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それゆけ李白マン~中国街歩き詩選~ 第18回 羽毛球! 羽毛球! 羽毛球!

バドミントン観戦部分の原稿掲載につきましては、いま一度試合経過の精査が必要と判断し、一時保留しています。しばらくお待ち下さい。(2022年3月12日)

(56)どんなスポーツでも、会場の奥行きと開けた視角が生観戦の醍醐味である。選手のスピードやテクニック、そしてゲーム中に発せられる声や物音も、その立体感が間近にあるからこそ実感できる。予期されたコースやタイミングを外しながら、コート上を躍動するトップ選手たち。テレビ画面からは分かりにくい三次元の駆け引きが、二面のコートでノンストップで繰り広げられている。彼らは相手のプレー位置や運動、打球のコースと速さを冷静に把握し、的確なステップを踏みながら、素早くラケットを制御する。息つく暇もないスピーディーな打ち合いのなかで、ぼくはずっと前傾姿勢でハイな気分に酔いしれた。プレーの一挙手一投足に沸く歓声や館内の穏やかな雰囲気も、自然とぼくの集中力を高めた。もちろん、異国で初めてスポーツ観戦しているという高揚感も手伝って。

(57)ここでお断りするまでもないけれど、ぼくはもともと熱烈なる羽毛球迷(バドミントンファン)というわけではない。だから内村鑑三ばりに、余は如何にして羽毛球迷となりし乎(か)、とわざわざ因縁を語るものではない。とはいっても、一般人がなにゆえ中国まで来てスポーツ観戦してるのか、いぶかしく思う人があるかもしれぬ。だから、その経緯と観戦履歴を少し書いておこうと思う。

(58)答えはかんたんである。2016年奥運会(オリンピック)の羽毛球女子双打(ダブルス)決勝を、ぼくは深夜中継で観ていた。高橋礼華・松友美佐紀ペアがめでたく金メダルを獲得した、最終ゲーム大逆転劇のあの試合である。ご記憶の方も多いだろう。一進一退の攻防はみごとだったし、じつに感動的だった。あとで、最終盤5連続ポイントの映像がくりかえし放送されたせいで、記憶がすっかり上書きされてしまったが、最終ゲームはほんとうに激しいデッドヒートだった。ぼくはこのとき、生まれて初めてこの競技をじっくりと見た。今思うとラッキーだった。それで、翌々日の男子単打(シングルス)決勝もテレビ観戦した。そうして何試合か見ているうちに、世界ランキングを賑わすトップ選手たちのオバケすぎる運動能力や技のキレ、クレバーな戦術、そしてペアごとに異なる(ように見える)ダブルスのコンビネーションスタイルに、じわじわと魅了されていった。また、アジアの国々に強豪国が多いけれど中国一強というわけでもない、羽毛球ならではの勢力図にも惹かれた。そうなると今度は、各種サイトや雑誌などをたよりに、競技の基本情報を得るようになる。国内外の試合日程や目下の世界ランキングなどを確認し、都内の体育館でいくつかの大会を観戦するなどし、ホンモノの興奮を味わった。これで、にわかファンの出来上がりである。これまで中国旅行のあいだも、街角や公園で羽毛球に興じる人たちを数多く見てきた。羽毛球には、卓球とならんで国民的人気を誇る、いわば国技というイメージがある。そこで、チャンスがあれば是非、本場で観戦してみたいと目論むようになったのだ。そんななりゆきで、今回は常州に乗り込んできたのである。もちろん海外ツアーで日本選手が活躍する様子も見たかった。金曜日の準々決勝に合わせて来たのも、タカマツペアや桃田賢斗選手ら各種目の代表が大勢出場すると見込んでのことである。

兵馬俑ならぬ「跳馬俑」のオブジェ。
優勝トロフィーの展示(男子シングルス)
常州に「龍城」の異名があるためか、トロフィーは龍をかたどったデザイン。
全試合終了後の館内。カクテル光線を使用したノリの良い演出。

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