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立杭陶の郷で丹波焼を買う《エッセイ》
ゴールデンウィークに夫と二人で丹波篠山市にある立杭陶の郷へ行ってきた。どんなものを買おうとかという目的はなかったけれど、陶器を見るのは単純に楽しいし、見ていて欲しいものを見つけたときはやはり嬉しい。気にいったものを買って帰ったら、しばらく撫でてさすって慈しむのだ。
元々料理が好きで、作るものに合わせて食器を使うのが私の道楽みたいなものだったのだけれど、窯元へ行って高級な陶器を買ってまで食器にこだわるということはしていなかった。けれど、年齢も上がってきて、食器を立て続けに割ってしまう子供も独立して気持ちにもゆとりが出てきたからか、ここ数年は陶器市などに行って食器を買うことも増えた。
今まで、夫と二人で信楽焼に四回、丹波焼に五回ほど行ってみたけれど、最初はどの器を見てもなかなかピンと来るものがなくてほとんど眺めるだけで帰ってきていた。回数を重ねるうちに好みのものが出来てきたのか、目が慣れてきたのか、器を眺めながら歩いていると向こうから目に飛び込んでくるようになってきた。
目に飛び込んでくるものは、実際に手に取ってみても重さや薄さなどがちょうど良くて、何周か売り場を回っても他に目移りもしない。そういうものが見つけられるようになってきたのだ。やはりなんでもそうだけれど、場数を踏むと物がよく見分けられるようになって迷わなくなる。
丹波焼や信楽焼がこんなにも身近な食器になってきたことが単純に嬉しいのだけれど、籠を持って見て回り、お気に入りを見つけると躊躇することなく籠へ入れていくという、その瞬間はなんとも気持ちがふんわりとして優雅なひと時になる。
一度にたくさん買うのでもなく少しづつ揃えていくのも、宝探しみたいでわくわくするし、行くたびに目が肥えてくるのが実感できるからそれもまた楽しみの一つになる。
百貨店などで見るのもいいけれど、私は現地調達派だからやっぱりこういう陶器の郷のようなところや陶器市はあると嬉しい。食器にこだわることが出来るようになったのも陶器を選ぶのが楽しくなったのも、年齢が上がった証拠なんだとは思うけれど、こういう変化は喜ばしいことなんだと思っている。
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今回は、木星みたいな模様のマグカップと煮物を入れたら映えそうな渦巻き模様の器を二つ、そして、お刺身を盛り合わせる用に素敵なカラーの葉のようなお皿を一つ購入した。手触りや重さから柄行まで好みにぴったりと合ったものは心の栄養になる。家に帰ってからも、何度も手に取って撫でてさすって慈しんだ。今は出番を待って食器棚の中で待機中だ。
そう言えば、今回は夫が「俺が買うよ」と言って支払ってくれたから、余計にちょっとしたプレゼントのような気分で嬉しかったのかもしれない。心がほくほくとしたまま隣りの食堂でお昼を食べて、お腹も良くなったしほっこりと出来たひと時だった。
今年のゴールデンウィークは小さな旅行だったけれど、心が満たされて幸せな休日になったと思う。また行きたいな。ささやかな楽しみを満喫しに陶器の郷へと。
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