見出し画像

それゆけ李白マン~中国街歩き詩選~ 第21回 博物館で会いましょう

(64)そうこうするうち、前方に博物館の偉容が見えだした。入館してみると、博物館はちょうど常設展が改装中。ということで、ぼくは「中国龍文化特典」という特別展のみを見学した。新石器時代の玉、西周の青銅器、戦国時代の銅鏡、五代の木彫、唐の三彩俑など、龍をかたどった、あるいは龍の紋様を取り入れた、さまざまな出土品がならんでいた。展示されていた唐三彩は、顔面が龍で、体がなんと人間の姿をしている。袖(そで)の幅広い伝統服、長袍(チャンパオ)を着て膝立ち姿勢になった龍は、撫(な)で肩でなよっとした外形なのに、顔の表情だけが妙に厳(いか)つくて、見れば見るほどユーモラスであった。墓の副葬品として多数出土しているらしい。これらの品は、主に天津・淮安・揚州の博物館の収蔵で、龍城(ロンチョン)の異名をもつ当地・常州からは龍紋の入った瓦や青銅鏡が展示されていた。ところで、館内にはおそろいのTシャツを着た高校生数十名が参観に来ていて、卒業記念のためだろうか、三脚付きのビデオカメラを抱えた撮影隊がずっと彼らの見学風景を追っていた。クルーのボスがワンシーンごと綿密に指示を出すのだが、被写体の学生は人数が多いし、けっこう自由に動きまわる。何度も撮り直しがなされ、そのたびに助手があたふたしているのがちょっと面白かった。いや、かくいうぼくも、間に映り込まぬよう彼らをヒョイヒョイとかわしながら、注意ぶかく参観を続けた。良き思い出になるといいね。入場無料の常州博物館からは以上です。

(65)夜の試合は午後六時から。ぼくは着替えと充電池交換のために、いったんホテルへと引き返した。途中、体育館付近では、近未来形状の図書館(建設中)をぼーっと眺め、それから地下鉄駅工事の一環で低木を運んだり植えつけたりしている、お爺さんお婆さんのグループに出会った。地元の志願者(ボランティア)だろうか。みなさん70代に見えたが、普段着で和気あいあいと作業している姿は眩(まぶ)しかった。また、ふたたびホテルを出発してからは、事前にマークしておいた三明治(サンドウィッチ)店がいくら探しても見つからず、どこか煤(すす)けた印象のマンション街で、危うく迷子になりかけもした。そんな、ごく優雅な散策タイムを経て、夕方5時半ごろ、ぼくは19路(ルー)の公交車(バス)――路は路線番号を示す――に乗り込んで体育館へと戻った。運賃は2元だった。

(66)さあ、いよいよ男子単打(シングルス)の桃田賢斗、さらに女子双打(ダブルス)の高橋礼華・松友美佐紀ペア、福島由紀・廣田彩花ペアらの登場する夜間の部が始まるのだが、この移動の時間を利用して、旅の準備過程について少しご紹介しておこうと思う。

常州博物館に到着。巨大な神殿のようなたたずまい。
木彫りの紋(左)と三彩俑(右)
逆さ市政府ビル(博物館から市民広場を振りかえる)
オリンピックセンター付近のバス停。正面はオープンしたばかりの常州市図書館。
開業前の地下鉄・市民広場駅。周囲の植栽も完成に近づいていた。

この記事が参加している募集

#地理がすき

703件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?