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#(ハッシュタグ)を超えて

#(ハッシュタグ)は便利です。でも # では表し得ない魅力が、小川奈緒さんにはあります。

『古くて素敵な家』『ヨガ』『グルテンフリー』など、奈緒さんを表すキーワードは、それだけ並べれば、いかにも雑誌映えする『丁寧な暮らしを体現するおしゃれな人』の1人に思えます。

でも、奈緒さんのvoicyの熱心なリスナーかつ著書の読者でもある私にとって、奈緒さんの魅力の本質は、これらのキーワードにあるわけではありません。

『すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方』の冒頭のエッセイ"いいと思うことをやればいい"にて、ご自身の暮らしが『ていねいな暮らし』と表現されることに対し、奈緒さんはこう語ります。

「『ていねいな暮らし』は理想でも目標でもなくて、他人からの単なる印象なのに(p.14)…中略…誰がどれくらいていねいに暮らしているか、それにくらべて自分の暮らしぶりはていねいさが足りないんじゃないか、なんて気にしなくていい。…中略…『ていねいに暮らす』より、『いいと思うことをやって生きる』。それがわたしの目指すところです。(p.15)」

「すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方」

そう、奈緒さんは、思考や行動を"他人の目"によって歪めない。『これをやったらこういう人に好かれるかな』とか『素敵な人に見られるように』とか、そういう視点で、人生の選択をしていないのです。

では、何を見ているのかというと、奈緒さんはいつも、ご自身の内側を見つめているように思います。『何に違和感を感じている?』『これのどこが好き?』『どんな仕事を、どうやってしたい?』

例えば、30代の終わりに郊外に引越し、子育てをしながら著作を出すという働き方に変えた結果、収入が激減したことについて、奈緒さんはこう語っています。

「お金がたくさんないことで、不幸と感じる状況に陥っているわけではないなら、やりたいことをやって生きることが、自分をしあわせに導いてくれる、まずはそう信じてみることからのリスタートでした。(p.149)」「そうしてもがいていた時期、いまとなっては賢明だったと思うのは、インスタグラムをやっていなかったことです。…とにかく、華やかに活躍している人たちや場所から物理的にも精神的にも距離を置いていたことで、自分がいいと感じる方向へとただ進み続けることができました。(p152.153)」

「すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方」

そうやって他者ではなく自分をじっくり見つめた末に、一つ一つ決断し、行動し、理想の姿へ試行錯誤する。もちろん楽しみながら。
だから本書には、奈緒さんが生活し、経験したことーそれは『人生の転機』などの大きなことから、『うつわ選び』や『運動の取り入れ方』などの暮らしのことまでー奈緒さんにしか伝えられない、実感のある知恵に満ちています。

ところで私は、出産を機に仕事に区切りをつけ、今は2人の娘の育児に奮闘中の、専業主婦です。
ほんの半年前までの私は、自分のやりたいことに費やせる時間もエネルギーもなく、ただぼんやりと『憧れの暮らし』を夢想し、インスタグラムを検索するだけの日々でした。
生活のほとんどを、やりたいことよりもやるべきこと、自分のことよりも娘たちのことに埋めていました。そしていつの間にか、やりたいことにまっすぐに挑戦する勇気も忘れていたのです。

でも、奈緒さんがvoicyで毎日シェアしてくれる日々のトライ&エラーや、年齢やこれまでの仕事の殻をどんどん破り、『やりたいこと』へ邁進する姿に触れるにつけ、自分のハートがメラメラと燃え始めました。私もやりたいことをまっすぐにやり、人に喜んでもらいたい。自分の人生を、すこやかなほうへ歩ませたい。
奈緒さんからいただいた一番の宝物である『勇気』を胸に、最近は、生活の色々なところで新たな一歩を踏み出しています。この書評を書いているのも、挑戦の一つです。

だから私にとって、『すこやかなほうへ』は、表層をなぞり、憧れを刺激するような、よくある暮らし本ではありません。
好奇心を持ち、勇気を出して行動に移し、変化を楽しみ、工夫を凝らす。そうやって一歩一歩『すこやかなほうへ』歩みを進めてきた、奈緒さんの冒険の記録だと思っています。
誰もがそもそも持っている、『よく生きたい』という根源的な欲求に、火をつける本。
奈緒さんが描いた冒険の記録を手に、私は今日も小さなチャレンジを続けています。目指す先はそう、『すこやかなほうへ』です。

linenまい

引用
小川奈緒『すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方』
発行日 2022年12月10日
発行 集英社クリエイティブ

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