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センチメンタル客船


夕暮れに、とぼとぼあるく、二人である

マンションとマンションの間の祠の前

婆さんがずっと合掌してる

信楽焼のタヌキが、紫陽花の葉の下で雨宿り   

雨はもう降っていないのに、ばかなやつ

猫避けの水を飲んでまわる妄想をする

アルミサッシの向こう側の話し声は愉快

猫の一声、爺さんが振り返る

水溜りを踏む、アメンボすべる

命なりせば、寺の貼り紙

イヤホン、はずしてみれば無常

立ち止まり、爪を見て、ただ数える

一、ニ、三、四、五、十指に至らず

なんだか、虚しいね

少し歩いて、振り返る君、
太陽とそよ風に愛された白妙の布の如し
白秋の筆づかいの如し

発想力の臨界地点でベスパに乗って君とドライブしたい
そんなローマの休日気分で散歩する

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