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マーダーミステリーとノックスの十戒1/3

こんにちは、LIMIです。
今回は、マーダーミステリーとノックスの十戒についてメモしていこうと思います。おおまかな目次はこんな感じです。

〇前提:ノックスの十戒 とは?
1.マーダーミステリーにおいて、ノックスの十戒は必要か?
2.マーダーミステリーと守られない十戒
3.どうすりゃいいんだよ!


書くことが決まっていませんが、頑張って最後まで書いていきます。
読みやすいように、3000~4000文字は超えないくらいで区切っていこうと思います。(ちょっと短すぎるかな?)


〇前提:ノックスの十戒 とは?
お話の前に、ちょっと歴史の勉強を……
(十戒を知っていたら飛ばしてください)
150年程前、みんながイメージするような「ミステリー小説」が流行りました。謎解き、トリック、名探偵の活躍が重視されており、最後には全員を集めて(読者に対しても)犯人を発表する……これを「本格ミステリー/本格推理小説」と呼びました。今、ミステリー小説と言ったら、誰もがそんな感じをイメージすると思います。
で、有名な人が有名なこれ↓を出しました

※「ノックスの十戒」とは、推理小説を書く際のルールである。
1.犯人は、物語の当初に登場していなければならない
2.探偵方法に、超自然能力を用いてはならない
3.犯行現場に、秘密の抜け穴・通路が二つ以上あってはならない(一つ以上、とするのは誤訳)
4.未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならない
5.中国人を登場させてはならない
6.探偵は、偶然や第六感によって事件を解決してはならない
7.変装して登場人物を騙す場合を除き、探偵自身が犯人であってはならない
8.探偵は、読者に提示していない手がかりによって解決してはならない
9.サイドキック[探偵の助手となる者]は、自分の判断を全て読者に知らせねばならない
10.双子・一人二役は、予め読者に知らされなければならない
(※wikiから引用) 

これはあくまで読者が楽しめるようにするための作家の指針であり、「必ず守らないといけない掟」ではありません。これを作ったノックス自身もこの十戒を破るような小説を書いていますし、本人も厳格に従うべきとは言っていません。じゃあなんで作ったんだよ!って思いますが、ノックスは「なんで作ったか分からない」と述べています。これを基に「模範的なミステリ小説」について考えるきっかけとなったり、後のフェア・アンフェア論争(だいたいアガサ・クリスティのせい)で話に出てきたりします。
また、現代にそぐわない5番目のルール(当時の中国人への認識は怪人みたいな扱いで、何でもありの能力者だったりした)はよく改変されたり、削除されて引用されます。


1.マーダーミステリーにノックスの十戒は必要か?
結論から行きましょう。私は必要ではないと考えています。しかし、「ノックスの十戒のような何かルールを唱える必要がある」ことは強く感じています。
大抵のマーダーミステリーはノックスの十戒に厳密に従うことができません。なぜなら、それでは誰もが納得して楽しめるゲームとは離れてしまうからです。

この話をするために、推理小説とマーダーミステリーの違いについて、正しく認識しなくてはなりません。ノックスの十戒では、6.探偵は、偶然や第六感によって事件を解決してはならないとあります。名探偵がなんとなく犯人を指定して、その後犯人が観念したかのように全ての真相を話していては、推理小説としては興ざめです。
しかし、これに反することがマーダーミステリーでは起こります。ほとんどのマーダーミステリーは多数決で犯人だと思う人に各人が投票します。これによって、犯人が逃げ延びたり、捕まったりします。シャーロックホームズは「全ての不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙な事であっても、それが真実となる」と言っていますが、マーダーミステリーでのホームズ達は「んー、他にやっていそうな人がいないから……お前がやったんだろ^^」と言って、真犯人を当ててしまったりします。これはちょっとした消去法と勘ですが、実際、トリックが全く分からなくても真犯人が多数決で最多になって捕まることは何十回もマーダーミステリーをやっていれば一度は遭遇したことがあると思います。

こういったことはあって良いのか?
推理小説の場合、間違いなくアウトでしょう。ここまで読んだ時間と金を返せと作家に言いたくなるレベルです。読者だけでなく登場人物でさえも、誰も納得しません。
マーダーミステリーの場合はどうでしょう?現実として犯人が捕まったのだからそれはそれで良いのでしょうか?そうではありません。マーダーミステリーの犯人は、ただ犯罪を犯した人ではないのです。そこには犯人役をやり遂げたプレイヤーがいます。犯人は罪の重さを自覚し、納得して警察に捕まるかもしれませんが、犯人役のプレイヤーは絶対に納得できません。
私は、推理小説を含めた頭を使う全てのゲームにおいて、納得できなければ楽しいものにはならないと考えています。誰かの心に後味の良くないものを残すことは、他のプレイヤーのゲーム体験にも影響します。「納得」は全てにおいて優先されます。いくら”その”マーダーミステリーが「ゲーム性(推理ゲームとしての勝ち負け)」より「物語性(登場人物によって起こった出来事等)」を重視していると主張しても、”理不尽に敗けた”と感じる犯人役を納得させ、楽しいと思わせることは難しいでしょう。(一人で犯人役をやり遂げてくれたプレイヤーにも何かしらの救済が必要になるのです)

したがって、どちらの場合でも十戒の6番目は「あってはいけないこと」としましょう。しかし、大抵のマーダーミステリーでこれを防ぐ手段はありません。なぜなら、マーダーミステリーは投票で捕まえる犯人を決めるからです。投票をする限り、なんとなく怪しい人に票が集まって、理論や証拠無く捕まることは避けられません。何かギミックがあったり、推理小説のように「探偵一人のみが推理を発表し犯人が拘束される/犯人は決定的な証拠をつきつけられなければ決して捕まらない」なんてシステムならばそれは可能かもしれません。しかし、(私の知る限り)そういったマーダーミステリーはありません。

私が思いついた不満です。この誰でも思いつく不満を、制作する側が思いつかないわけありません。では、何故解消しようとしないのか?それはマーダーミステリーの面白さに真っ向から勝負することになるからです。


<次回へ続く>

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