますが、「いつの間にか骨折」は受傷のきっかけが分かりづらいです。

高齢者支援の現場で関わった感覚では、ベッドから半身起き上がるのにも介助を要する状態は発症直後の1週間以内で、それ以降は手すりを使ってなんとか動けるようになっていたように感じました。

老健の相談員をしていた時、デイケアに通っていた方が突然「動けない。」「助けてくれ。」と電話をかけて来られました。娘さんはお向かいに住んでおられるし、担当ケアマネでもなかったのですが、自宅に行ってみました。数日前から痛みはあったようで娘さんも知っており、ベッドから少し離れたテーブルには2リットルのペットボトルやパンなど食べられるものが置いてありました。極力動かなくて済むようにと思ってのことなのでしょうが、ベッドから半身起こした状態で手が届く距離ではなく、届いたとしてもペットボトルからコップに注ぐことも、そのまま直で飲むのも無理だっただろうなと感じました。

別の利用者さんは圧迫骨折が原因で介護申請を行いましたが、結果が出るまで一人暮らしは無理と医療職の娘さんが判断し、なんとか医療機関に一か月入院。退院後からケアマネとして関わった方でした。特に女性の圧迫骨折の原因は骨粗しょう症が影響していると言われています。その方は歯の不調を訴えておられましたが通院できず、歯科の椅子に座るのも負担であるためしばらくがまんしておられましたが、「前歯が傾いてきて嫌」と話しておられました。腰痛は継続しており、何か月後かに腰椎の4~5番目辺りがS字に曲がっていることに気が付きました。ある日訪問すると、痛みのため円座のクッションに半分お尻を乗せた状態で座っておられました。娘さんに訪問時の様子をお伝えすると、娘さんもあんなに背中曲がっていたかなと感じておられたそうです。ご本人には円座ではなく、痛みが軽減するクッションなどを勧めましたが、義理の息子が自分のために買ってくれたので別のものにはできないと話しておられました。

圧迫骨折はレントゲンでは映らず、MRI検査でようやくうっすら骨に線が入っていることで分かる場合があります。通常圧迫骨折を疑ってMRIを施行することは少なく、診断名がないためにご本人の痛みの訴えが届きにくいと感じることもありました。圧迫骨折の診断がおりると、骨粗しょう症の治療を勧められることがあります。骨粗しょう症の治療薬は薬価が高く、老健入所の際には治療方針の見直しを勧められることもあります。

高齢者施設サービス①

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