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ドラマのシーンにおける見えないこだわり

私はファッションスタイリストを始めてから150以上のドラマのコーディネート/スタイリングを手がけさせていただいています。
(どんな作品に携わってきたかは、こちらからどうぞ)
ドラマの撮影においてコーディネート/スタイリングはそのドラマ全体を通して、もっと言えば一つ一つのシーンにおいてこだわりが詰まっています。時に、観ているだけでは気づかない程度のものから、あえて大胆に意表を突くものまで様々です。
その『こだわり』をどんなふうに詰め込んでいるのか、私なりのアイデアをお伝えします。

まず、基本的な大きな考え方として、その役の役柄分析とシーン分析の両方でとらえるようにします。

- 友達のお見舞いに行くシーン
Aさんが友人Bさんのお見舞いに行くシーンがあります。
Aさんはいつも白いコートを着ています。そのストーリーの中では白いコートがAさんのトレードマークです。
ただしお見舞いに行く日はグレーかベージュのコートを着用します。ただしキャラのイメージを壊さないために中は白のワンピースにして白の分量は減らさない。
ここでは病院の先生の白衣と病院の壁(病院の壁は白であることが多い)と被らないほうがそのシーンにおいてAさんのキャラクターが立ち、観る人にとってもわかりやすくスムーズだからです。


- 日常の一部をごく自然に見せる、家から近所のコンビニ行くシーン
履くものはビーサンなのか、そうじゃないのか。
ビーサンなら靴下は要らない。
帰ってきた家の中では?ビーサンで行ったのであればスリッパか素足が自然なのか、などそのシーンにおいて自然に見えるように考えます。
ここに役のキャラクターが追加されます。
きちんとしている役ならTシャツはインする。豪快で細かいことを気にしない役ならTシャツの裾は出すなど、自然に見えるように細かいこだわりを持たせます。

- いつものシーンと異なる謝罪のシーン:セカンドバージン
いつもは派手で露出も多めな役のAさん。
雨の中謝罪に行くシーンではベージュのパンツスーツを選び、謝罪という普段と異なるシーンに対して自然に見えるように意識。


- 意表を突くための設定:太陽は沈まない(ドラマ)
弁護士というと一般的にはスーツを着用してピシッとしているイメージが多いです。
その弁護士という役にモッズコートにジーパン、中はセーターというラフな格好でどうやっても弁護士に見えない人が弁護士というサプライズをもってくる。

- 予期せぬ出来事に向かうシーン
いつも元気な母親Aさん。その元気で明るい印象を伝えるために赤を入れることが多いコーディネート。
そのストーリーの中で息子が逮捕されるシーンがあります。
その時は赤は着せない。予期せぬ出来事に対して起こる戸惑いやネガティブなイメージを伝えるために、いつもの元気さや明るさが出ないように。

と言った具合に、ドラマの中の全てのシーンには、誰が気づくか気づかないかにかかわらず、『ストーリー(ドラマ)を楽しめる』ようにこだわっています。

バイビー

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