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【映画探求の日々】

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映画宣伝の仕事を始めて、23年がすぎた。人生の半分は映画の仕事をしている。フリーになって17年。辞めようと思ったこともある。でも辞めなかった。東京の映画館が二ヶ月休館している間は… もっと読む
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だって僕は黒人なんだから

だって僕は黒人なんだから

「だって僕は黒人なんだから」
今年の2月中旬、『レ・ミゼラブル』のプロモーションで来日していたラジ・リ監督は何度もそう言った。

「カンヌ映画祭で審査員特別賞を貰った。
これは本当にすごいことなんだよ。だって僕は黒人なんだから」

警官に職務質問をされたのは10歳。
「怖くて仕方なかった。それから何千回もされたよ。数えきれない」
17歳でビデオカメラを手にしたラジ・リは街で起きていることを撮り始め

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ちょっとした気の迷いから、17年

「あなたは、一人でやっていけるね」

別れ際の恋人に言われた言葉ではない。
なんと、会社の面接で社長から言われた言葉でして…。すかさず、「御社の面接を受けに来ているんですけれど~」と突っ込みを入れた次第。

フリーランスになって、かれこれ17年が経とうとしている。たまたま退職前に宣伝の仕事を貰い、そのままフリーランスに移行しただけで、特になりたかったわけではなくて。
その数か月後、わりと大きな配給

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みんなちがう夢をみた

1996年、映画界に飛び込んだ。仕事は映画の宣伝で勤めた会社は表参道にあった。10時出勤。映画業界は始業がおそいので、11時に他の人はやってくる。10時に来るのは、下っ端三人のみ。ひとりは私より前からいた事務の女性。もうひとりは、私が入ってすぐに「求人をしていませんか」と電話してきた男性だった。同じ年ごろだったので、掃除や雑務をしながら、三人でいろんな話をする。上司のいないそのひと時があったから頑

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歌舞伎町と、フレンチトースト

小学生の頃から映画館に出かけていた。母がいつも池袋の映画館に連れて行ってくれたから。いま思い出してみると、『ビルマの竪琴』、『優駿』、『子猫物語』、『僕の女に手を出すな』、『TANTANたぬき』など、自分が観たいものと、子供が観たいもの、観るに無理のないものをうまく合わせたラインアップ。よく練ったのではないかと推測される。

そんなある日、父が「映画に行こう」と言い出した。母と一緒に、弟と私が連れ

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