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Hur gick det sen?(それからどうなるの?)

※ Instagram からの転載です

作:Tove Jansson(トーヴェ・ヤンソン)
1993年印刷(発表:1952年)

スウェーデン系フィンランド人のトーヴェ・ヤンソンによるムーミンからの初の絵本です。それと同時にフィンランド語へ翻訳された初めてのムーミン作品でもあります。

朝の5時にミルクでいっぱいの缶を持って家へ向かっていました。すると途中で泣いているミムラが。どうやらミィがいなくなってしまったようで、ムーミンはミムラと一緒にミィを探してあげることにしました。

この絵本は次のシーンの一部がちょっとだけ見えるように、各ページが穴抜きされた"仕掛け絵本"になっています。そして文章の最後には必ず「VAD TROR DU ATT DET HÄNDE SEN?(このあと、どうなったとおもいますか?)」という問いかけの一文を伴い、期待感と共に物語は進んでいきます。

絵本に興味をお持ちの方であれば、エリック・カールの『はらぺこあおむし』のような加工と言えばピンときますでしょうか。『はらぺこあおむし』が1969年に発表されたのに対して、こちらの『それからどうなるの?』は1952年の発表なので、(ほかにこういった加工がされた作品はあったかもしれませんが)両者だけを比べると17年も先行して、この穴あきアイディアを採用していたことになります。

『はらぺこあおむし』の出版当初、加工コストの問題からアメリカで印刷・製版を引き受ける会社が見つからずに日本の会社がそれを担ったそうです。この『それからどうなるの?』も製版コストが高い絵本であることは想像に難くありません。印刷物を型抜きすることを「トムソン加工」といいますが、現在では印刷データだけで印刷できる本と違って、この加工をするには抜き型をつくる必要があるわけですから。

画像の4枚目と5枚目を見比べれば、その穴抜きの雰囲気がわかるかも知れません。ちなみにテキストは手描きで、筆記体やブロック体、文字サイズなどによって、ここにもトーヴェ・ヤンソンによる演出が行われています。

日本でも「それからどうなるの?(講談社 刊)」として翻訳出版されていますが、残念ながらこの"仕掛け絵本"の素晴らしさが再現されることなく、表紙カバー以外は穴あき加工が施されませんでした(読者が自分でページを切り抜く必要あり)。廉価で市場に流通させることよりも、絵本そのもののアイデンティティを優先して完全な形で日本に紹介してほしかったと強く思います。


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