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🌳三題噺 #4


愛してる、ハロウィンパーティー、正方形



 ジャックは、右手にランタンを吊り下げてぼうっとした暗い闇の中を歩いていた。
 天国と地獄のはざまにあるような果ての無い闇を歩き続けて、おそらく何世紀も経った…。考える時間も歩数もかぞえるほどの世界軸は存在しない。

 何も見えず何も聞こえず匂いもしない。それでも悪魔を何度もだまし死後に一度は生き返ったほどのこの男に耐えられるほどの苦痛でありはした。
 歩いているうちには時々、暗い闇に白くぼんやりとした幻想が見えたりもした。その中には何か神々しいような姿も見えた。ただそれも、夜空に一瞬通り過ぎる彗星を捕まえようとするのと同じくらい不確かな記憶に感じられた。それほど滅多なことではなかった。

 ジャックが歩く道は道とも表現しがたかった。ふわふわした雲の上を歩いているような感覚を覚える。オレンジ色のランタンの光で足元が照らされていた。長い間それだけを目に映し、現世での出来事はこの男の頭からもうすぐ消えようとしている。
 
 少し前からか、ジャックは幾分か朦朧とした意識で歩き続けながら、頭上後方より鳥のさえずりがしていた。それはだんだん大きくなった。大きくなって大きくなり突然ジャックは白い闇に呑み込まれた。
 
 ジャックは心臓の鼓動が速くなったような感覚に耳を澄ませながら、一つゆっくり呼吸をした。外は真っ白の世界で眩しかった。真っ暗な世界にいたジャックには、まばゆいほどの閃光に感じられた。やっとの想いで体を起こすと、誰かと誰かが話している声が聞こえた。低い男の声と少し高い女の声だ。女は男をオェングスと言った。男は女をカーと呼んだ。二人は広い庭の中にいた。庭には花が咲きこぼれ、溢れんばかりだった。白い空間と空の上には二羽の小鳥が小さなくちばしに花をくわえて、円を描くように飛んでいる。
 庭の向こうの畑にたくさんのかぼちゃが植わっていた。二人は楽しそうに笑っていた…。

 ジャックは手を伸ばした。二人はこちらを見つめ、男が何かつぶやいた。ジャックはするすると小さくなった。次いで男は掌の上で黒い箱を創り出した。それにジャックを吞み込ませた。
 暗闇の中で笑い声が響いた。それはジャックが騙した悪魔のものに似ていた。ジャックもつられて笑い、ひとしきり笑い続けた。そしてまた男は歩きだした。

モチーフ
:ジャック・オー・ランタン、ケルト神話、妖精国の王オェングス

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