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Makino Kuzuha
2016年4月8日 18:38
3 ああこんなことであればもう少し片付けておいてもよかった、と思わないでもない。玄関口に転がった酒の空き瓶を蹴ってとりあえずの通路を作る。瓶がカランゴロ、と転がっていき、煙草臭い埃がぶわりと舞い上がって私は大きなくしゃみをする、彼女は苦笑いを浮かべなが
2016年4月5日 18:38
2 海辺の家だ。小さな港町をひたすら奥へと入っていく。「先生は、いつもこういうことを、なさるんですか」「こういうことって」「お金をトイレに流して、困ったりすることです」 少し変わった衝動があるだけよ、とわたしは助手席で水筒に並々注いであるウイスキーをなめた。舌がぴりり、と辛味に震える。あなたには本当に申し訳ないけれど。「いえ、本当に構わないんです。わたしも会社から出る口実
2016年4月4日 22:59
1 私が彼女と最初に対面したのは、去年の夏の終わりだった。彼女の働いている出版社から依頼を受けて、私は連載小説を書くことになったのだ。それは文芸誌でなく、婦人向けの生活情報誌だったが、私はそれを了承した。年始にひっそりと刊行された短編集の売れ行きが悪いこともあったし――生活に困窮しているというわけでは勿論なかったのだが、近いうち、海外かどこか遠いところへ引っ越したいと思っていた私にとって