【感想】「ガラスの海を渡る船」寺地はるな
寺地はるなさんの作品は、とても柔らかくて、包み込むような優しさに溢れてはいるものの、安易な言葉で慰めない、綺麗事で片付けないそんな強さが込められてるものが多い、気がする。
それを強く感じたのはこの作品。
特別ななにかになりたい、自分には何かしらの才能があって、人よりも輝いていたい、認められたい、そんな思いを持ちながら、(隠しながら、)生きている人も多いかと思う。
恥ずかしながら、自分にもそういうところがある。
大人になればなるほど、夢のようなものから覚めて、穏やかな生活が送れたらそれで幸せと、自分に言い聞かせるようになったようにも思う。
ただ、それで納得しているはずなのに、どこにでも居る人間である自分、誰にでもできることをやっている自分、そんな自分に嫌気がさしてしまう。
この本は、自分は特別なんだ、才能を見つけて何者かになってやるんだ、ともがき続ける妹と、その周りの家族や友人やお客様が紡ぐ物語。
そんな妹さんの姿は、若い頃の自分と少し重なるところがあって、とても苦しくなる。
ただ、人間はみんな生まれも育ちも違って、違う考え方を持って、違う正解と不正解を持ってる。
似てはいても、同じじゃない。
同じ人は誰1人としていないなら、その時点でひとりの人間はもう特別なんだよ、と。
そんな言葉で、少しずつ、ほんとに少しずつ、救われていく。
最後に有名になるとか、お店が成功する、とか、そんなんではなくて、私の作った作品が誰かが明日生きる理由になった、そんなエピソードが素敵だったなあ。
それだけで十分、誰かにとっての特別な存在になれている。
素敵なアーティストだなあ。
私も何か、誰かを救えるなにかを創れる人間になってみたいな。その誰かのためにも、そして自分のためにも。
過去の自分を救うために、誰かを救いたい、そう思うのは悪い感情じゃないと、思ってます。
明日も少しだけ、深呼吸しながら、仕事しよう。
すこしだけでも、誰かの助けになれたらな、なんて。
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