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水槽の中

   

今僕は水槽の中。閉じ込められて、息が出来なくて、、一生苦しみながら生きていくちっぽけな魚。いつまでいつまでも密かに息途絶えながら生きている。水槽の外の世界は何も知らない。水槽の中の世界しか見たことがない。だから僕は他の生物を見たことも話したこともない。まず、僕は誰とも会話ができない。目を合わせることもできない。だから、僕には耳しか頼りがない。感じ取るしかないのだから、この世界の作りを。

まだ産まれて間もない頃からこの水槽で生きている。小さい頃は目も見えてたし、口で話すことできた。ある日を境にそれらが使えなくなった。

でもその生活は後少しで終わる。成人したら自由だ。それまでの間は大人しく、ひっそりと生活をする。99年もの縛りからやっと開放される。長い期間孤独死しそうな日々、誰もいない水槽の中閉じ込められていた空間はもう少しでお別れだ。

自由という名の成人を迎える頃、耳が動かなくなり何も感じ取ることができなくなった。そして、また100年間水槽の中に閉じ込められる。

記憶が確かであれば、最後に見たのは大きな体をして牙の鋭い生物。そう正しくそれこそが僕をこんなふうにさせた元凶だった。



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