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LIMEXが石灰石を主原料とする理由③【環境負荷と供給リスクの低さ】

石灰石があらゆる産業で重宝されるワケ


石灰石の国内出荷量1億2623万トン(2021年)のうち45%がセメント向けで、次に22%がコンクリート骨材用、続いて14%が鉄鋼業で使用されているという話をしました。これらの3分野だけで8割を超えますが、そのほか、製紙の原料の一種にもなっているし、化学工業、肥料、工業製品に添加される充填材から食品製造まで、じつに幅広く使われています。

LIMEXもそのひとつ。もっとも、TBMが自社工場でのLIMEX製造に使用している石灰石は、国内の石灰石出荷量のわずか0.01%とごくわずかですが…。

このように石灰石があらゆる産業で重宝されるのは、採掘にかかるエネルギーの少なさとコストの安さにあります。

隠れた環境負荷「エコリュックサック」


鉱物資源などを採取するに際しては、大量の岩石を採掘して目的の資源を取り出した後に、岩石廃棄物として処分する必要があります。例えば金の採取は、膨大な土砂を採掘し、そこからわずかな輝きを探り当てる作業です。金1kgを得るには、110万kgの岩石が廃棄物となり、自然破壊につながります。

ドイツのブッパタール気候・環境・エネルギー問題研究所のシュミット・ブレーク副所長は1994年、あらゆる資源は経済的に利用できない物質や廃棄物を背中に背負っているとして、この“隠れた環境負荷”「エコリュックサック」と名付けました。つまり、金1kgは110万kgのエコリュックサックを背負っていることになります。

同様の概念は「関与物質総量(TMR:Total Material Requirement)」とも称され、資源生産性を可視化する指標として注目されています。

金のほかにも、白金(プラチナ)は自身の53万倍、鉄は10倍、石油は7.4倍といった具合に、それぞれが見えない環境負荷を背負っています。

これらのように、抽出・精製工程で多量のエネルギーや環境負荷が高い物質を要する鉱物も多く存在する一方、石灰石のTMRは3.2倍と比較的小さいのが特徴です。石灰石は、シリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)、鉄分、マグネシウムなどの不純物が混ざることもありますが、基本的には採掘したものを砕いて粉にすれば、その多くを原料として利用できるからです。

TBMは、TMR研究の国内第一人者である山末英嗣・立命館大学理工学部教授に、LIMEX PelletおよびLIMEX Sheetと石油由来プラスチック、紙とのTMR比較を依頼しました。ポリプロピレン、ポリエチレン、PETの原料ペレットと比べ、LIMEX PelletのTMRは格段に小さく、紙とLIMEX SheetのTMRはほぼ同等という結果になりました。

ただし、TMRでは素材自体に含まれる成分以外の資源利用は考慮しないため、紙の製造で使用する「水の重さ」は含まれていません。ちなみに工業統計によると、紙・板紙生産1トン当たりの新水利用は約85トンとなっています。

また、石灰石を焼却するとCO2が排出されますが、これも、ポリプロピレンなどの石油由来プラスチックと比較すると、分子構造の違いにより燃焼時のCO2排出量は約58%少なくなります。

鉛と並んで最も供給リスクの小さい元素


さて、石灰石が豊富に存在することによるメリットとしては、価格の安さと安定性があります。石油由来プラスチックが原油価格の変動に大きく影響され、ときに乱高下するのに対し、石灰石の調達価格は安い上に極めて安定しています。

EUでは、域内経済を左右する61の重要原材料について、供給リスクと経済重要度を数値化し、原材料戦略の指標として用いています。下記がそのリストですが、レアアースと呼ばれる軽希土類、重希土類を筆頭に、レアメタルの一種であるアンチモンや、中国、米国、モロッコ・西サハラで世界の産出量の78%を占めているリンなどが、経済重要度と共に供給リスク高い元素として挙がっているのがわかります。上位の原材料はいずれも、EUが100%輸入に頼っているものばかりです。

一方、石灰石はそれなりの経済重要度を持ちながら、鉛と並んで最も供給リスクの小さい元素という位置づけとなっています。価格の安定性の理由はこうしたところからもうかがえるわけです。

これまでも、「LIMEXが石灰石を主原料とする理由」として、少ない資源でいかに大きな豊かさを生み出すかという話と、遠く海外から調達するのでなく、身近で手に入りやすい資源でコンパクトなサプライチェーンを実現することが大事であるという話をしました。

これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会に代わり、現代は「資源生産性」の高い経済の構築が求められています。だから、LIMEXは石灰石を主原料とするのです。

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