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確率だけでなく、期待値でも考えよう


統計力学を勉強していて、感じたこと


さてそんな前置きはこの辺にして、今回の話は、期待値です。期待値って、みなさん日常で使ったりしますか。ギャンブルが好きな人は、よく使っているかもしれないですね。僕は、全然ギャンブルはしないんですが。

多くの人は物事を考えるときに、確率は考えるけど、期待値のことは考えないと思うんですよ。この出来事が起こる確率は、高いのか低いのかは考えるけど、期待値が大きいのか小さいのかは、考えないと思います。

そんで最近、統計力学で期待値を計算していて、「日常でも、期待値を使って考えるのは、大事じゃん!」って思ったんです。

ではなぜ僕が期待値で考えることを、こんなにオススメするのかについて、書いていこうと思います。

まずは期待値の定義を、簡単に説明させてください。定義の部分は退屈かもしれませんが、大事なところなので、しっかりついてきてください!



期待値の定義


では、期待値の定義について。期待値は、このように定義されます。

$$
\sum\limits_{i=1}^{n} x_{i}p_{i}
$$

$${p_{i}}$$はある事象が起こる確率で、$${x_{i}}$$はそのときの値です。

つまり簡単に言えば、値に確率をかけて足し合わせたものが、期待値なのです。統計WEBというウェブサイトの説明を引用しますと、

期待値とは、1回の試行で得られる値の平均値のことで、得られうるすべての値とそれが起こる確率の積を足し合わせたものです。

9-7.期待値 | 統計学の時間 | 統計WEB

のように期待値の定義が書いてありました。簡潔で分かりやすい!


確率だけで考えることとの大きな違いは、何か?
それは、確率にかけてある値の大きさが、とても重要になるということです。$${x_{i}}$$のことです。

確率が低くても値がめちゃくちゃ大きければ、期待値も大きくなります。確率だけで考えると、値の大きさについて無視してしまうので、注意が必要です。

例として「パスカルの賭け」を、紹介したいと思います。そうです、「人間は考える葦である」という有名な言葉を残した、あのパスカルです。



パスカルの賭け


この話はパスカルの著書、「パンセ」の中で出てきます。この話の要点だけを、述べます。パスカルが何に賭けたかというと、神が存在するということです。

「おいおい、神が存在するかしないかなんて、どうでもいいんだよ。」
そう思われた方も、多いと思います。ましてや日本は、無神論者の人がほとんどですからね。

でもパスカルが暮らしていたフランスなどのヨーロッパでは、神について盛んに議論されていました。「神は存在するのか、しないのか?」という疑問があったわけです。今も神の存在については、分かっていません。

そしてその問いに対して、パスカルは、こう主張したのです。

理性によって神の存在を証明できないが、神が存在することに賭けても失うものは何もないし、生きることの意味が増すだけだ。

自分なりにまとめて書いたので、原著とのニュアンスの違いはあると思います。でもここでは、そういう細かいところではなくて、期待値の考え方を知って欲しいのです。


神が存在するのかって、分かりませんよね。まず、どうやって確かめるのかも、想像できません。存在する確率は$${\frac{1}{2}}$$で、存在しない確率は$${\frac{1}{2}}$$です。

神が存在しなかった場合はどうか。別に失うものは、ありません。今の生活が、いつも通り続くだけ。損することは、ありません。値でいうと、$${0}$$です。

では、神が存在するとしたらどうか。死んだ後に、天国に行くことができます。幸せな生活が、待っているわけです。値でいうと、$${+\infty}$$です。

そして、本題の期待値を計算すると、

$$
\frac{1}{2}\times0+\frac{1}{2}\times(+\infty)=+\infty
$$

となるのです。つまり、神が存在するかは確かめられないけど、信じたほうが絶対お得だという「パスカルの賭け」は期待値で、説明できるのです。確率だけだと、存在するか、存在しないかはどちらも$${\frac{1}{2}}$$ですが。

もちろん神が存在した場合に幸福感の値が$${+\infty}$$となることは、極端な気がしますが、何となく期待値で考えることの面白さを、理解していただけたのではないでしょうか。

最後に期待値を使って、もう少し実生活について考えてみたいと思います。




リスク計算で役に立つ


僕はこの期待値の考え方が、リスク対策のときに、とても使える代物だと思っています。

例えば金融を例にして、考えてみましょう。リーマンショックのような金融危機によって株価が大暴落することは、めったにありません。確率だけでみるとかなり低いです。

でもそれによって被る被害は、計り知れないです。あなたが投資家だとして、この金融危機に飲み込まれると、一夜にして全財産を失う可能性があります。この金融危機に仮に遭遇しても大丈夫なように、資産管理をしておかないといけないのです。

確率が低いからといって安心していては、危険です。確率にかかる値の方も、しっかり考えないと。

つまり期待値で考えていると、ありえないような不運に巻き込まれても、その被害を小さくするような、防衛体制を敷くことができます。


確率が分からないような場合でも、便利です。この出来事が起こる確率は計算できないけど、この出来事が起こったときの影響は何となく分かります。確率だけでなく、その出来事が起こったときの影響も考えていれば、予測不能な事態に遭遇しても耐えられます。

現代は、昔よりもっと不確実性の高い世界になっているので、何が起こるか分かりません。「こんなことに、なるなんて。」と思うことも、増えています。特にコロナなんて、そうでした。

そんなときに自分や、自分だけでなく大切な人を守るためにも、期待値の考え方が必要になるのではないでしょうか。

何が起こるかは分からないけど、何が起こっても大丈夫なように、ある程度の対策はできます。

信頼のできる人間関係、動じないメンタル、貯金など、そういったことです。


偉そうに書いていますが、期待値を使って考えれば、酷い目に会う人がもっと少なくなるのではないかと思ったのです。統計力学を勉強していて、ふとそう感じたので、今回の記事を書きました。

参考になったり、面白いと少しでも思っていただければ、幸いです!




オススメ本


不確実な世界を生き延びるための知識が書いてあり、とても役に立ち、読んでて面白い本です。著者のナシーム・ニコラス・タレブは、文筆家、研究者、トレーダーの3つの顔を持つ人です。

この人は人生を通して確率、運、不確実性を考えられている方です。

日本ではあまり有名ではありませんが、この人の書く本はどれも含蓄に富んでいて、読んで損はないと思います。難解な部分もありますが、読み応え十分です。

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