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Digi田(デジでん)甲子園2023から考える出版業界のDX

内閣官房の「デジタル田園都市国家構想」がデジタル化の取り組みを表彰する「Digi田(デジでん)甲子園」。そのノミネート案件から、書店や図書館にとって役立ちそうなアイデアや情報をピックアップしています。


こんにちは、LINE BOOKUOKAサークルです。
LINEヤフーコミュニケーションズの福岡拠点にいる元書店員メンバーが集まって、書店や図書館の盛り上げやデジタル化(DX)を推進しています。

今回は本日まで投票受付中のDigi田(デジでん)甲子園2023のノミネート案件を眺めながら、出版業界だったらこんなことできるかなー、というのをツラツラ綴ってみました。


Digi田(デジでん)甲子園

内閣官房が打ち出しているデジタル田園都市国家構想というのがあるのですが、年に一回、地方公共団体、民間企業・団体のデジタル化の取り組みを表彰する催し。ちょうどいま本選のインターネット投票期間になっています。

いろいろと先進的な取り組みが紹介されているため、本に関係してそうとか、これってきっと図書館や書店の役に立つのでは、とか考えてみました。

「オープンな事業承継」で地域の小規模事業者の後継者探し - 株式会社ライトライト

ライトライトが運営する「事業承継マッチングプラットフォーム relay(リレイ)」がノミネート。従来のクローズドな事業承継ではなく、事業者のストーリーをサイト上で共有し、共感を呼ぶことで新しい事業承継を実現しています。
本にまつわるところでは、宮崎県高原町の本屋さん(山下書店)や、福岡市の活版印刷所(文林堂)がrelayで事業承継先を見つけているようです。
地方の書店は売上低下や後継者不足での閉店も増えていますが、一方で新規開店する独立系書店も増えています。地方の老舗書店は教科書販売や図書館納品の権利を持っていたりもするので、新たに書店を開きたい人とそんな老舗書店のマッチングがもっと活発になるとよいかもしれませんね。日販やトーハンのような取次と事業承継プラットフォームが連携してもよさそう。
リレイの詳細はこちら

小・中学生の学習用コンテンツサイト「おかやま まなびとサーチ」 - 岡山県教育庁生涯学習課

小中学生向けに、県内の博物館や大学、地元企業の工場の様子など短くてわかりやすい動画をたくさん用意しているサイトを作っています。産官学連携でコンテンツを集めている部分が素敵です。本にまつわる産官学というと書店、公共図書館、大学図書館、地元の出版社など様々あるので、コンテンツを提供したり、このサイト自体を地域に紹介する役割を担ってもよいのでは。
おかやま まなびとサーチの詳細はこちら

全員が主役!みんなで創る「佐賀市公式スーパーアプリ」 - 佐賀県佐賀市

佐賀市が開発した市民の行政サービスへの積極的な参加を促すスーパーアプリがノミネート。いろいろな機能がありますが、このアプリには図書館の機能も入っています。佐賀市図書館の貸出カード表示機能があって、貸出状況の確認や予約もできる便利な仕組みです。佐賀市は人口23.6万人ほどでアプリのダウンロード数は3.7万人、約15%が使っていて割と高い浸透率になっています。
アプリは初回ダウンロードのハードルと定期的なメンテナンスも発生するため、そこが課題になる場合はLINE公式アカウントに入れてしまうのも手だったりします。実際に、横浜市、渋谷区、那覇市では自治体のLINE公式アカウントから貸出カード表示や予約ができる機能が。
いずれにせよ、多くの市民が見に来る場所に図書館の表示があるのは、潜在的な読者増に繋がるので応援したい取り組みですね。
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つるおか子育てワンストップe-私書箱 - 山形県鶴岡市

山形県鶴岡市は子育てに関わる行政サービスをデジタル化。マイナンバーカードを利用した個人認証による申請手続で利用者と職員双方の省力化を実現しています。
こちらは図書館で類似の活用ができる仕組みかなと思います。図書館の初回の利用者登録はいまも実際に窓口を訪れて紙で申込書を書いて処理、というのが多いです。割と手間なのはご想像の通りですが、最近は電子図書館の導入も増えているため、そもそも図書館を訪れずに利用者登録を完結したいというニーズも高いです。
マイナンバーカード自体を貸出カードに、というのはまだ少し極端な活用例ですが、個人認証の手段としてはとても優れているので利用者登録や更新での活用は増えるとよいかなと思います。
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「本当に」誰一人取り残さないデジタルデバイド対策 - 熊本県大津町

大津町がソフトバンクと連携して実施している移動型車両によるスマホ教室の取り組みです。遠隔地や高齢者のいる地域にて、なんと831回の開催。バスの中にオンライン配信の仕組みがあって講師は遠隔にいるというのがポイントかも。
これはスマホ講座ですが、この方法は図書館が取り入れても面白そうです。電子図書館が普及してきているのでその導入案内もですし、デジタルアーカイブなどオンライン系のコンテンツが充実しているならPRとレクチャにも。
移動図書館は以前からあるところにはありますが、プラスで移動型のオンライン講座をセットにできると持続性が高まるかもしれないなと思いました。
あと、長崎のメトロ書店がオンライン読書相談カウンターをやっていましたが、移動図書館と連携してそんなことができてもよいかも。読み聞かせや読書会が出来てもよいのかも。
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市民参加型のインフラ保全プラットフォーム「TEKKON」 - WHOLE EARTH FOUNDATION JAPAN

最後はちょっと毛色が違いますが「TEKKON」が気になりました。市民がインフラの保全に貢献するためのアプリで、マンホールや電柱などをスマホで撮影すると、ポイントをゲットできる仕組みです。自治体や企業が現地に行かずともインフラの劣化状態を把握できるのがポイントです。

出版業界といったい何の関係がと言われそうですが、本っていろんなところで紹介されていると思いませんか。書店のPOPや図書館の特集、学級だより、果ては唐突に本好きの店員がいる飲食店やサロンのチラシとか。こういう街中に散らばっている本のおススメ情報をみんなで投稿しあって集めたら一体どれほどの情報になるんだろう、とワクワクします。自分が気になった本がどこでどんな風に紹介されているかわかったり、そんな街中の本の紹介などを出版社や作家さんもあますことなく気づけたらいいのにな、と思ったりも。
どこが情報を集めて誰がそのポイントを出すんだろう?というのは課題ですが、みんなで本の情報を集める仕組み、何か作れないかなーと思いますね。
TEKKONの詳細はこちら

という感じでDigi田(デジでん)甲子園の事例を見てみました。いろんなアイデアが集まっているので自分の周りでも何かできないか、とか考えてみると面白いので是非。DX自体は決して目的ではないのですが、本に触れる人が増える、機会が増える、触れやすくなる、見つけやすくなる、そういったことが少しずつ進むといいなと思います。

それではまた、よい本との出会いを。

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