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フランス窓の「バルコニー」にいた私

オットとパリ旅行中、
オルセー美術館を訪問した時のこと。

19世紀美術専門の美術館で
印象派の画家の作品が数多く、
所蔵、展示されている美術館です。


🖼️ Doppelgängerin(そっくりさん)発見

鑑賞するペース、絵画の好みは
それぞれなので、館内は別行動。 
広大な美術館、はぐれてしまったら
どうするつもりでいたのでしょう。

スマホ登場の遥か前、
携帯電話の普及がそろり始まった頃の
1990年代前半のことです。

ペースが早く先を行っていたオットが
私のいる展示室まで戻ってきて言います。

「あなたのそっくりさんがいるよ」

連れて行かれた先は
170 cm × 125 cmと大きめなサイズの
絵画の前。

エドュアール・マネ製作 「バルコニー」

🖼️  The Balcony

Le balcon
オルセー美術館で展示開始は1986年
それ以前は意外にもルーブル美術館所蔵


向かって右側に白いドレスを着て立ち、
手袋をはめよう(外そう)としている
儚げな表情の女性。

確かに私と瓜二つ

絵画製作年は1868年から69年にかけて。
普仏戦争が始まる前のパリで
都市生活を送るマネと芸術仲間。
その交友関係の中に東洋人または
東洋系の女性がいたとは思えず、
彼女はフランス女性(西洋人女性)で
あることは疑いの余地はありません。

パッと見の第一印象がそっくりな
19世紀半ばに実在したフランス人女性と
昭和生まれの日本人の私が
時空を超えて20世紀末の
オルセー美術館でご対面する経験は
とても不思議なものでした。

フラッシュをたかないという条件で
美術作品のカメラ撮影を許可している
美術館は最近増えたので、
今なら横に並んで記念撮影しますが、
当時はどこも撮影一切禁止だったのです。

帰りにミュージアムショップで
他の気に入った絵画と合わせて
旅の記念として複数ポストカードを
買いました。
ただ、この絵のポストカードだけが
家の中どこを探しても見つけられません

🖼️ 彼女と私の人生


絵とモデルの女性のことが
ずっと気になったまま月日は流れ、
人生いろいろ落ち着き、
心と時間に余裕ができるようになった頃
ネットで調べてみました。

マネ、バルコニー、と単語を入れると
すぐにその絵が表示されます。

スマホで絵画のイメージを拡大して
彼女の顔のパーツを見てみると、
目、鼻、口、それぞれは
どれも似ていないのです。

絵の中の彼女は、優しいというか
意志を感じられない眼差し、
自己主張しなさそうな口元、
何を思っていたのでしょう。

その時の彼女の感情が
合わさって現れた一瞬の表情が、
頼りなく儚げでぽわっとした印象を醸し出し、
マネによって描きとられたのでしょうか。

扇を手にして手すりに腕をかけ、
バルコニーの外の景色に眼差しを向ける女性は、
西洋人的なはっきりとした目鼻立ちの美人さん。
キリッとした眼差しで意志を感じられるのです。

対照的に私のそっくりさんは、弱々しい印象。
自立心も無さそうで、なんだか嫌だわ、
そくっりと感じたことの次に思い浮かんだ
絵に対する感想でした。

もっともっと若い頃、30歳という年齢は
自分がなるイメージがありませんでした。
それをあっさり超えてしまい、
結婚し、正社員として仕事を続け、
家庭を持ちながらキャリアを積んでこうと
思っていた頃にこの絵に出会っています。

今だからわかるし、言えますが、
30越えでもまだまだ若い。
人生を拓いていこうとしていた時期です。
結婚して幸せと感じていたけれど、
これからの人生どうなっていくのか、
どう自分で拓いていくのか、
将来に対する漠然とした不安が
心のどこかにあって
それが表情に常に現れていたのでしょうか。
いつの時代も、女性は悩みますよね。

あの時からもう二倍の長さを生き
様々な人生経験を積んできた今の私には
あの頃の儚げな面影はない、、ようです。 

🖼️ 絵画のモデル達

この絵画の登場人物は4人。
(日本語のWikiを参考にしています。)

絵画の中の左側、
フランス窓が開けな放たれたバルコニーの
手摺りに肘をかけて座っている女性は
ベルト・モリゾ
彼女は印象派の画家で、マネの作品に
モデルとしても度々登場。1874年には、
マネの弟ウジェーヌ・マネと結婚しています。

2人の女性の後ろに立つ男性のモデルは、
マネの友人の画家アントワーヌ・ギユメ。

部屋の奥で微かに描かれている若い男性は
レオン・コエラ=レーンホフ。
後に妻となるシュザンヌとの結婚前に
生まれた、マネの子であると言われていますが、
マネは結婚後も、認知しなかったようです

🖼️ ファニー・クラウス

私のそっくりさんのモデルは、
ヴァイオリニストのファニー・クラウス
マネの妻でピアニストだった
シュザンヌの親友で演奏仲間。
1846年生まれなので
「バルコニー」の彼女は22,3歳。
69年に芸術家と結婚し
70年に男の子の母となり
77年に31歳で亡くなっています。夭折。
可愛い盛りの男の子を残して、
若い彼女の晩年はどうだったのでしょうか。

イギリス・オックスフォードの
アシュモレアン博物館がマネによる
1868年製作の彼女の自画像を
所蔵しています。

ファニークラウスのボートレイト

「バルコニー」とほぼ同時期の作品。
この絵の中の彼女は二重瞼で鼻筋も通った
西洋人顔ですがやはりなんだか儚げ。
ただここでの彼女と私は全く似ていません。

(彼女の情報は日本語では見つけられず
英語版のWikiとアシュモレアン博物館HPに
よっています。)

時空を超えて、彼女に又会いに行く旅の実現。
私のバケットリストに書き足しましょう。

🐈タイトル写真は
ミラーボールの中の自分を見つめるリリー🧡



































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