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久留米青春ラプソディ vol.12

青春時代の男の子。

この実態を皆さま、ご存知だろうか?

あまりにもアホで、あまりにも単純で、あまりにも素直。

地球上で最も愛おしい存在と言っても過言ではない。

これは僕が中学3年生のころのお話。

ある時、当時日本中の少年のバイブルとなっていた「HOT DOG」という雑誌を立ち読みしていた時、僕を釘付けにする特集記事を発見した。

「童貞を捨てたいなら、左手でブラジャーを外せ!」

僕はそのタイトルに惹かれ、食い入るようにページをめくった。

なにやらその記事には、童貞君が初体験を失敗する多くの理由は、女性のブラジャーを上手く外せないことが原因だ!と書かれていた。

なぜ、ブラジャーを上手く外せないと失敗するかというと、せっかくそういういい雰囲気なったにも関わらず、ブラジャーを外すべきタイミングでモゴモゴモゴモゴしてしまい、その慣れない手つきと焦った男子の姿に女子のテンションは急降下、「やっぱり今日はやめとく・・・」となってしまうと書かれていた。

「あくまでスマートに、そしてスピーディーに!」いう素敵なキャッチコピーと共に、様々なシチュエーションでのブラジャーの外し方が写真とともにとても丁寧に解説されていた。

僕は思った。

「この本は革命的な本だ!絶対に買わなければいけない!」と思い、なけなしの500円玉を握りしめ、レジへと走った。

僕は次の日、学校にその本を持って行き、仲間たちに共有した。

仲間たち、いやチェリーボーイズは僕と同じく、その記事を読み、衝撃を受けていた。

各々、写真を見ながら、左手の動かし方を試してみた。教室の後ろで机を囲み、ブツブツ言いながら左手を動かす男子の集団を見て、女子はさぞかし怪訝に思っただろう。

しかし、ここで大きな問題が発生した。

僕らの誰もリアルなブラジャーのフックの形状を見たことがなかったし、触ったことがなかったのだ。

だから、どれだけ素振りしてもそれが正しいのか、間違っているのかさえわからない。

そこで僕は、クラスの仲の良い女子に「ちょっとブラジャーば外させてくれん?」と目一杯爽やかに聞いてみた。

すると、魚の死んだような目で「は?死ね。」と言われた。

どうやら、そんなに簡単に練習できるもんじゃないようだ。

みんなでどうしたもんかと頭を悩ませている時、1人がこう言った。

「誰か家にブラジャー持ってないと?」と投げやりに言った。

みんな一瞬、母ちゃんの顔が思い浮かんだが、同時に頭の中からそのイメージをかき消した。少し吐きそうになった。

すると別の友達が、「女の兄弟ならまだましなのにな。」と呟いた。

一瞬、時が止まった。

そして、次の瞬間、みんなの目線が僕に集中した。

「だいすけ、お前・・・。姉ちゃんおるやん・・・。」

いやいや、無理!まじで無理!

姉ちゃんのブラジャーなんて、そんなの気持ち悪くて触りたくないし、さらに言えば、僕の姉は元ゴリゴリのヤンキー。

もし、そんなことをしたのがバレたら、殺される。

そう思った。

しかし、全力で抵抗する僕をよそに、仲間たちは勝手に話を進めていく。

「じゃ、だいすけんちに泊まりに行って、合宿や!」

勝手に盛り上がる仲間たち。

いやいや、ブラジャー外しの合宿ってなんなんだ・・・。

僕の抵抗虚しく、人生最初で最後のブラジャー合宿が決定した。

そして、ある夜。

僕の母が仕事で泊まりの出張のタイミングに合わせ、チェリーボーイズの面々が集まった。

前半はリビングで当時大流行していた「銀狼怪奇ファイル」という堂本剛主演のドラマをみんなで見て盛り上がった。

そして僕の部屋に移動し、グリーンデイを聞いたり、好きな女の子の話をした。

そんなこんなで過ごしていると、22時くらいだろうか。母がいないことをいいことに姉も夜遊びに出かける準備を始めた。

「だい、姉ちゃん遊び行くけん、ママには絶対言うなよ。」と少しドスの聞いた声で言い残し、家を出て行った。

ドアが閉まる音を聞くと同時に、チェリーボーイズは動き出した。

「だいすけ…例のものをお願いします。」

なぜか、みんな小声だった。

この時も僕は最後の抵抗をしたのだけれど、チェリーボーイズのギンギンの目を見て、諦めるしかなく、仕方なしに姉の部屋に向かった。

開けたこともない姉のタンスを開けると、一番上の引き出しに下着類が収納されていた。少しの吐き気を覚えながら、ブラジャーを2つをつまむように手に取り、自分の部屋に戻った。

そして、自分の部屋の扉を開けると・・・。

なぜかチェリーボーイズの4人の隊員はパンツ一丁になっていた。

「なんで脱いどるん?!アホか!」

そういう僕に対し、彼らは真剣な眼差しで、「さ、いいからそれを渡しなさい。」と真面目な声で言った。

僕はどうやって練習するかまでは考えていなかったのだが、隊員の1人がおもむろに自分の身体にブラジャーをつけ始めた。

「おい!人の姉ちゃんのブラジャーつけるなや!」

そう言う僕を、隊員は「実際につけた状態でシュミレーションせなわからんやないか!」と一蹴した。

後ろのホックが上手く止めれず、モゴモゴしていると別の隊員がヘルプに入った。

男子がパンツ一丁でブラジャーをはめた姿。それがなんだか面白くて、みんなで爆笑した。

ブラジャーをつけた隊員が僕を見て「お前もはよ、脱げ。」と言った。

もうその時には僕もなんだか面白くなってきて、すぐさまTシャツを脱いだ。

6畳の狭い部屋にひしめき合うパンツ一丁の男子中学生5名。そして、そのうち2人は白と淡いブルーのブラジャーをしている。

なんともシュールでおバカな光景。

そして、いよいよ2対2に別れ、実践練習を始めた。余った1人はHOT DOGの紙面を声に出して読む教官役となった。

まずは、男女が寝た状態。

雑誌によると、寝た状態の場合、「必ず女性の右側に寝るべし」と書かれていた。

理由は、利き手を自由にする必要があると。女性の右側から身体を半分起こし、利き手の右手で女性のシャツのボタンを外したり、細かい作業が必要になるからということだ。

確かに理にかなっている。

早速、男役は右手でボタンを外す仕草をする。そして、それと同時に指示に従い、左手を女性の背中の下にそっと忍ばせる。

そして、教官の「ブラジャー外せ〜!」と言う合図と共にブラジャーのホックに手をかける。

案の定、初めて触るブラジャーのフック。布団と背中の狭い空間で自由の利かない左手。

結果的に2人とも一発で外すことはできなかった。

まさに「あれ?」「どうなっとるこれ?」とモゴモゴモゴモゴ。

しまいには背中の肉をつまみ「痛っ!」と声をあげる女役。

失敗だ。完全なる失敗。

これでは雑誌の言うとおり、女子のテンションはだだ下がりだろう。

あの本の言うことは、やっぱり正しかった。

そして、その後、男役・女役を交代、5人でローテーションしながら、特訓を繰り返した。

何十回と繰り返し練習するうちに、みんなスムーズに<左手・一発>でフックを外せるようになってきた。

そして、余裕ができてきたのか、女役は女性のいやらしい声をマネしだした。マンション住まいの僕はその声が隣に漏れまいかとハラハラした。あまりにひどい時は針金ハンガーでそいつの頭をぶっ叩いた。

そして、「座って向かい合うバージョン」「後ろから抱きしめるバージョン」、HOT DOGに掲載されている全てのシチュエーションをクリアした。

さらに勢いに乗ったチェリーボーイズは「シャツの上からでも外せる方がいいんじゃないか?」「すれ違い様でも一瞬で外せる方がかっこいい」というよくわからないシチュエーションも想定し、特訓を繰り返した。

4〜5時間は経っただろうか。

時間はもう深夜3時を回っていた。

部活だって、勉強だって、集中力の続かないあの問題児たちが一度も泣き言も言わず、繰り返し繰り返し、特訓した成果はすごかった。

みんな利き手ではない左手で、あらゆる角度から、しかも一瞬で、ブラジャーを外せるようになっていた。

やれば、できる。

どんな問題児でも、明確な目標が定まれば、努力し、達成することができる。

まさにそれを証明した。

部活でも、勉強でもなく。ブラジャー外しで。

ある種の達成感に浸っていると、突然ひどい眠気と疲れが襲ってきた。

「そろそろ寝ようか。」と誰かが言い、僕は部屋の電気を消した。

狭い部屋で、まるでパズルのように隙間を見つけ、それぞれが眠りにつこうとした時、チェリーボーイズ屈指のモテない君が呟いた。

「よし、これで俺たちもチェリーボーイ卒業やなぁ。」

いや、お前。彼女できたことないやん・・・。

皆がそう思ったが、それは口に出さないでおいた。

そして、みんなは深い深い眠りについた。

それから、少し時間が経ち、僕もデビューを迎える日が来た。

「チェリーボーイズで培ったあの技術をついき使う時が来た!」と緊張と手の震えを必死で抑え、いざブラジャーに手をかけようとした次の瞬間、その女子はさっと起き上がり、颯爽と自らブラジャーを外したのであった。

結果、あの夜の猛特訓の成果を発揮することはなく、僕のデビュー戦は終わってしまったのだが、最高の友達と過ごした、あまりにくだらなくて、あまりに愛おしい時間は、僕の大切な思い出として刻まれている。

おしまい。

追伸:フェイスブックで繋がっている我が姉にこの記事が届かないことを心から願っている。

では、また。

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Like us co., LTD 代表取締役 / PT LIKE US BALI CEO / PT MIMPI BIRU BALI CEO/ 海外起業家 / 10歳ふたご娘のパパ/ 海外・リゾートウェディング /家族・仕事・生き方、その全てを自分らしく。